魔王城
「はーい、では発表しますよっと!」
何故かニヤニヤしながら魔王が高らかに喋り出した。
おーい。
本格的にキャラブレてんぞ?
いいのか?
「そこにいるピエロ女事、山田の正体は…。」
「しょ、正体は?」
俺と牛ポルが固唾を飲んで見守る。
「正体は何と!?」
「…な、何と!?」
「なななんと!?!?」
ひっぱるなぁ。
早く喋れよ魔王。
「…なんか、雰囲気今一つだな。」
「おいっ!!雰囲気とか良いから早く教えろよ!」
「いや、雰囲気は大事だぞぅ。…よし!」
そう言うと、なんちゃら魔王ザキミヤは、魔力を高め始める。
「出でよ!我が僕…死神の騎士達よ!」
ザキミヤの足元に数十もの凶々しい魔法陣が現れ、そこから大量の魔物が現れた。
真紅の鎧に身を包み、大鋸を手にしたその魔物達は規律良くザキミヤの両端に陣を…取ろうとしたが…いかんせん場所が悪すぎた。
思い出して欲しい。
ここは牛ポルが管理する異世界召喚の施設の一部屋なのだ。
そこに数十台の魔物…死神の騎士を召喚してみろ。
結果は言わずもがなだ。
「うおっ!?ザキミヤ!お前バカか!!部屋中ギッチギチじゃねーか!!」
「あー、失敗失敗っ。」
「失敗失敗じゃあねーよ!早く何とかしろ!」
「むう。仕方がないのう。厄介ごとを押し付けおって。魔王使いの荒いヤツだ。」
「全部お前が原因だからね!?何被害者ぶってんだ!?」
「きーきーうるさいのぅ。んでは場所を変えるか。」
再び魔力を高め始めるザキミヤ。
「テレポート!!」
バシューーーン!!
魔王の魔力が弾けた瞬間、俺たち4人は…4人はプラス大量の死神の騎士は一瞬にして空間転移した。
瞬きするほどの刹那、目の前が一転し、そこには巨大な空間が広がっていた。
漆黒の壁、漆黒の床、漆黒の天井。
無数の凶々しいデザインのシャンデリアに魔王軍軍旗。
そして、先ほどの部屋には収まりきれなかった死神の騎士達が両脇に陣を取り、その中央にはいかにも魔王魔王した玉座が置かれている。
これは正に、絵に描いたような…
「ようこそ今鹿風谷、そして牛ポルに山田。我が魔王城に。」
あ、やっぱりね。
「お、おおー!これは!!」
何やら簡単の声を上げ辺りをキョロキョロみまわす牛ポル。
…あれ、コイツもしかして魔王城来たの初めて??
四天王なのに。
かわいそうになってきたわ。
「して、魔王様!我々を召喚された理由をお聞かせ下さい。」
先ほど魔王が召喚した死神の騎士のリーダーっぽい奴が魔王の前で片膝をつき声を掛けた。
「もしやいよいよ勇者との最終決戦ですか!」
「「うおっーーーーーっ!!!」」
リーダーのその一言を聞き、他の騎士達の士気が跳ね上がる。
「「大魔王ザキミヤ様万歳!!大魔王ザキミヤ様万歳!!」」
歓声が魔王城中に響き渡る。
「さあ!魔王様!我らに御命令を!!」
リーダーが力強く立ち上がる。
…しかし。
「あ、いや、違うよ?」
ザキミヤは素の表情で答えた。
「…え?」
思わず固まるリーダー。
「今回お前達を召喚した理由はだな。」
「は、はい。」
息を呑み言葉を待つリーダーと騎士達。
「盛り上げて欲しいからだ。」
「…え?」
「今から余がコイツらに秘密を発表するから、その時後ろで盛り上げて欲しいのだ。」
魔王が俺たちに目線を送る。
俺とリーダーの目が合う。
おいおいリーダーきょとんとしちゃってんじゃねーか?
どーすんだよこれ。
「も、盛り上げるとは?」
こちらから再び魔王に目線を戻してリーダーが訪ねる。
「盛り上げるは盛り上げるだ。他意はない。盛大に余の発表を盛り上げろ。」
「あ、いやしかし、具体的にどうすればよろしいのでしょうか?」
「は?お前そんな事も解らないのか?学生時代何やってたんだ?部活とか入って無かったのか?引きこもり?」
なんか真っ黒な企業のパワハラ圧迫面接みたいになってきたぞ。
リーダー詰められて泣きそうじゃん。
やめて差し上げろ。
「あ、いや私は生まれてこの方死神の騎士なもので学生時代と言われましても…。」
リーダーも真面目に返さなくて良いから。
「はあ?マジで?脳筋かよ。使えないな。」
「お前マジで酷いな。てかどんなサラリーマン生活送ってたんだ未来の俺は。」
「いやーなかなかブラックな企業だったぞ。」
「ヤメて!?マジでヤメてくんない!?」
将来お先真っ暗だわ。
「まあ良い。では余が盛り上げ方を享受してやろう。」
「あ、ありがとうございます。」
「まずは、楽器だ。」
「が、楽器??」
「そうだ楽器だ。トランペットとか太鼓とか地下室にいっぱい有るから今すぐ持ってこい。」
「は…はぁ、解りました。」
「それから歌と踊り」
「お、踊りですか!?」
「テンション高めのやつな。」
「て、、、テンション…。」
「さ、わかったらさっさと用意しろ。日が暮れてしまうぞ。」
あからさまに困惑している死神の騎士。
あー、なんだろうこれ。
涙が出てくるわ。