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復活の剣聖

 振り抜かれた大剣はエレーナの左腕を落とし、返す剣で右足を傷つけた。


「ぎゃああああああああああああっ!」

「ちいっ! 仕留め損ねた!」

「殺す! 殺す、殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」


 怨嗟の声をあげながらも、即座に魔法で左腕の止血を行っている。

 だが、その方法というのが傷口を焼いての痛々しい方法だったので目を背けたくなってしまう。

 しかし、ここまでしてルリエを殺したいって、いったい二人の間に何があったっていうんだ。


「あの時、お前も殺しておくべきだったわ」

「黙りなさい! 勇者様を殺した大罪人が! 貴様は、私から勇者様を奪ったのよ!」


 ……あぁ、なるほど。男女のもつれが原因か。

 まあ、勇者が同行者に女性ばかりを選んでいた時点で、そういった問題が起こるだろうとは誰しもが思っていた。

 ルリエが同じ理由で勇者を殺したのかは分からないが、今の発言からエレーナに関しては間違いないだろう。


「そもそも、あの聖女も邪魔だったのよ! いつも勇者様の隣を歩きやがって、忌々しい!」

「聖女……そうだ。エレーナ、聖女はどうしたの?」

「どうしたのですって? ……ふふふ、私が勇者様がいなくなって、あの女を生かしておくと思っているの?」

「……そうか。結局、貴様も私と同じだということだな」


 勇者を殺したルリエ。

 聖女を殺した賢者。

 どのような理由があったとしても、仲間を殺したことに変わりはないってことか。


「……同じ? うふふ、何を言っているのかしら?」

「……どういうこと?」

「勇者様を殺した剣聖は――聖女も殺したってことよ!」

「――! 貴様、まさか、そんな嘘を吹聴していたのか!」

「嘘じゃないわ、事実だもの! 勇者様を殺した剣聖は、その足で聖女を殺して逃げ出した。賢者は常に結界を張っていたから生きていた。それが事実であり、世間はそれを信じているのよ!」


 ……だが、情報屋で購入した羊皮紙にはそのようなことは書かれていなかった。

 ボートピアズに到着した初日で購入したとはいえ、二日でここまで変わるものだろうか。


「あなたを捕らえることができれば王都で処刑。捕らえることができなければ、その場で殺すことも許可されているわ!」

「……まさか、そんな」

「勇者様を殺したのだから当然よ! 聖女はまあ、ついでね」


 人殺しをついででやってしまう賢者……こいつは、普通じゃない。


「……でもね、エレーナ。今のあなたが私に勝てるとは思えない。私の首が落とされる前に、あなたの首を落としてあげるわ!」

「私が何の準備も無しに、この場に来ていると思っているのかしら?」


 その時、杖を捨てた賢者が懐から何やら小瓶を取り出して一気に飲み干してしまった。


「な、何を飲んだの、エレーナ!」

「……うふふ……あぁ……ああぁっ! とっても、気持ちいいのよおおおおっ!」


 ……あれは……ヤバいものだ。マズいものだ!


「ルリエ!」

「分かっているわ!」


 俺が背後から、ルリエが正面から剣を振るう。

 どちらの剣も確実にエレーナを捉えた――だが、腕に伝わってきた感触は肉を断つものではなく、硬いものを打ち据えた強烈な痺れだった。


「ダ、ダメなの!?」

「くそっ、それなら!」


 俺は全ての魔力を総動員してツヴァイルを拘束している土魔法を破壊した。


「……クゥゥン」

「ツヴァイル、全力で逃げろ! ルリエ、お前もだ!」

「キャンキャン!」

「仕方ないわね!」


 大きく飛び退いて距離を取ったルリエとツヴァイル。

 このままでは倒せる見込みもないので俺も下がって賢者の様子を観察することにした。


「ルリエ、賢者が飲んだのは何なんだ?」

「もしかしたら、最悪の薬かもしれない」

「薬だって?」

「えぇ。魔族、その中でも魔人の血を混ぜて作られた劇薬。体内に取り込めば膨大な魔力を手に入れることができるけど、意識を乗っ取られて自分が自分でいられなくなる代物よ」


 おいおい、誰がそんなものを作ったんだよ。


「――まさか、デビルブラッド、なの?」

「リリル! 体は大丈夫なのか?」


 異変を感じて駆けつけてくれたリリルに、俺は肩を貸して問い掛ける。


「私は休めたから大丈夫よ。それに、休んでもいられなさそうだしね」

「……あれは、いったい何なんだ?」

「それに、デビルブラッドって言っていたわね?」

「……デビルブラッドは、ヴィリエル……いえ、ルリエさんが言っていたように、魔人の血で作られた人族には劇薬となる代物。魔族が摂取すれば即座に魔力を回復させられるんだけど、人族が飲むとその身を魔人に変容させてしまうわ」

「人族が、魔族にだって?」


 おいおい、それをあの賢者は飲んだってことかよ。人族を捨ててまで、ルリエを殺したいってことか!


「高ランクの者が少量を薄めて飲むのであれば耐えられる場合もあると聞いているけど、どれくらい飲んだのかしら?」

「一瓶を、全部飲んでたな」

「……原液?」

「わ、分からないわ」


 ……魔王の娘が口を開けたまま固まっているってことは、魔族でもそんな飲み方はしないってことかもしれない。

 それを人族がやったとなると、確実に魔族に変容するだろうな。


「……これは、本格的にマズいかも」

「だろうな。いくらURとはいえ、原液を大量に飲んだとなれば――」

「だからマズいのよ!」


 な、なんでそこまで焦ってるんだ?


「URの人族が魔族になるってことは、URの魔族が生まれるってこと! そして、それだけ高ランクになるってことは、魔人が生まれるかもしれないのよ!」

「ま、魔人ですって!?」

「でもよ、リリル。魔人だったら魔王城から離れているここなら弱体化するだろ? すぐに倒せば問題ないんじゃないか?」

「違うのよ、スウェイン。私はこうも言ったわ――例外もいるんだって」


 ……あぁ、そうか。

 魔王ですら例外には当てはまらない、その例外の生み出し方が、こんな恐ろしい方法だったなんてな。


「人界でも力を発揮する魔人の生み出し方、それは――人族を魔人に作り変えることなのよ!」


 俺たちが恐ろしい事実をリリルの口から聞いた直後――目の前で新たな魔人が誕生してしまった。

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