牛丼って店によって味全然違うよね
今鹿風谷は幼少期、牛に憧れを抱いていた。
いや、正確に言うと牛ではなく…某アニメに出てくる牡牛座のアレに憧れを抱いていた。
後にして思えばヤムチャポジションに収まるキャラクターなのだが、登場したての頃はそれはそれは強く描かれ主人公を圧倒的な力で捩じ伏せていたのだ。
声もまるでアーノルドシュワルツネッガーの様にカッコよくて一発で大好きになった。
しかも、今鹿風谷は4月24日生まれの牡牛座。
その事からも、当時の風谷はその牡牛座のアレなキャラクターに運命的な何かを感じていたのだ。
まあ後に、苗字の漢字「鹿」にフォルムが似ている…全然違うけど…本人的には似ているので、エクスカリバーな「羊」の人に鞍替えするのだが、、、それはもう少し先の話である。
と言うかそこに至る事はない。
何故ならば、その前の時間軸において今鹿風谷は謎の振動音に包まれ、異世界エスブリッジに転移してしまったのだから。
転移前に寄った異空間で転移神を名乗る女から大笑いされながら
「貴方は牛よ!理想の力で牛になりなさい!」
と指を刺された事は何となく今でも覚えている。
スゲ〜爆笑してたなー。
目が覚めると謎の魔法陣の中で風谷は蹲っていた。
「ここは…どこだ?さっきまで河原でコスモを燃やす練習をしていたはずなのに?」
風谷は少しイタイ子供だった。
ちなみに痛さのピークは中学2年辺りなのだが、この風谷がそこに至る事は無い。
「と、とにかく現状確認しなくっちゃだよな。」
身体を動かし立ち上がろうとすると…
ドスーーン!!
バランスを崩して倒れてしまった。
「アレ?」
その時、風谷は自分の身体の異変に気が付いた。
二足歩行できない。
…てゆうか、足が…自分の知っている色形では無い。
いや足だけでは無い。
手も…だ。
手足が全くの異形に変化してしまっている。
「ど、どうなっているんだコレ!?」
どうやら声はまともに出るらしい。
しかし、自分が異常な状態になっている事は子供心にも理解出来た。
「ぜ、全身…全身はどうなってしまっているんだろう!?」
風谷が辺りを見回すとまるでご都合主義な作品のように直ぐ近くに大鏡が設置されているでは無いか!
ナンテコッタ。
風谷は慣れない四足歩行でヨロヨロと大鏡に向かった。
ドキドキしながら鏡の中に写った自分を確認する風谷。
そこに写って居たのは…完全に全身が牛になっていた自分の姿だった。
「か…」
風谷は驚きと衝撃で思わず叫んだ。
「カッコイイっ!!スゲ〜!牛じゃん!!完全に牛じゃん!!パワーファイターじゃん!!やったー!!グレートホーン!!!」
繰り返すが、今鹿風谷はイタイ子供だった。
こうして、今鹿風谷少年は牛…もとい、ミノタウルスとして異世界エスブリッジで第二の人生を送る事になったのだ。
ちなみにミノタウルス(臓器だけ人間、外側牛のハーフ)である事に気が付いたのは女大魔導士とのエロエロバトルで透視魔法合戦に敗れた時の事で有るが、それはまた別の話である。
まあとにもかくにも、ミノタウルス風谷はこの後 牛の外見のせいで人々に迫害を受けたり、ボコボコにされたところを魔王軍に拾われてモンスターとして飼われたり、その魔王軍主催の天下一武道会で優勝して四天王になったり、他の魔王軍四天王の女幹部と恋に堕ちたり、振られたり、依を戻したり、また振られたり、、、とまあ色々あり…
50年たった現在は魔王軍が異世界から戦力を増強する為に異世界召喚をする施設の管理人…と言う立場に落ち着いているのだ。
あ、違うか。
落ち着いていたのだ…過去形が正解。
前回、ノリと勢いで自らの身体を真っ二つにして絶命しちゃったから。
あーあ。