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今度はそちらからですか

 ◆◆◆◆


 集落と呼んでいいのか分からないが、とにかく住民が増えたことで、俺は仕事を割り振ることにした。

 さすがに全てを俺だけでやるわけにもいかず、彼らも何か仕事が欲しいと言ってくれたからだ。

 とはいえ、やることといえば畑仕事くらいしかなかった。


「あの、俺はNですが、職業は農夫なんです。なので、お手伝いできると思います」


 そう言ってくれたのは、大人では唯一の男性であるロットさんだった。

 一応、俺は住民の職業を教えてもらっている。

 ロットさんの奥さん、ミリーさんが針子。

 姉妹の姉でレベッカさんが商人、妹のエミリーさんが細工師だ。

 現状、商売もできないし布や金属もないので女性陣に仕事はないものの、ロットさんの畑仕事の手伝いをしてもらっている。


「うーん、どうにかしてみんなに仕事を与えられないものか」


 話し合いから数日が経ち、そんなことを考えていると、リリルとルリエが同じタイミングでお互いの部屋から出てきた。

 ……それも、大荷物を抱えて。


「お前たち、どこに行くつもりだ?」

「魔界に行こうと思っています」

「困っているのは人族だけじゃないからね。魔族のRで、リリルさんを慕っている人がいたら連れてこようと思って!」


 ……だからさあ、お前さん方。


「そういう大事なことを勝手に決めるなって、前にも言っただろうが!」

「……ごめんなさい」

「本当に分かっているんだろうなぁ」

「わ、分かってるわよ。でも、スウェインだったら受け入れてくれるかなーって」

「今はもう、俺たちだけの場所じゃないんだぞ! ここにはロットさんたちもいるんだから、みんなの意見を聞く必要があるってことだよ!」

「「……あっ!」」


 頼むから、勝手に変なことをしないでくれ。


「とりあえず、今日の出発はお預けだ。みんなで話し合いをして、それから決めることにしよう」

「「……はい」」

「クウウゥゥゥゥン」

「……一応聞くが、ツヴァイル。お前も行くつもりだったのか?」

「ガウガウッ!」


 ……もう、お前との獣魔契約をリリルかルリエに移したくなっていたぞ、俺は。


 そして、その日の夜に全員が俺たちの家に集まった。


「今日はどうしたんですか?」


 ロットさんはすっかり住民たちのまとめ役になったみたいだ。

 まあ、唯一の男性だし、集落をまとめている俺も男だから、自然とそうなった感じだけどな。


「こちらの二人が、皆さんを連れてきた時のように、まーた勝手に動こうとしていたので意見を伺いたいと思ったんです」

「「……すみません」」


 肩を落としている二人を左右に座らせて、俺は簡潔に内容を説明した。


「……魔族を移住させる、ですか?」

「はい。そんな大事なことをこいつらは勝手にやろうと!」

「もう、スウェイン! さっきから何度も謝っているじゃないのよ!」

「そ、そうだぞ! 説明もしたんだから、後はみんなの意見を聞こうじゃないか!」


 ひ、開き直りやがったよ、こいつら!


「でも、どうなんだろうな」

「リリル様のようにお優しい方ならいいんですが、魔族というのは、その……怖いイメージがありますから」


 ロットさんとミリーさんは難色を示しているか。


「……私たちも、その」

「……怖い、ですね」


 うーん、レベッカさんとエミリーさんまでダメとなると、さすがに厳しいかも。


「どうしてまぞくはダメなの?」

「わたしたちみたいにこまってるんだよね?」

「……ロリィ君、ミレットちゃん」


 難色を示す大人たちとは異なり、子供たちはどうして助けてあげないのかと首を傾げている。

 だが、その反応を見た大人たちはハッとした顔をしていた。


「……そうだな。ロリィ、ミレット」

「うん。私たちに手が差し伸べられたように、魔族の方々にも差し伸べられていいと思うわ」

「人族も魔族も、関係ないものね」

「そうだわ! ありがとう、ロリィ君、ミレットちゃん!」


 ……どうやら、決まったみたいだな。


「それじゃあ、明日には出発してくれ。それまでに、また数軒の家を建てておくからさ」


 俺が笑顔でそう告げると、下を向いていた二人は顔を上げてお互いに見合うと、突然抱きついてきた。


「どわあっ!?」

「ありがとう! スウェイン!」

「さすがスウェインね! 男がでかいわ!」

「と、とりあえず離れてくれ! いいか、何か、当たって……いいから、離れろおおおおっ!」


 こうして、俺の集落には魔族が移住する予定が立ったのだった。

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