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助けた相手が魔王の娘でしたよ

 何も聞かなかったらそのまま終われただろうに、なんで事情を言ってしまうかなぁ。


「お、お願いします! 貴殿ほどの腕の持ち主であれば、魔王を助けられるはずだ!」

「お願いも何も、俺はどこからどう見ても立派な人族ですよ? そんな人族が魔族を、それも魔王を助けるだなんてあり得ませんよね?」

「そこを何とか! もう、今となっては、魔族にも頼れないよ……」


 ……ぐぬぬっ、そんなシュンとされても困るんだよ!

 それに、こんな美人さんが落ち込む姿を見せられると、男としては放っておけなくなるじゃないか!


「……は、話だけでも聞かせてもらえませんか?」

「あ、ありがとう!」

「でも! まだ助けると決めたわけじゃないですからね! あくまでも、話を聞くだけですからね!」


 そこに関してだけははっきりと言い含めてから、俺はリリルの話に耳を傾けた。


「魔王、お父様は人族との争いを嫌っていたんです」

「嫌っていた? 魔王なのにか?」

「えぇ。長年続く魔族と人族の争いに嫌気がさして、どうにか和平を結べないかを考えていたの」


 リリルの話は驚きの連続だった。

 魔王が和平を望んでいたなんて聞いたこともないが、信用できる魔人には漏らしていたらしい。


「だけど、そんな時にどこかからお父様の話が魔皇将軍に漏れてしまって、ちょっとした口論になったのよ」

「えっと、その魔皇将軍ってのは?」

「魔皇将軍は、魔王の次に地位が高く、魔王を一番傍から支える魔人の中の重鎮なの」

「そんな重鎮との口論ってことは、魔王は魔皇将軍を信用していなかったのか?」

「……うん。魔皇将軍は魔族のことしか考えていないの。最も長く生きている者が就く地位だし、言ってみたら老害なのよ」


 リリルって、意外と口が悪いのかな。


「それで、その老害……じゃなくて、魔皇将軍との口論がヒートアップして深手を負わされたってことか?」


 俺の問い掛けにリリルは無言で頷いた。

 そして、その後もリリルは現在の魔界の状況についても教えてくれた。

 魔王は突然の病に侵されてしまい病床に臥せっていると魔人には伝えられ、代行として魔皇将軍が指揮を執っている。


「実際のところ、お父様は殺される寸前に他の魔人に助けられて魔王城を脱したのだけど、深手を負ったせいで今は動けないの」

「魔王は魔皇将軍に殺されかけて、勇者は女に殺されて、何だか人界も魔界もめちゃくちゃだな」

「その勇者が殺されたという情報も魔界には入ってきているわ。どうやら、勇者を殺したのは仲間だった英雄みたいよ?」

「はあっ!? おいおい、それじゃあ魔王も勇者も仲間に襲われたってことかよ」


 これは本格的にどちらにも肩入れしたくなくなってきたな。

 俺は俺の平穏なスローライフを守れればそれでいいのだ。


「でも、魔皇将軍は魔王の座を奪い取っただけでは飽き足らず、その子供たちにまで刺客を送ってきたのよ」

「その刺客から逃げてきた先が、人界のここの森だったってことか。でも、魔王の娘なら魔獣くらいに負けるとは思えないんだけど。毒にもやられていたみたいだし」


 魔王の娘ということは、魔獣の上に君臨する魔人のはず。

 確か魔族というのは簡単に言うと魔王を筆頭に魔人、そして魔獣という形で成り立っている。細かな区分は魔皇将軍がいたようにあるだろうけど、おおむねこの内容で間違いはないはずだ。


「魔人というのは、魔界の中心である魔王城から離れれば離れる程にその力を衰弱させてしまうものなの」

「そうなのか?」

「例外はいるようだけど、私もお父様も、確か魔皇将軍も変わらないはずよ。そのせいで私は魔獣に殺されそうになっていたの。今までの魔王が魔界の領土を広げようとしていたのも、そういう理由があるのよ」


 領土が広がれば魔王の力が及ぶ範囲も広がるってことか。

 それにしても、魔族というのは魔王を筆頭に一枚岩になっていると思っていたがそうではなかったのか。

 ……いや、今の魔王が和平を考えなければこうはならなかったのかもしれない。

 平和主義の魔王か……気になるけど、魔族にとっての職業ランクってどうなんだろう。


「なあ、リリル。魔族にも職業ランクってのはあるのか?」

「あるわよ。私はURの宵闇の魔法師」

「……ってことは、Nは奴隷に似た扱いを受けるってことか?」


 この質問に対する答え如何によって、俺はリリルを助けるかどうかを決めることにした。

 最初は魔王を助けるなんて俺には無理だと考えていたが、もし本当に平和主義の魔王がいて、さらに魔界がNを虐げないような場所であるなら、俺は人界よりも魔界を選ぶだろう。


「N? ……ごめんなさい、人族にはNという職業ランクがあるのは知っているけど、魔族にはRからXRまでの四つのランクしかないのよ」

「……そ、そうなのか? それじゃあ、一番下のRの扱いはどうなってるんだ?」

「Rも普通に生活しているわ。職業ランクが低いからって、奴隷みたいに扱うわけないじゃないの」


 ……この答えを、俺はどう捉えるべきだろうか。

 職業ランクが低くても奴隷ではなく一人の魔族として見てくれているが、それはランクがRだからだ。

 もし、そんな中にNが生まれでもしたらどうなるだろうか。やはり、人族と同じように奴隷のような扱いになってしまうのだろうか。

 ……分からない。どれだけ考えようと、すぐに答えは出てこないだろう。


「……うん、これは、いったん保留だな」

「……へっ?」

「俺がリリルを助けるかどうか、今の話だけでは決めかねるってことだ。それに、俺もリリルには話していないことがあるんだ」

「それは当然よ。私はお願いしている立場で、あなたは……そう言えば、私もあなたの名前を聞いていなかったわ」


 あー、そういえばそうだったな。

 さて、そういうことなら名乗るとしようじゃないか。俺だって驚かされたんだから、俺がリリルを驚かせても罰は当たらないだろう。


「ゴホン! ……えー、俺の名前はスウェイン。職業ランクはNで荷物持ちだった」

「……Nって、その実力で? でも、荷物持ちだった、というのはどういうこと?」

「あー、俺もよく分からないんだけど、昨日の時点で職業ランクと職業が変わったんだ」

「……えっ?」


 うんうん、驚くよな、意味わからないよな。でも、もっと驚くことになるぞ。


「今の俺は職業ランクXR、職業はなんと……勇者だ」

「…………ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 ふふふふ、素晴らしい反応ですな!!

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