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エピローグ

 ――グラインザ様がブレイレッジにやって来てから一ヶ月が経った。

 なんかもう、この人もブレイレッジの住民になってしまったようだ。

 俺は別に許可した覚えはないのだが勝手に家の隣に家を建ててしまい、そのまま生活を始めてしまった。

 最悪、それだけならいいのだが時折食糧を求めて顔を出すから迷惑極まりない。

 ……まあ、それで食糧を渡している俺も俺だが。だって、後が怖いんだもの。


「ふわああああぁぁ……朝か」


 家の中はとても静かなものだ。

 リリルとルリエも外に出ており、ツヴァイルとフミも遊びに行っている。

 グラインザ様も顔を見せに来ないし、リーレインさんも同じだ。

 戻ってきてからしばらくは住民からも声を掛けられて色々と働いていたから、こんな朝は久しぶりな気がする。


「……飯、作るか」


 ベッドから出ると頭を掻きながら台所に移動し、食材を確認しながら朝食を考える。

 簡単にパンと卵焼き、それに作り置きのウインナーを軽く焼くくらいでいいか。

 手際よく朝食を仕上げると、黙々と食べてお腹いっぱいにすると食器を片付けて外に出た。


「……うん、のどかな村だなぁ」


 森の奥に造った村という事で、木々の香りが心をリラックスさせてくれる。

 子供たちの声も心の平穏に一役買っており、俺はとても穏やかな日々を過ごしている。


 ――ドゴオオオオオオオオォォン。


 ……ま、まあ、たまにはそんな音もするだろう。ここは空虚地帯の近くなわけだし、仕方ないよね。


 ――ドゴグラゴオオオオオオオオォォン。


 …………あ、あまり聞かない音がしたけど、それもまあ、この辺りでは普通の事で――


 ――グルギギギャアアアアアアアアッ!!


「………………うるせえなあっ! こんちくしょうがあっ!」


 いったい何が起きてんだよ! なんだよ今の鳴き声はよぅ!

 イラつきながら声のした方へ駆け出すと、そこは魔界の方向ではなかった。

 魔獣が迫っていれば俺の気配察知に反応するはずだが、そんな気配は一切なかった。

 気配察知に反応しない何かが人界に入ってきたのか、そんな事を考えていたのだが……だが……え、ええぇぇぇぇ?


「がははははっ! まだまだであるな、お主ら!」

「くっ! そっちからお願い、リリル!」

「分かったわ、ルリエ!」

「ガウアアアアッ!」

「フミャーン!」


 ……これ、模擬戦か? マジで面倒くさいんだけど。

 だったらさっき聞いた謎の鳴き声はいったい何だったんだ?


「行くがよい、我が眷族よ!」

「グルギギギャアアアアアアアアッ!」


 てめぇかよ、おい!

 その後、クルルたちは模擬戦を続けていたのだがグラインザ様と眷族に圧倒されて敗北を喫していた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……魔王、恐るべし!」

「がははははっ! それはそうじゃ、何せ魔王なのだからな!」

「お父様! 少しは手加減をしてください!」

「クゥゥゥゥン」

「フミャ~」

「……お前ら、こんな朝っぱらから何をしてるんだ?」


 誰も俺に気づいていなかったのか、声を掛けると驚いたようにこちらを振り返った。


「「「もう昼だけど!?」」」

「ガウガウッ!」

「フミャー!」

「…………え?」


 ……あー、うん。確かに太陽がてっぺんにいるわ。


「……いやいや! それよりも、なんでこんなところで模擬戦をしてるんだよ! ここは人界だぞ!」

「魔界でもやったし、今度は人界かなって……ねぇ?」

「うんうん」

「どちらも平等にやらねばな」

「そういう意味で言ってんじゃねぇよ!」


 そもそも、模擬戦なんてしなくてもお前ら強いだろうが! 魔王に勝てたら戦争なんてもう終わってるっての!


「これからは毎日のようにやるからね!」

「スウェインも早起きしてやりましょうよ!」

「うむ! 我も勇者とやってみたいものだ! というわけで、起きろ!」

「いや、無理やり過ぎだろうが! 俺の意思を尊重しろ!」

「「「諦めろ!」」」


 声を揃えてるんじゃねえよ!


「言っておくけどなあ、俺はここでスローライフを送るために家を建てたの! 村を運営するとか模擬戦をするとか、俺の未来予想図には全く入ってないんだよ!」

「うるさいぞ! いいから模擬戦をやればいいのだ!」

「そうよ! それに、ダラダラ過ごすスローライフよりも、体を動かすスローライフの方がいいに決まっているわ!」

「うんうん!」

「過度な運動はスローライフじゃねぇからな!」


 俺が何を言ってもこいつらは聞こうとはしない。

 ……はぁ。なんかもう、どうでもよくなってきたぞ。

 俺自身のために家を建てたけど、結局はみんながどう楽しく暮らせるかを考えていた俺もいるわけだしなぁ。


「……俺のできる範囲でだからな!」

「そうこなくっちゃね!」

「さすがはスウェイン! 私が選んだだけの事はあるわ!」

「え、選んだだと! 貴様、我が愛しの娘に何をしたのだ!」

「ガウガウーン!」

「フミャーン!」


 これはもう、俺の性格なんだろうなぁ。

 このまま手の届く範囲で守りながら、みんなの生活をより良くしていこうかな。

 それが巡り巡って、俺の求めるスローライフに近づくのかもしれないしな。


 終わり

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