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さらにジーっと見られています

 この辺りには通常いないはずの中型魔獣。

 もっと境よりの森の中を縄張りにしているはずなのだが、どうして街道に近い場所までやって来たのか。


「スレイ、頼んだよ!」

「よろしく、スレイ」

「ガウガウッ!」


 そして、全員から激励の声を向けられたことから、俺が討伐するしかないようだ。

 俺の身長よりも頭一個分高く、さらに倍以上の逞しい肉体。鋭い爪が鈍く光り、真っ赤の瞳が真っすぐに俺を見据える。


「キングベア!」

『グルオオオオアアアアアアアアッ!』


 咆哮を発しながら強靭な四肢で地面を踏みしめて突進を仕掛けてくるキングベア。

 常人であればその威圧感に足が竦み、そのまま全身の骨を砕かれて喰われてしまうだろう。

 だが、勇者になったことで恐怖耐性を習得している今の俺にとっては関係のないことだった。

 薄い赤色を帯びたレッドスターが光を反射させ、さらに美しく輝く。

 このまま見惚れていたい気もするが、まずは目の前の貴重な食料――ではなく、魔獣への対処が必要だ。


「……すごいな。これも剣術スキルの効果なのか」


 木刀を握っていた時よりも、剣を振る方法や手順がより明確にイメージできてしまう。

 ……これなら、負ける気が一切しないな。


『グルアアアアッ!』

「はあっ!」


 間合いに入る直前に飛び上がったキングベアが両腕を広げる。それだけでもものすごい迫力なのだが、口から涎を垂れ流している姿を見ると嫌悪感を抱いてしまう。

 俺は斬り上げからキングベアの左腕を、そして袈裟斬りを放ち右腕を両断する。

 魔獣特有のドス黒い血が溢れ出すのを横目で捉えながら、振り向きざまに後ろからその首を刎ねた。

 今の攻防で三度、レッドスターを振り抜いてキングベアを絶命させた。


「……ふぅ」

「以前よりも鋭くなっていたわね」

「あぁ。どうやら、手にする武器によって剣術スキルの効果も上下するようだ」

「ガウガウッ!」

「あはは、ツヴァイルもありがとなー」


 レッドスターを鞘に納めてツヴァイルを撫で回す。


「……驚いちゃった」


 あっ、そうだった。ヴィリエルの存在をすっかり忘れてたよ。


「URの剣聖様にはどのように見えたんですかね?」

「もう、その言われ方は嫌いよ。URだから、剣聖だからって、特別偉いわけじゃないんだからね」


 ……うーん、何やら触れてはいけない部分に触れてしまったようだ。


「……冗談はさておき、俺の剣術はどうでしたか?」

「はっきり言って、完璧ね。剣聖である私でも勝てるかどうか分からないわ」

「それはさすがに言い過ぎでしょう」


 どれだけ技術を磨こうとも、職業ランクの差を埋めることは難しい。

 SRとURでは一つしかランクは違わないが、その間には努力では埋められない壁が立ちはだかっている。

 一年、一〇年、一〇〇年努力しようとも、ランク差というものは埋められないのだ。

 ……まあ、実際の俺はXRの勇者なので、多少手を抜こうともそのような感想を口にされるのも頷ける。

 しかし、そこで俺がヴィリエルの発言を認めてしまえばさらに疑問を持たれることになるので口にしないが。


「でも、魔法は使わなかったのね」

「レッドスターの試し切りをしたいと思っていたんでな」

「綺麗な剣ねぇ……えっと……これってもしかして、フレイムホースの素材、かしら?」

「そうだが?」


 ……あっ!

 そうだ、シルクさんも言ってたじゃないか。フレイムホースの素材はなかなかお目に掛れないって。


「そんな素材をもってボートピアズに来たってことは、やっぱりスレイはすごいのね」

「すごい、のかな。たまたま手に入った素材だったから、気にしてなかったよ」

「フレイムホースの素材がたまたま手に入ることがすごいことなのよ」

「そうなのか……まあ、運が良かったな」


 たまたま、運が良かった、それで納得してくれるとは思わないが、そう言っておくしかできない。

 説明を求められても、面倒なだけだ。


「ふーん……そっか」

「さっさと進まないか? 時間が惜しい」

「そうね。二人の実力も見れたし、ツヴァイルも強いし、これなら境の調査も問題なさそうだわー!」


 大きく伸びをしながら歩き出したヴィリエルの背中を見つめながら、俺の頭の中には疑問が浮かんでは消えていくのだった。

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