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別行動をした結果です

 ――俺がブレイレッジに戻ってきてから五日が経過した。

 その間の俺はと言えば、当然ながら新しい家造りである。

 大人の男手が手伝いを買ってくれたので予想以上に順調に建築は進んでいった。

 魔法が使えたインプのイブーさんには材木の伐採を。

 大きくて怪力であるサイクロプスのサイロさんには木材調達を。

 人族のロットさんには俺の補佐をしてもらった。

 補佐と言っても、俺が高い場所にいる時に材木を投げてもらうとかだが、それだけでも十分に時間の短縮になるのだ。

 今回は人族のみの移住なので特別大きかったり、小さい家を建てる必要はない。

 家族構成も事前メモで分かっているので、ある程度の間取りもばっちりだ。


「結構な数の家を建てましたが、本当にこれだけの移住者が来るのですか?」

「ルリエや協力者が言うにはね。まあ、備えあれば患いなしだよ」


 心配そうに口にしたロットさんだが、これは必要な事なのだ。

 ルリエもそうだけど、リリルも勝手に移住者を連れてくることは無くなっている。だが、それを安易に信じるほど俺は甘ちゃんではない。

 何かの拍子に助けの手を差し伸べ、その後を俺に丸投げなんてこともやりそうなんだよな。

 今回建てている家だって、メモ書きの人数が暮らせる以上の数を建てている。

 それは俺が去った後に移住者が増えている可能性を踏まえてのものだった。


「五日で三十戸ですか……相当な数ですね」

「本当は二五戸もあれば十分なはずなんだけど、一応な。余れば倉庫にしても良いし、次の移住者に備える事もできるでしょう?」

「その通りですね。それでは私はこれで」

「あぁ、助かりました」


 頭を下げて去っていくロットさんを見送り、俺は大きく伸びをする。

 根を詰めて何かを造るのは久しぶりだったので、少しばかり疲れてしまった。


「……まだ戻ってはこないみたいだし、あいつらの様子でも見に行くか」


 今の時間なら、中央の広場で遊んでいる頃だろう。

 そんなことを考えながら足を進めると、やっぱりいた。


「フミちゃん! こっちだよ!」

「フミャ~!」

「フミー! こっちこっちー!」

「フミャミャ~!」

「……フミ?」


 いったい誰の事を言っているのかと遠目から子供たちを眺めていると、明らかにあの黒猫に声を掛けているように見える。

 ……あいつら、連れてきた俺の許可なく勝手に名前を付けたのか?


「あっ! お疲れ様、スウェイン!」

「ん? あぁ、お疲れ様。なあ、リリル。いつの間に名前なんか付けたんだ?」

「え? 最初に付けたけど?」

「……最初?」

「うん。スウェインがフミを連れてきた時に」

「……誰が?」

「私が」

「お前かよ!」


 子供たちが付けたのなら許せたが、お前の場合は話が変わってくるぞ!


「お前、俺の許可なくなんで勝手に名前を付けてるんだよ!」

「許可なんて必要なの?」

「必要だろ! だって、俺が連れてきたんだぞ!」

「でも、お世話をしているのは私よ?」

「うっ! ……そ、それは」

「それに、スウェインは帰ってきてからずっと家を建てていて、全く関わらなかったじゃないのよ!」


 ……ぐ、ぐうの音も出ない。

 だがしかし! ここで黒猫が俺のところに走ってこようものなら、俺に懐いていると言っても過言ではないだろう!


「おーい、黒猫ー」

「フミャ? ……ミャミャ?」

「くろねこー?」

「フミちゃんのことかなー?」


 黒猫と遊んでいたロリィとミレットが顔を見合わせている。それは分かる。

 だが、黒猫まで首を傾げているのはどうしても納得がいかない。

 俺が呼ぶ時はずっと黒猫だっただろうが!


「……ブミャ」

「んなあっ!?」

「完全にそっぽ向かれたわね」

「ぐぬぬっ! おい、黒猫! お前だよ、黒猫!」


 …………ま、全く反応を示さない。


「スウェインおにいちゃん。あのこはフミちゃんだよ?」

「そうだぞ! フミってよばないとこないぞ!」

「子供にまで諭されちゃって、大人げないわね?」


 ……くっ! ここで俺がフミと呼んでしまったら、リリルに負けたも同然だ!

 しかし、黒猫が気に入っている名前なら、それも致し方ないのか!


「……フ……フミ」

「フミャン!」


 …………くっ! か、可愛いじゃないか!

 全速力で駆け寄って、そのまま足に顔をこすりつけるんじゃないよ!


「……フミで決定」

「最初からフミだったのよ。ねー!」

「フミちゃんかわいいよね!」

「うんうん!」


 最近の俺って、モフモフに負けてないか?

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