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冒険者に絡まれました

 俺がどう対処しようか考えていると、丸坊主は無視されていると勘違いしたのか、テーブルに拳を叩きつけてきた。

 その衝撃で食べかけの料理が床に落ちてしまい、お皿まで割れてしまった。


「てめえっ! 俺様を無視するとはいい度胸じゃねえか!」

「いや、無視をしていたわけじゃあ――」

「俺様はなあっ! Bランク冒険者のスキッド様だぞこらあっ!」

「あの、あなたの迫力に押されて言葉が出なかっただけで――」

「てめえみてえな軟弱な野郎にこんな上玉はもったいねえ、俺様が代わりに遊んでやるからこっちに来いよ!」


 スキッドの腕がリリルに伸びる。

 その光景を目の当たりにした俺の体は自然と動いていた。

 スキッドの腕を掴むと関節を決めて床に叩き伏せる。

 まるで何度も同じ動きをしてきたかのように、流れるような動きで俺はスキッドを抑え込んでしまった。


「ぐがあっ!? て、てめえ、放しやがれ!」

「彼女は俺の連れだ。手を出そうとしたのはそっちが先だろう」

「ふ、ふざけやが――いででででっ!? わ、分かった、引く、引くから、放してくれ!」


 俺はその言葉を信じていいのか迷ったものの、また何かをしてこようものなら容赦しなければいいだけかと思い手を放した。


「……てめえっ! ぶっ殺してやる!」


 案の定、スキッドは解放してすぐに腰に差していた剣を抜いてしまった。


「あんた! 何を騒いでるんだい!」

「こいつが俺を侮辱しやがったんだ、ぶっ殺してやる!」


 女主人の怒号が響くものの、スキッドは頭に血が上っているのか、酔っぱらっているのか、はたまたその両方なのか分からないが、全く引こうとはしない。

 周囲の冒険者も止める気配はなく、むしろニヤニヤと笑いながらこの状況を楽しんでいるかのようだ。

 俺としては穏便に済ませたかったのだが、これ以上騒がれて女主人に迷惑を掛けてしまうのは申し訳ないのでリリルに声を掛けて部屋に戻ることにした。


「リリル、戻ろう」

「そうね」

「ガウ」

「……てめえも、女も、舐めやがって!」


 しかし、俺の行動はまたしても裏目に出てしまったようだ。

 いなくなれば落ち着くだろうと思ったのだが、どうやら舐められたと勘違いしたらしい。

 スキッドが剣を振り上げたのを見た俺は――またしても体が自然に動いていた。

 一歩踏み出すだけでスキッドの懐の中に潜り込むと、そのまま肘をみぞおちにめり込ませる。


「げばあっ!?」


 反撃がくることなど想像していなかったのか、体をくの字に曲げたスキッドはゆっくりと膝から崩れ落ちていき、最後には顔面を床に付けて気を失ってしまった。


「ひゅー」

「Bランク、ざんねーん」

「酒がマズくなっちまうぜ」


 そんな声が周囲から聞こえてきたが、俺はそれらを意図的に無視してリリルの手を取り、女主人のところへ向かう。


「すみませんでした。騒ぎを起こすつもりはなかったんですが」

「いいのよ。冒険者同士の喧嘩なんて日常茶飯事だしね」

「ですが、お皿も割れちゃいましたし、他にも壊れたりしたかも」

「いいのよ。そこはあいつに支払ってもらうし、渋るようだったら冒険者ギルドにチクってやるからさ!」


 ここでも豪快に笑いながら俺の背中を叩いてきたので、俺は痛い背中をさすりながら二階へと移動した。

 その途中、リリルの手を握ったままだったことに気づいて慌てて離そうとしたのだが、何故だか強く握り返されてしまう。


「……あの、リリル? どうしたんだ?」

「うふふ。守ってくれてありがとね、スウェイン」

「いや、俺が守らなくてもリリルなら大丈夫だっただろ。魔王の娘なんだし」


 俺が事実を告げると、リリルは頬を膨らませて顔を近づけてきた。


「もう! そんなことを言ってたら、女の子にモテないわよ!」

「いや、モテるとか、モテないとか、今はそんな話をしてないだろう」

「ちょっと、目を逸らさないの!」


 いや、目をというか、顔を逸らせてます。だって、めっちゃ近いんだもんよ!


「こっちを見なさーい! こーら、スウェイーン!」

「絶対に嫌だ」

「スーウェーイーン!」

「顔が、近いんだって、ば!」


 いをけっしてグインと勢いよく振り返ると、鼻と鼻がくっついてしまうんじゃないかというくらいの距離で目が合ってしまう。


「「――!!」」


 しばらく無言のまま見つめ合う俺とリリル。

 この状態が続くと、さすがの俺も理性が……理性が……理性が!


「ガウガウッ!」

「「はっ!?」」


 た、助かったぞ、ツヴァイル!

 俺は即座に顔を離して壁際まで後退る。

 リリルも同じように逆の壁際まで移動しているのだが、その顔は朱に染まっている。おそらく、俺も同じだろうけど。


「……と、とりあえず、今日はもう休もうか!」

「そ、そうね! それがいいわ、お休みなさい!」


 リリルはそう口にするとあっという間に部屋へと戻っていってしまった。


「……はぁ。ツヴァイル、俺と一緒に寝るか」

「ガウッ!」


 俺は一つ息を吐き出すと、ツヴァイルと一緒に部屋へ戻るとそのままベッドに横になった。

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