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新たな魔人

 ……あぁ、ヤバいな、これは確かにヤバい。

 目の前に立っているだけなのに、汗が噴き出してくる。


「……なあ、ルリエ。お前は、こんな奴らを相手にしていたのか?」

「……これほどの相手とは、戦ったことがないわ」

「……こいつ、私よりも強いんじゃないかしら?」

「……グルルルルゥゥ」


 全員が最大級の警戒をしている中、女体型をしている魔人が顔を上げると、真っすぐにこちらを見つめてきた。


「……テキ?」


 ――ゾワッ!


 体が勝手に動いていた。

 肩を貸していたリリルとルリエのところに突き飛ばし、レッドスターを盾代わりにする。

 直後、衝撃と同時にレッドスターの刀身が砕け、レッドランを陥没させながら俺自身も吹き飛ばされた。

 二度、三度と地面を跳ねて、巨岩にぶつかりようやく止まる。


「ぐはあっ!?」

「「スウェイン!!」」

「ガウガウッ!」

「テキ……テキ、テキ!」


 ……あぁ、マズい。

 勇者の能力が無かったら、あの一撃で、死んでたわ。

 いや、もう詰んだも、同然なんだが。

 聖剣と魔剣のスキルはいまだに発動せず、ツヴァイルを助ける為に魔力も底を尽いている。

 レッドスターまで失い、今の俺には攻撃手段が一つもない。

 できることといえば、逃げ回ってリルルたちを逃がすことくらいか。


「……に、にげ、ろ」

「アハッ! テキ、マダ、イキテル!」


 まるで歓喜しているように声をあげると、地面を陥没させながら飛び出してきた。

 動け……動け……動け、動け……動け動け動けえっ!!


「こなくそがああああっ!」


 突進してきた魔人を、俺は横に転がりながら回避する。

 たったこれだけの動きに、全身から悲鳴があがる。

 だが、まだやれる。みんなが逃げるまでは――


「さて、どうやって倒しましょうか」

「こんなことなら、愛剣を持って逃げるべきだったわね」

「ガウアッ! ガウガウアッ!」

「……な、なんで、逃げないんだよ!」


 お前たちがここにいたら、俺が逃げられないじゃないか!


「スウェインを置いて、逃げられるわけないでしょ?」

「これでも剣聖なのよね、私」

「グルルルルゥゥ!」


 ……はは、何を言ってるんだか。


「リルルは魔王の娘だし、ルリエは剣聖の職業を持つ英雄で、ツヴァイルは神獣なんだぞ?」


 本当ならNであるはずの俺なんかの為に、命を懸けていいはずがないじゃないか!


「テキ、フエタ? タノシメル? タノシメル?」


 まるで子供のように笑みを浮かべながら、魔人が声をあげている。

 こんな奴が成熟して人族を滅ぼすという意思を見せてきたら、あっという間に魔族に支配されてしまうだろう。

 まあ、俺にとってはどっちでも構わないが、その仮定で俺とリルルたちが死んでしまうのは許容できない。


「……なあ、俺に勇者の能力を与えた神様よ。てめえのせいで、こんな危ない奴の相手をするはめになっちまったじゃないか。何か、俺に何かもっと、力をくれてもいいじゃねえのかよおおおおっ!」


 誰かに問い掛けたわけではない。むしろ、独り言に近いものだっただろう。

 しかし、俺の言葉が届いたということなのか、目の前の光景に不思議な現象が起きたのだ。


「……あれ? 止まってる?」


 そう、俺以外の全てが止まっていたのだ。

 魔人もそうだし、リリルもルリエも、ツヴァイルも……あれ、ツヴァイルが、いない?


「――あぁっ! ようやくつながったわ!」

「……はい?」


 誰の声なのか全く分からない女性の声が、どこからか聞こえてきた。

 俺だけが動けるので視線を巡らせると、姿を消していたツヴァイルが、なんと動いていた。


「ツヴァイル? お前も動けたのか?」

「いいえ、スウェイン様。今はツヴァイルの体を借りております」

「体を、借りる? それじゃあ、あなたは誰なんですか?」


 女性であることは間違いない。だが、神獣の体を拝借できるほどの人物なんているのだろうか。


「私は、この世界ラクスラインを管理している女神です」

「……はい? め、女神?」


 いやいや、信じられるわけないでしょう。

 まあ、Nだった俺が突然XRになったことも信じられるものじゃないんだけどな。


「あれ? ってことは、俺が突然勇者になったのも、女神様のせいってこと?」

「神のせいであることに変わりはありませんが、私のせいではありません」


 ……うん、もう、意味が分からないね。


「とりあえず、今のこの状況をどうにかしてくれるってことですか?」


 今、このタイミングで話し掛けてきたのだから、きっと力を貸してくれるのだろうと思ってそう口にした。


「スウェイン様は勇者として生まれ変わりました。ですので、人族の為に戦っていただけませんか?」


 ……いやいや。女神様、あなた。この状況、分かってます?

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