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仲間割れ

 おいおい、こんな時にまで気配を消して近づいてきたのかよ!


「どういうことだ! 魔王の娘に、勇者だと? 冗談にも限度があるだろう!」

「あー、いや、その。冗談ではないというか、信じてもらえないかもしれないが――」

「信じられるわけがない! 勇者が死ねば、新たな勇者の職業は赤子に与えられるというのが常識だ! 勇者が死んだのはほんの数ヶ月前……スレイが赤子だとでも言いたいのか?」

「そんなわけないだろう! 俺だって困惑しているんだ。だけど、本当のことなんだよ!」


 この状況では冷静に話し合うこともできず、俺も焦って声を荒らげてしまう。


「ふざけるな! それなら、あいつは偽物の勇者だったとでも言うのか? まあ、その方が民たちからするとよかったかもしれないな。貴族の考え方がこびりついたあいつは、民を虐げる最悪の勇者だったんだからな!」

「話が逸れてるだろう! なあ、ヴィリエル。今だけは、俺のことを信じてくれないか。お前だって、魔獣の群れを見つけたからここに来たんだろう!」

「魔獣の群れなら、そこにいる魔王の娘に引かせてもらえばいいじゃないか。できるんだろう、魔王の娘ならな!」


 ちいっ! 今度は矛先がリリルに向いてしまった。

 それができれば苦労しない。できないからこそ、さっきまで必死になって打開策を考えていたんだからな。


「今の私は魔王の娘ではないわ。ただの魔人に過ぎない」

「魔族であることは否定しないのね」

「だって、元魔王の娘なんだもの」

「なら、私の手で貴様の首を刎ねてやる!」

「落ち着けって! 俺とリリルと殺しても、このままだと魔獣が人界に突っ込んでくる。ヴィリエルだけで、あの魔獣を倒すことができるって言うのか!」


 俺は魔獣の群れを、そしてベヒーモスを指差してヴィリエルに問い掛ける。

 できるなら構わない。この場をヴィリエルに任せて俺は高みの見物としゃれこむが、できないのなら今だけでも手を組むしかないのだ。


「……お前たちなら、できるというのか?」

「作戦はある。だが、ヴィリエルがいてくれればその可能性は高まるな」

「……いいだろう。話だけは聞いてやる。だが、従うかどうかは私が決めるぞ」

「それでいい。いいか、時間が無いから簡潔に説明するぞ」


 そこからはだいぶ早口になりながらも、俺たちが考えた作戦について説明した。

 俺が近づけなければ成功しない作戦なので、護衛は一人よりも二人の方がありがたい。特にリリルは魔法師なので、接近戦に強い剣聖ヴィリエルがいてくれると相当心強いのだ。


「……全く、こんな作戦でよくベヒーモスに向かっていこうと思うわね」

「仕方ないだろう。魔王の娘であるリリルがそう言うんだから」

「信じられないかしら?」

「……いいや、ベヒーモスに関してだけは信じてやる。確かに魔法耐性が施されている魔獣だし、甲羅も傷をつけるとなれば聖剣や魔剣が必要になる」

「それじゃあ――」

「ベヒーモスを討伐する為だ。それが終われば、私はお前たちの敵になる」


 ここまでの道中を一緒に過ごしたヴィリエルの優しい笑みはどこにもなく、鋭い視線が俺に突き刺さる。


「……構わない。ただ、せめて話だけでも聞いてくれたらありがたいけどな」

「知るものか」

「無駄話は終わりよ。先行部隊が突っ込んでくるわ」


 リリルの言葉に俺とヴィリエルは正面を向く。

 あと一分もすれば俺たちは魔獣の群れの波の中に飲み込まれるだろう。

 だが、ここにはそんな波を吹き飛ばしてくれる頼もしい神獣がいるのだ。


「やれるか、ツヴァイル」

「ガウッ!」


 力強く答えてくれた言葉に俺が頭を撫でると、ツヴァイルは前に出て咆哮をあげた。


「アオオオオオオォォン!」


 そして――ブラックウルフを倒した時とは比べ物にならない威力の光り輝くブレスを吐き出した。

 首を右から正面へ、そして左へと向けることでブレスが扇形に放たれていく。

 触れた魔獣が、まるで浄化されていくかのように光の粒子へと姿を変えて消えていく。

 植物すら生えていない見渡す限りの荒野なのだが、この一瞬だけはとても幻想的な輝きを放っている。

 だが、そんな光景も長くは続かず、徐々にブレスの勢いは衰えていく。


「私が遠くの魔獣を削ります。ヴィリエルさんは近くの魔獣を!」

「ちょっと、勝手に仕切らないでよね!」


 先行部隊はこの場から姿を消した。ツヴァイルは役目を完全に果たしてくれたのだ。

 ここからは、俺たちの出番だ。


『ブオオオオオオオオオオオオッ!』


 ベヒーモスの大咆哮が空気を震わせ、地面が揺れて石が弾け飛ぶ。


「さーて、いくか!」


 そして、俺たちはベヒーモスに向けて真っすぐに走り出した。

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