牛タウルス
キキーイ!バターーン!!
と言う壮大な音を豪快に立てながら尊大な佇まいで入室してきたのは…にゅ、入室してきたのはまさかの…牛だった。
「…は?…え??」
思わず俺も惚けた顔をする。
「…は?…え??」
牛も全く同じリアクションをした。
「え?うそ?牛?牛じゃん!?何で牛??」
疑問をぶつける俺。
そりゃあそうだろう?
ピエロ女の「上司」らしき人物…じん…ぶつ??…牛物…が、牛だったんだから。
「え?うそ?何やってんのお前ら??リフティング??何でリフティング??」
こちらの疑問に応えることもなく牛は牛で疑問を全力でぶつけてくる。
まあそうだよね。
自分の部下を知らない男がリフティングしているんだからそりゃそうなるよね。
俺だって何でこうなってるのか理解できていないんだからこの牛の理解が及ぶはずもない。
「えっとでヤンスね…まず1つ1つ説明させて欲しいんでヤンスけど…」
俺の膝でリフティングされながらピエロ女が言い訳を始めようとする。
「な、なんだ山田!説明しろ!」
「え?お前、名前山田なの?何で?こんなファンタジーな世界観なのに…ヤマダ??何で??」
「何で何でってうるさいてヤンスねどいつもこいつも!!」
「うわっ?山田がキレた!」
「えーー!?ワシ上司なのに部下にキレられたよ?」
「キーキーキーキーうるせーんでヤンスよこの牛が!!」
「酷くない?」
「そうだぞ山田、牛の人は上司なんだからもう少し敬えよ?」
「あんたもうるさいんでヤンスよ!あとリフティングいい加減やめろ!空気読め!!」
あーはいはい。
俺は仕方が無いので山田を下ろしてやることにした。
チョン。
「あー!!また!!またお尻をかすめた!!エロ!!エロガッパ!!今鹿風谷のエロリスト!!」
「おいヤメロ人聞きの悪い!!最後だしチョコッと感触を楽しんだだけじゃないか。」
「やっぱりワザと触ってる!!最悪っすよ!!」
「え!?し、尻!?今尻の話してる!?」
「牛うるさい!興奮するな!闘牛士に売り渡すぞ!」
「は?してませんー!部下の尻に興奮なんてしてませんー!今のはアレですー!えっと…Siri。そうSiriの話してたんですー!iPhoneユーザーだから!!」
「何で異世界にiPhoneが有るんだよ!!さっきの高見沢と言い、お前牛のくせに何なんだよ?」
「牛じゃねーわ!!ワシはミノタウルス!!ミノタウルスじゃ!!」
ミノタウルス…何か聞いた事あるな。
確か神話に出てくる半身が牛で半身が人間の魔物だった気がするんだが…
「お前、全身牛じゃあねーかよ!!人の部分残って無いのにミノタウルスとか片腹痛いわ!!」
「確かに。」
山田も同意する。
「おーい山田テメェ!何でそいつの味方してんだよ!もしかしてアレか!?その…尻をアレされてソイツの言いなりに??」
「ウオォーイセクハラ上司!何言ってるんでヤンスか!!」
「うわっ、鼻息めっちゃ荒いじゃん。こいつは間違いなく変態セクハラ上司ですわー。キモっ。」
「こらこらこらマテマテマテ!うそじゃろ!?ワシが吊し上げられるパターン!?変態行為をしていたのはお前ら2人じゃろーが!!」
「変態行為って言うなでヤンス!!ワタシは今鹿風谷にリフティングされていただけでヤンスよ!!」
「?」
「そして俺は山田をリフティングしていただけだ!!」
「?」
意味がわからないといった表情の牛。
まあね。
確かにね。
「い、いいからお前も説明しろよ!何で牛が喋っててしかも山田の上司なんだよ!」
「牛では無い!!ちゃーんと臓器は人間、外側は牛のハーフアンドハーフだからミノタウルスじゃ!!」
「そんなハーフアンドハーフ有るか!!」
「目の前に有るじゃろがい!!」
「臓器なんか見えないからわからないわ!!」
「んじゃあ証拠見せたるわい!!目ぇかっぽじってよく見とけよこの野郎!!」
そう言うや否や、牛の周りに何やら魔力的な力が集まり始める。
「グリフィンハリケーン!!!」
ザシュザシャザシュ!!
牛が叫ぶと強大な風の魔力が発動し、牛自身の身体を真っ二つにした。
…え?何やってんのこの牛??
「ど、どうじゃ?な、中身の臓器…人間…じゃろ??」
イヤイヤイヤ!
グロ過ぎて見れねーわ!!
アホか!?
アホなのか!?
「グッドラック!」
何故か牛は満足そうな表情でそう呟き…絶命した。
…絶命しちゃったよ。
何だったんだってばよ。