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デーモンスレイヤー

 魔人が引き起こした大爆発は、大きなクレーターを作り、地形を変えてしまうほどの威力を持っていた。

 リリルたちは辛うじて俺の魔法によって生き残ったが、それでもダメージがゼロというわけではない。

 ここから三度目の戦闘というのは、正直難しいだろう。

 だが、ダメージがあったのは何もリリルたちだけではなかった。

 大量の魔力を溜め込んだ魔人の肉体も吹き飛び、再生が追いつかないのかドボドボとどす黒い血を垂れ流している。


「……ゴ……ゴロ、ズ……」


 さて、どうして俺がここまで冷静に状況を分析できているかなんだが……いやー、俯瞰で見れるというのは、とても分かりやすいものである。


「……やってやりなさい、スウェイン!」

「……最後の一振り、任せたわよ!」

「……アオオオオオオォォン!」

「ドコダ、ドコニイルウウウウッ!」


 おいおい、ここにきてようやく流暢に喋り出しやがったな。

 だが、ここまでやってくれた魔人と話をしようとは思っていないし、ルリエを恨んでいる限りは助けるつもりもない。

 爆発の直前に飛び上がった俺は、重力に従い落下しながらデーモンスレイヤーを振り上げた。


「これで、終わりだああああああああっ!!」

「ウエダト!?」


 顔を上げた魔人と目が合い、俺はニヤリと笑った。

 この一撃は必ず当たる。不思議と俺の中ではその核心を持っていた。

 その場から逃げようとした魔人だったが、度重なるダメージの蓄積により左足が砕けてバランスを崩す。

 それすらも把握した渾身の一振りが、魔人の脳天に直撃した。


「ギャアアアアゴオオオオグリュルルラアアアアアアアアッ!?!?」


 聞いたことのない絶叫が魔人の口から放たれる。

 そして、デーモンスレイヤーから放たれた黒い雷が魔人の姿を包み込み――その身を跡形もなく炭化させてしまった。

 再生もくそもない、完全なる焼却である。

 ……まさか、炭化した状態から再生とか、ないよな?


「……だ、大丈夫、そうだな」


 風に乗って消えてしまった魔人の炭を見つめながら、俺は全身の力が抜けてしまいその場で座り込んでしまった。


「……だあぁぁぁぁっ! つ、疲れたぁ」


 魔人を倒して家と畑を守れたのは良いことだが、これだけ苦労して収穫なしというのはどうにも納得できない。

 せめて角とか骨とか、加工に使えそうな素材があればなぁ。


「……まさか、あの魔人を倒すとわね」

「……全く、勇者と偽っているかと思えば、本物みたいね」

「ガウッ! ガウガウッ!」


 俺ががっかりしていると、後ろから二人と一匹の声がした。

 振り返りその姿を見ると、何故だか先ほどまでの考えは吹き飛びホッと胸を撫で下ろしている自分がいる。


「リリル。ルリエ。それに、ツヴァイルも。みんな、無事でよかったよ」

「あなたがいなかったら、私たちは死んでいたわね」

「これでは、信じるしかないみたいね」

「……一応、説明はちゃんとするぞ? 後から、やっぱり違うわね! ってなっても嫌だし」

「私は嘘なんてつかないわよ?」

「偽名を使ってたじゃないか」

「あ、あれは、私もエレーナに追われていたからよ! そ、そういうあなたは偽名どころか全てを偽ってたじゃないのよ!」

「はいはい! 口喧嘩はそれくらいにして、今は安全な場所に戻ってゆっくりしませんか?」


 手を叩きながらそう提案してくれたリリルに、ルリエは頷きツヴァイルも吠えながら同意の返事をしている。

 俺だってそうしたいのだが……そのゆっくりする場所って、俺の家だよね。


「なんでリリルが提案するのかな?」

「いいじゃない。私たちの家なんだから」

「スウェインは尻に敷かれるタイプね」

「ガウ? ……ガウガウッ!」


 おい、ツヴァイル! お前は俺のところに来いよ! なんでリリルの足元で大人しくしているんだ!


「ほら、さっさと行くわよ、スウェイン」

「リリルさんに従っていたらいいわね、これは」

「ガウガウッ!」


 さっさと歩き出してしまったリリルたちを見つめながら、俺は大きく肩を落とした。


「……まあ、いっか」


 ゆっくりと立ち上がった俺は、一人トボトボと二人と一匹を追い掛けて歩き出したのだった。

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