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酔った女性の相手は難しいです

 その後、俺はヴィリエルが問題を起こさないよう――すでに起こしているとも言えるが、愚痴の相手を続けていた。

 概ね口にされるのが元勇者に対しての愚痴である。

 すでにこの世にはおらず、むしろ自らの手で止めを刺したのだからもういいのではないかと思うが、相当な鬱憤が溜まっていたのだろう。

 ……俺も、注意しなければならないと気を引き締めよう。


「それでねえ! わたひもひっしになっへがんばったのよ! それにゃにょに……それにゃにょにいいいいぃぃ! ……ぐすん」


 えっ! そこで泣くのか、泣いちゃうのかよ!

 泣いている女性の相手なんて、過去を遡っても一度もなかったんだけど!


「えっと、そこはほら、これからの糧にするとか、もう元勇者はいないわけだし、俺もそうならないように頑張るからさ!」

「……スウェイン、がんばってくりぇりゅの?」


 本名を言っちゃってるよ、こいつ。

 とはいえ、ヴィリエルの対応に注意するのと同時に、俺も自分に自惚れないよう注意しなければならない。

 勇者というのは便利なもので、ほとんどのことを一人でできてしまう。

 ヴィリエルが言うには、元勇者はそんなことなかったと言っていたが、俺はそうなのだ。

 いきなりの勇者任命ということで、あの女神……駄女神が、ちょっとは優遇してくれたのかもしれないけどな。


「……ちょっと、スウェイン? きいてるにょかー?」

「き、聞いてますから! 近い、近いですよ!」


 最初はテーブルを挟んで座っていたのだが、酔いが回ってくるにつれてヴィリエルはにじり寄ってきて、今では隣で体を密着させてきている。

 ……正常な男、自制すべし!


「にゃにぃよー。……でも、ほんとうに、がんばってよね?」

「……もちろんだ。信じて移住してくれる人もいるんだしな」


 そこの覚悟はすでに決まっている。

 俺の全てを駆使して、ブレイレッジを豊かな集落にする。……そう、集落だ。


「……みんな、きてくれるかにゃ」

「そうだな。このままNとして、肩身の狭い生活を送って欲しくはないな」


 ……少しだけしんみりしそうな雰囲気になったものの、俺にそんな余裕はない。


「……だからさ、ヴィリエル」

「ルリエ」

「……いえ、ここは外だし」

「個室」

「……ってか、なんで俺の名前を本名で」

「だれもいない」

「……」

「……ねえ、いいでしょ?」


 ドキッ!

 ……いやいや、ドキッ! じゃねえよ!

 ほてっているのかやや潤んだ瞳で見つめられてしまい、不意を突かれてしまった。


「ちょっと、酔い過ぎだぞ、ヴィリエル」

「ルリエ」

「……はぁ。ルリエ、酔い過ぎだからとりあえず水を飲め」

「やだ」


 否定を口にしつつ、俺の腕をギュッと引き寄せる。

 柔らかい感触が腕に伝わり、体を強張らせてしまう。


「ちょっと、ルリエ!」

「……だれも、いないよ?」


 ……そうだな。確かに誰もいない…………。


「……じゃねえよおおおおおおおおぉぉっ!!」


 俺が勢いよく立ち上がると、ルリエは腕を離して後ろに尻もちをつく。

 その拍子に服が少しだけはだけ、胸の谷間が露わになる。


「……」

「……だれも」

「ちょっとお手洗いに行ってくる! 水を飲んで酔いを醒ましとけよ!」


 この場にいては理性が持たないと判断し、俺は一度個室を出てお手洗いへ。

 すれ違う人がいなかったのは幸いだ。今の俺は、非常にぐちゃぐちゃの顔をしているだろうから。


(さすがにダメだろ、あれは! 悪い男だったら、手を出してるぞ!)


 俺がそうじゃないとも言い切れないが、一度冷静になろうと考えられるだけ、まだ落ち着けていると思う。

 冷たい水で顔を洗いながら息をつく。


「……戻ったら、もうお暇しよう」


 そう心に決めて個室に戻ったのだが、そこで見た光景に俺は大きな溜息をついてしまった。


「……くぅー……すぅー……」

「……寝てるし」


 衣服を正しているので、俺が理性を吹っ飛ばすという事態にはならなかった。

 ずっと接客してくれていた店員に声を掛け、支払いについての相談をしようと思ったのだが、後日で構わないと言われてしまった。


「いつものことですから」


 酔いが醒めたルリエが後日現われ、支払いを済ませていくらしい。

 ツケというか、後払いというか。ここの店主は、相当ルリエを気に入っているらしい。

 俺は店員に頭を下げて、ルリエを背負いながら宿屋へと戻っていく。

 背中に感じる柔らかな感触は仕方ないと自らに言い聞かせながらの道中、そして宿屋に到着して部屋に戻ってから気がついた。


「……あれ? へやにかえって、きた?」


 ……あのまま寝ててほしかった。大人しくしていてほしかった。

 だって、同じ部屋なんだもの!

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