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リフティング

バイーン。


バイーン。


バイーン。


ボヨヨーン。


「あのーー。人をリフティングするのやめてもらえません??」


「あ、いやあ。何かこうしていると落ち着くって言うか…穏やかな気持ちになるっていうか…。」


「いやいやいや、何言ってるんですかアンタ!こっちは蹴られまくって目が回って気持ち悪いやら、何か変なところが変に曲がって痛いやらで大変なんですヤンスよ?」


今どういう状況なのか…会話の文字面だけでは解りづらいと思うので一応説明すると、ピエロ野郎と奴の乗っていた玉を俺がお手玉の様に足をつかってリフティングしているのだ。


もちろんあらゆるスポーツやら格闘技やらで世界最強の男を目指していた俺といえども、さすがに人でリフティングは出来無い。

出来なかった…転移前の世界では。


転移してから身体に異常に力が漲っているのだ。

と言うか身体そのものがDNAレベルで遥か高位の物質に組み変わっている様な感覚だ。


「アアッ!な、何か一周回って気持ち良くなってきたでヤンス。蹴り続けられているのに何故故??ま、まさかドMが開花しちゃったでヤンスか!?」


「んなわけあるか。だいたいこっちは痛くない様にソフトタッチで蹴ってるんだ。しかも健康になれるツボをな。この身体で俺が本気でお前を蹴ったら多分お前ミンチになるぞ?」


「み、ミンチって!?や、やめてくれでやんす!!降ろすでヤンスーーー!!!」


「あーはいはい。」


ミンチがよっぽど怖かったのかピエロ野郎が暴れ出したのでそろそろリフティングは辞めておろしてやる事にした。


と、その前に。


バシューン!


俺はピエロ野郎の顔面に装着された不気味な仮面に回し蹴りを入れた。


「ぎゃあ!!」


ぎゃあとは言って居るが痛くはないはずだ。

仮面だけを破壊して顔には一切のダメージが行か無い様に力を調整してある。


リフティングを通して力を試した事で、この身体はそういう細やかな事もできると理解できた。


パリーーン!


狙い通りピエロ野郎の仮面が粉々に砕け散った。

さて、どんな生簀かない(ツラ)が飛び出してくるやら。


「や…やだぁ。」


砕けた仮面のカケラの噴霧が晴れ、そこから現れたのは…予想外の顔だった。


「何するんでヤンスか!ワタシは恥ずかしがり屋さんなんでヤンス!人前で素顔を晒すなんて…こっぱずかし過ぎて顔から火がでるでヤンスよ!」


「おいおいマジか?」


「な、何でヤンスか?人の顔をジロジロ見て…。」


「お前…女の子かよ?」


「なっ!?い、今まで何だと思ってたんでやんすかー!?どこからどう見ても女でやんしょ??」


「いやいやいや、ダボダボのピエロ服のせいで体型は判りづらいし、仮面のせいで声は篭ってて聞こえづらいし、そもそもピエロのキャラが強すぎて性別とか意識出来なかったから。」


「うーん、何だか釈然とし無いでヤンス。」


納得いかないといった表情のピエロ野郎…じゃないや。


ピエロ女か。


…ピエロ女を見ていて、俺はある感情に襲われた。

そして…。


「ヨイショ!」


「へ???な、何でヤンスか!?何故ワタシを持ち上げ…」


「そーれ。」


ポイっ。


「ぎゃひいっ!」


俺は徐にピエロ女を空中に投げた。


バイーン。


バイーン。


バイーン。


ボヨヨーン。


そしてまた人間リフティングを始めのだった。


「おいいいいいいいっ!!何でこうなったでヤンスかあああああっ!!」


「いやあ、女の子をリフティングしたらよりいっそう落ち着くかなぁ、穏やかな気持ちになれるかなぁ、って思ってな。」


「変態!アンタ変態でヤンスか!!?何考えてるんでヤンス!!?」


「あ、いや特に何も。」


「ひいっ!アンタからシリアルキラー臭がするんでヤンスけど!?!?」


「失礼な。人を狂人扱いするんじゃあ無いよ。」


「女をリフティングして心を和ませる奴は変態の狂人以外の何者でも無いでヤンしょ!!」


うむ。確かに。

だがどうでも良い。

俺は俺の虚無感が少しでも紛れるなら、後の事はどーでも良いと思っている。


もうしばらくリフティングしていようかと思った矢先、部屋の扉をノックする音が鳴り響いた。

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