どうしてついてくるんですか?
ボートピアズを出る日程が決まったら改めて連絡をすると伝え、俺たちはシルクさんお店を後にした。
……うん、後にしたんだが、何故かついてくる人物がいるんだよなぁ。
「……あの、リーレインさん?」
「どうしたの、スー君?」
「なんでついてくるんですか?」
「なんでって……暇だから?」
暇だからって、Nとの引き合わせとか、やることがあるんじゃないのか?
「僕のやることはもうないんだよー」
「えっ?」
「スー君、顏に出過ぎだよ。これでも300年以上生きているから、表情から相手の心情を読み取ることくらい、お安い御用なのさ」
これは、なかなかに難しい相手じゃなかろうか。
まあ、悪い人ではないし、300年もの知識を持っているのだから、色々と手助けしてもらえると考えればいいか。
「そういえば、移動はどうするつもりなんですか? 俺たちが護衛しながらの移動になると思うんですけど?」
リーレインさんの存在感があり過ぎて聞くのを忘れていたのだが、Nとの橋渡しがリーレインさんなら聞いておこう。
「そうなるね。村の場所が分かれば僕やシー君で護衛もできるけど、分からないからなー」
「リーレイン様も、戦われるのですか?」
……ん?
何やら、ルリエの話し方が硬い気がするんだけど、気のせいじゃないよな?
「嫌だなぁ、ルーちゃん。僕にもみんなと同じように話してよ」
「で、ですが……」
「もしかして、エルフってそんなに偉い種族なのか?」
数少ないとは聞いたけど、その立ち位置はよく分かっていない。
人族も魔族も関係ないとも言っていたし、もしかすると神に近い存在なのだろうか。
「うーん、そんなことはないと僕は思うんだけどね。ただ、多くのエルフが自分たちが誰よりも優れている種族だと思っていたのは確かだよ」
「思っていたってことは、今は違うんですか?」
「さっきも言ったけど、僕は数少ない生き残りの一人だから、そもそもの数がもう少ないんだよ。他のエルフを僕も知らないし、生き残りがどう思っているかは分からないってことだよ」
笑いながらそう口にしたが、ルリエの表情は硬いままだ。
まあ、本人が慣れてくれるまではどうしようもないので、俺から何かを口にすることはしない。
……そう、口にすることはしない。
「それなら、村への案内はルーちゃんにやらせようかな?」
「ちょっと! っていうか、あんたがルーちゃんって言わないでよ!」
「ダメか?」
「ダメよ! それに、どうして私だけが案内になるのよ!」
めちゃくちゃ怒られてしまったが、俺としてはその方が助かるんだよな。
「一番の理由は、移住者が思いのほか多いってことだ。今ある家だけでは足りないし、早急に多くの家を建てる必要がある。そして、それに必要なのが俺なんだよ」
「……だから、あんたは先に帰るってこと?」
「そういうことだ。戦力的に問題があるなら俺も残るつもりだったけど、リーレインさんがいるし、シルクさんも戦える……って、戦えるんですか?」
これまたリーレインさんの存在感が……は置いておき、シルクさんの話を聞き流してしまった。
「シー君も戦えるよ! 今は素材屋をやってるけど、昔は自分で素材を採ってきて、鍛冶をしていたからね」
「それは、予想外でした」
あの小柄なシルクさんがどのように戦うのか、少しだけ気になってしまう。
だが、話が逸れてしまったので軌道修正しなければ。
「ま、まあ、シルクさんも戦えるとなれば、戦力は充実しているんじゃないか? Rとはいえ、冒険者パーティもいるんだし」
「……まあ、それはそうだけどさぁ」
「それじゃあ、出発の時はよろしくね、ルーちゃん!」
満面の笑みを浮かべながら差し出されたリーレインの手を、ルリエは暫し逡巡した後に握り返していた。
「うんうん、これからさらに仲良くなってくれそうだな!」
「……あんた、年下のくせに生意気よ!」
「ちょっと、止めてくれ!」
腕を肩に回されてぐりぐりされているのだが、頬にルリエの胸が当たっている。
冒険者装束でもないので硬い鎧ではなく、柔らかな感触なのだ。
「あはは! 君たち、仲が良いんだね!」
「そ、そんなこと言ってないで、助けてくださいよ!」
「うるさい! ヘタレのくせに、本当に生意気ね!」
「へ、ヘタレ言うな!」
そんな感じで、俺たちは教会へと足を向けたのだった。
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