高級店は、驚きの連続でした
向かった先は、足を運んだことのなかった高級店が立ち並ぶ一画。
ヴィリエルは迷うことなく進んでいくが、俺は自分の身なりを気にしてしまう。
自分で簡単に作った冒険者装束であり、周りの人たちとは明らかに異なる。
人によっては嫌そうな視線を向けてくる者もいて、居心地は良くない。
「……なあ、ヴィリエル。本当に良かったのか?」
少し前を歩いていたヴィリエルの隣に並んで小声で問い掛けると、気にした様子もなくはっきりと口にする。
「問題ないわよ。これから行くお店は、個室しかないところだからね」
個室ねぇ。
……いやいや、そうじゃなくて!
「そのお店だって高級店なんだろ? 俺みたいな身なりの者が入れるのかって話だよ」
「だから、問題ないわよ。そこは羽振りの良い冒険者を狙っている高級店だからね」
「……冒険者って、儲かるのか?」
勝手なイメージだが、冒険者のほとんどは荒くれ者だと思っている。
ヴィリエルのような実力者には礼節を重んじる者もいるかもしれないが、そちらの方が少ないだろう。
「入店する者を選んでいるのよ」
「店側が選ぶって、どうやって?」
ヴィリエルの説明によると、まずは見た目が重要なのだとか。……そう、見た目が。
「アウトだろ!?」
「そこは大丈夫。私がいるからね」
見た目も大事だが、それよりも重要視されているのが、一度認めた相手が招待したという事実なのだとか。
店側が認めた相手は当然ながら礼節を重んじるタイプの冒険者だ。そして、その相手が店のコンセプトを理解して招待したのだから、招待客も当然ながら同じような人物だと考えているのか。
「……そこで俺が変なことをしてしまったら?」
「次回から、私も入店を断られることになるわね」
「……気をつけます」
別に問題を起こすつもりはないが、気をつけることは大事なことだ。
そんなことを考えていると、目的の店に到着したようだ。
「ここよ」
「……で、でかくないか?」
「この辺りではトップテンに入る高級店だからね」
「そ、そこまでのお金はないんですけど!?」
10000Dあるとはいえ、トップテンに入る高級店で十分に食事ができるとは思えない。
というか、値段の相場が分からないのだ。
「うふふ。大丈夫よ」
「……本当ですか?」
「えぇ。だって、私が出すからね」
「……はい?」
えっと、えっ? だって、俺に残高を確認してましたよね?
「これでも年上よ? スレイが村長ではあるけど、さすがに奢らせるなんてことはしないわよ」
「で、でも、お金は?」
「これでもURとして冒険者活動もしていたのよ? それなりには貯まっているわよ」
……俺の心配は、どこへやら。
しかし、相場を知っているヴィリエルが自分のお金で問題ないと言ってくれているなら、本当に問題ないのだろう。
「スレイにはお世話になっているもんね。お礼をさせてちょうだい」
「……そういうことなら。ありがとうございます」
ここでまで強気な態度をとるわけにはいかず、素直にお礼を口にした。
だが、そんな態度に違和感を覚えたのか、ヴィリエルは首を傾げている。
「どうしたの? なんだか、スレイじゃないみたいよ?」
「奢ってもらうんだし、お礼を言うのは普通だろ?」
「……まあ、いっか」
最後には笑みを浮かべてくれたので、まあ、納得してくれたのだろう。
そのまま店の中に入ると……おぉぅ、めっちゃ高級店やん。
「……き、金色って」
「初めて来た人は、みんなそう言うわね」
壁紙が全て金色、調度品も宝石がちりばめられた壺やらが飾られている。
地面には真赤な絨毯が敷かれており、汚れた靴で踏んでしまうのが申し訳なく思えてしまう。
「いらっしゃいませ、ヴィリエル様」
「今日は招待客もいるわ」
「す、すみません、このような衣装で」
俺が申し訳なさそうに口を開くと、店員はニコリと笑い首を横に振る。
「いえいえ、そのようなことはございません。むしろ、今のように謝罪を口にしてくれたことが、お客様が礼節を重んじる方であると証明しておりますからね」
「ですが、絨毯が汚れてしまいませんか?」
「こちらですか? ふふ、大丈夫ですよ」
店員はそう言いながら、パチリと指を鳴らす。
すると、絨毯が奥の方から白い光を放ち、その光が手前に移動してくる。
そして――絨毯の汚れが自動的に綺麗になっていた。
「これは自動清掃の機能が付いた絨毯なので、汚れも気になさらないでください」
「……す、すごいですね」
「そういうことだから、行きましょう」
「……あ、あぁ」
驚きの連続に頭が追いつかないまま、俺は案内された個室に入っていった。
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