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話し合いです

 とりあえず俺はポロ芋を薄くスライスして油で揚げた。

 パチパチと油が弾ける音と共にポロ芋が揚がる香ばしい匂いがリビングに広がっていく。


「いいにおいだねー、おにいちゃん」

「そうだな!」


 イスに座って足をパタパタさせている姿に心癒されながら、タイミングを見計らって油からあげる。

 そして、パラパラと塩をまぶして全体に馴染ませると完成だ。


「これぞ、揚げポロスライスだ!」

「「……センスないわね」」

「「おいしそうー!」」


 ……こ、子供たちがいなかったら、俺はここで心抉られて倒れていただろう。

 だが、今はこの揚げポロスライスをこの子たちに食べさせるという使命があるのだ、倒れるわけにはいかない!


「へい、おまち!」

「「いただきまーす!」」


 揚げたてが一番美味いのだ。

 さて、どのような反応を見せてくれるのか……。


「すごいパリパリー!」

「あついけど、おいしい!」

「そうか、そうか! やっぱり子供は笑顔が一番だなー!」


 俺が満足そうに子供たちを見ていると、何やら視線を感じてしまう。


「「……ゴクン」」

「……なんで二人が涎を飲み込んでるんだ?」


 大人用には料理を出そうと思っていたが、これなら手軽に作れるおつまみ程度でよさそうだな。


「すぐに作るから待ってろ。すみませんが、皆さんももう少しだけ待っていてください」

「「お願いします、スウェイン!」」


 他の大人たちは申し訳なさそうにこちらを見ているのに対して、二人は申し訳なさの欠片もなく笑顔で手を合わせている。

 ……俺、こいつらと暮らしていくのかー。なんか、苦労する未来しか見えないなー。

 そんなことを思いつつも、俺は手際よく料理を作っていきながら、足元でじゃれてくるツヴァイルに生肉を提供する。


「ガフッ! ガフガフッ!」


 大人用に塩だけではなく胡椒をまぶした揚げポロスライスにお手軽味付けのブラックウルフのお肉、それにモルコーンポタージュを出した。


「まずは腹ごしらえからしましょうか」

「「いただきまーす!」」

「……ど、どうぞ、召し上がってください」


 こいつら、面倒なことは俺に丸投げするつもりじゃないだろうな。

 そんな嫌な予感をしつつも、俺たちは食事を始めた。

 最初は食べていいのか困惑していた大人たちだが、俺が食べるように促すと初めに男性が、その後に女性三人が食べてくれた。

 一口食べてからは空腹だったことを思い出したかのように一心不乱に食べ始め、女性の中には泣きながら食べる者までいた。

 ……Nだと、職業にもよるがその日を食べることすら難しい場合もある。悪い場合だと数日、何も口にできないことだって当然のようにあるのだ。

 こうしてお腹いっぱい食べられるのだって、何年振りとかかもしれない。


「……ありがとう……ありがとう、ございます」

「あぁ……とても、温まります」

「うぅぅ、美味しいよ、姉さん!」

「そうね、とっても美味しいわね」


 そして、全員が料理を完食したところで話し合いを始めた。

 まず、リリルとルリエに説明してもらう必要があるのだが、話を聞けば先ほど簡単に口にしていた通りだった。

 人族のNと魔族のRが安心して暮らせる集落を作りたい。

 しかし、言葉にするのは簡単だが、実際に事を成そうとすると相当な労働が必要となる。

 今回はたまたま、俺が建てた家があるからいいものの、人数が多くなればその分、さらに多くの家を建てなければならない。

 食糧だって自給自足だし、この辺りには魔獣だって生息しているのだ。


「その、スウェインだったら、断らないと思ったのよ」

「そう思ったのはお前たちだけだ。肝心の俺に何の確認も無しに連れてくるのは間違っているだろう。それに、この人たちにも失礼だ」

「……お、俺たちに、失礼、ですか?」


 今まで人として見てもらえなかったのか、男性は自分たちの為に口論している俺たちを見て困惑しているようだ。


「……先ほどリリルが口走ってましたが、俺は本当に珍しい、おそらく唯一の例だと思いますが、職業が突然変わった人族なんです」

「職業が変わるって、あり得るんですか?」

「あり得ないでしょうね。ただ、俺の元の職業はNです。皆さんも、Nなんですよね?」


 俺の言葉に大人たちは全員が頷いた。

 子供たちはまだ職業ランクの確認を行う歳ではないので分からないのか、首を傾げてお母さんだろう女性の横に良い子で座っている。


「だから、俺も皆さんの気持ちが分かります。Nだと分かったその日から村人の、友人の、そして家族の態度が明らかに変わりました。そして、三日後には村を追い出されて森の中で空腹に負けて倒れました」


 ……あぁ、だからか。だから、二人は俺が断らないと思ったんだな。


「……俺は自分の手が届くところでしか手助けできません。森の中は危険も多いです。特にここは人界と魔界の境に近いので、魔獣が群れでやって来ることもあります。そんな危険な場所でもよろしければ、俺は皆さんを歓迎しますよ」


 そして、俺の最後の言葉に驚いたのか、俯き加減だった大人たちは勢いよく顔を上げ、今回は全員が涙を流していた。


「……ありがとう、スウェイン」

「いいよ。それに、勇者の俺が人族のNを助けるなんて、今までなかったことだろうしな」

「……えっ? ゆ、勇者、ですか?」


 ……あれ? 俺の正体を言ってなかったのか?


「……ちなみに、お前たちの正体も言ってないのか?」

「わ、私は伝えてない」

「私は伝えたわよ。前勇者を殺した剣聖だってことを伝えた方が、Nからすると受けがいいからね」


 ふむ、そう言うことなら俺たちの正体を伝えたうえで、みんなには決定してもらった方がいいだろうな。


「えっと、俺は突然職業が変わったXRの勇者です。そして、リリルは魔族で魔王の娘になります」

「よ、よろしく」

「「「「……ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」

「どうしたのかな?」

「なんだろうなー」


 驚愕する大人たちとは違い、子供の反応はやはりかわいいものですなー、うん。

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