君の名は。
「君の名は…」
「は??」
「君の名は!!」
「???」
唐突なヒット作品名変更にキョトンとする山田と牛もといミノタウルス。」
「君の名は今日からポルコだ。」
「…え?ワシの名前!?何でいきなりワシの名前決めたの??」
間抜けズラでこちらに問い掛けてくる牛。
「いやだっていつまでも牛とか駄牛とかミノタウルスとか呼びにくいだろ?だからお前は今日からポルコ。」
牛の顔がみるみる青ざめる。
「いやいやいや、駄目であろう!?何がダメかって言うと無数にダメな所が有り過ぎて何処からダメだしして良いか分からぬが…」
ここで一呼吸して息を整える牛さん。
「まず人の名前勝手に決めるのはダメじゃろ!?」
「え?何で?」
「何で?ってだって我ら赤の他人じゃよ?おかしくない?いきなり会って間も無いほぼ接点皆無の他人が名前決めちゃうのおかしくない?」
「いやーもう内臓まで確かめた仲だし良いかなーって。」
「まあ確かに駄牛の自害で私たち中身みちゃってるでヤンスからね。もはや他人では無いでヤンスね」
「いやいやヤーマダまで何言っておるの?」
「ヤーマダって伸ばすな駄牛!イワキか!!」
「グヌヌッ!もはや上司の威厳ゼロなワシ!」
「まあまあ、駄牛もリフティングボールもさして変わらないから気にすんなよポルコ。」
「うわあ酷いでヤンス今鹿風谷!!」
「お前も大概酷いよ山田。」
「と言うか名前有るから!ワシの名前ミノタウルスだから!!」
…え?うそだろ?!
「…あのなポルコ君。ソレ、種族名ダヨ?」
「え??」
「犬に「犬」って名前付けるようなもんだよ?」
「猫に「猫」って名前つけるようなもんでヤンスね」
「いや山田、言ってる事ほぼ変わらないからなそれ。」
「山田は猫派でヤンス!犬とかデカいし怖いから無理でヤンス!」
「いや知らんがな!てか犬とか猫とかいるのか異世界エスブリッジ…。」
などと山田とじゃれていると駄牛がテンパりながらも恐る恐る声を掛けてきた。
「…ぇっと…ミノタウルスって種族名??なの??」
「だからそう言ってるだろ?」
「いやでもこんな形の魔物見た事ないんだけど?」
「まあお前見た目はタダの牛だからな。そりゃそうだろ。オーソドックスなミノタウルスは頭と足の蹄と尻尾が牛で身体は人間だ。内臓が人間で外側牛のハーフなんて見た事ない。」
「ぶっちゃけ魔物と言うより家畜が正しいでやんすよね?喋るけど。」
「喋らなきゃタダの家畜の牛だな確かに。」
「う…う…うわーん!」
あ、泣いた。
「勘違いしてたワシ恥ずかしい!」
そっちかよ。
「じゃ、じゃあ名前は付けてもらうとして」
ああ付けていいんだww
「ポルコはまずいじゃろ?それアレじゃろ?牛じゃなくて豚じゃろ?ワシ飛べないぞい?」
「何の話でヤンス?」
山田が首を傾げる。
「さすがにいろんな場所から怒られるんじゃないかの?」
た、確かにまずい。
「んじゃあミノタウルスだしミノさんは?」
「ダメじゃろ!それもダメじゃろ!?県民ショウに怒られてしまうじゃろ!?」
あ、ダメか。
「んじゃあポルポルは?」
「第3部!!第3部のトサカじゃろそれ!?」
「第5部だと亀だけどな。まあダメか。」
「さっきら注文の多い牛でヤンスね!もうお前は牛ポル!ウシポルで良いでヤンスよ!ハイ決定!!」
「え!?決定なの!?」
「異論は認めないでヤンス!!」
半ば強引に決められた。
山田もはやウシポルの事完全に下にみてて草生えるわ。
ところで…そう、気がついたのだが…。
「なあウシポル。お前もしかしてもしかすると…元今鹿風谷…俺か?」
異世界の住人にしては俺がいた世界の情報を知りすぎている。
主に紅のアレとかミノさんとかオラオラですかとかな。
「…まあぶっちゃけそうじゃな。と、言っても今のお前さんの時代の事はわからんぞ?ワシがエスブリッジに英雄召喚されたのは幼少の頃じゃからな。もう50年も昔の話じゃ。」
「…やっぱりそうか。」
遥か昔、子供の頃の俺【今鹿風谷】から切り剥がされて召喚された破片。
まあ今となっては俺も元の世界にいた俺の破片でしか無いのだが。
複雑な心境でウシポルを見つめていると、向こうも見つめ返してきた。
「ワシ、もう十数年召喚されるのが遅かったらそんな感じに育ったんじゃね。複雑な気分。」
「俺、もう十数年召喚されるのが早かったら牛になってたのね。恐怖。」
しみじみ見つめ合う二人…いやさ、一人と一頭であった。