移住者到着
フミの名前が決まってからさらに二日が経過して、俺の気配察知に反応があった。
感じ慣れた気配であり、ルリエたちだという事はすぐに分かったが……うん、やっぱり増えている。
あれだけ俺の許可をどうのこうの言っておいて、勝手に増やしやがった。
「……いや、もしかしたらシルクさんとリーレインさんが追加したのかもしれないな」
ルリエが勝手に決めたわけではなければ問題はないか。
だが、家の数が足りるかが問題だ。
元々は30人だったが、気配の感じだと40人くらいいるかもしれない。
増えた10人の中に家族がいてくれるとありがたい。
「リリル! ルリエが戻ってくるから出迎えるぞ!」
「はーい! 行こう、ツヴァイル! フミちゃん!」
「ガウッ!」
「フミャ!」
どうやら二匹も行くようだが、フミに関してはルリエが警戒しそうなんだけどいいのかな?
……まあ、その辺りの説明はリリルに任せてしまおう。
そんな事を考えていると道の先にルリエの姿が見えてきたのだが……あー、うん、やっぱり剣を手にしてるね。
「大丈夫だからー! 安心してこっちに来ーい!」
俺の声が届いたのか、ルリエは納得していないような表情だったが後ろを振り返り手招きしている。
すると、武器を持った者たちが五人。こっちはRの冒険者だろう。
その後ろにはぞろぞろと移住者が並んでおり、殿にはシリルさんとリーレインさんがいた。
リーレインさんがもの凄い勢いで手を振っているが、これは振り返さなくてもいいだろう。……だって、面倒くさいし。
「お疲れ様、ルリエ」
「別に疲れてはいないけど……ねえ、その魔獣はなんなの?」
「やっぱり気づいたか?」
「そりゃ気づくわよ! もの凄い気配があるんだからね!」
「……そうか?」
「そうよ!」
俺としては全く敵意がないので感じられないが、他の者たちからするとそうではないのだろう。
だが、冒険者の五人はポカンとしているので特に何も感じていないようだ。
……フミはフミなりに、気配を隠しているという事かもしれない。
「やあ、スウェイン。お待たせしたにゃ」
「お疲れ様です、シルクさん。……移住者、増えましたよね?」
「そうなんだにゃー。リーレインさんがいきなり追加してきたのにゃ。だから少しだけ遅れたにゃ」
「ちょっとスー君! 無視は酷いんじゃないかな、無視は!」
「あはは。……まあ、家族構成によっては待たせる事になるかもなので、先に決まっていた人に家を割り当ててもいいですか?」
「ここでも無視なんだね! 本当にスー君は面白いなあ!」
やっぱり面倒くさいよ、この人は。
とはいえ、移住者を外で待たせるのも申し訳ない。
俺は挨拶を簡単に済ませると、家が建ち並ぶ一画へと案内する。
ちょうどロットさんや子供たちもいて挨拶を行い、その後にサイクロプス一家やインプ一家とも顔を合わせた。
やはりと言うか、最初はどうしても緊張して表情を強張らせている。
それでも、魔族を追い出すという選択肢は俺の中にないので慣れてもらうしかない。
「こちらが皆さんが暮らす家になります。ほとんどが同じ造りになっていますが、家族構成に合わせているものもあるので、呼ばれた人は待っていてくださいね」
横並びになっている一軒家を見た移住者たちの反応は様々だ。
声をあげて驚いている者や、知り合いと顔を合わせてポカンとしている者。
喜びの声をあげている者もいるし、これだけの反応を見られれば頑張った甲斐があると言うものだ。
「皆さんならここの家でも十分に生活できると思いますが、暮らしてみて何か希望があれば教えてください! できる限り改善します!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
嬉しい返事を聞いた後、次に家族が多い人たち向けの家に向かう。
移住者の中で家族が多いのは二組。四人家族と五人家族だ。
それと、別の意味で確認が必要だったもう一組。
「七色の光の皆さん、ちょっといいですか?」
「は、はい!」
返事をしてくれたのは、大柄な男性冒険者だった。
「あなたがリーダーですか?」
「はい! ジドと言います!」
「七色の光は共同生活を送りますか? それとも、それぞれが別々で暮らしますか?」
高レアリティの冒険者となると、パーティで共同生活を送る拠点を作ることがある。
Rである彼らがその事を考えていたとは思えないが、ここではそんな事は関係ない。
彼らがやりやすいのであれば拠点となる家を提供するし、そうでなければそれぞれで生活してもらっても構わない。
特に、女性もいるパーティだから気にする者がいるかもしれないのだ
「きょ、拠点を頂けるんですか!?」
「希望があれば。その想定もして家を建てているからな。いらないなら今後の移住者のために置いておくけど、どうする?」
「少しお待ちいただけますか!!」
ジドは歩きながらパーティメンバーと相談を始めた。
すぐに決まる事でもないだろうし、俺は先に二組の家族を家に案内していく。
子供たちは無邪気なもので自分たちの家に喜んでいたが、親はとても恐縮している。
移住を決めてくれただけでもありがたい、その代わり仕事はちゃんとしてもらう、と答えるに止めて中に入ってもらった。
案内を終えて外に出ると、ジドがこちらを見ていたのでパーティとしての判断が決まったのだと判断してそちらへ向かう。
「そ、村長! もしよろしければ、俺たちに拠点を頂けますか!」
こうして、最初の移住者の家がすべて決まった。
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