マッチポンプ戦争
「いやいや、牛ポル。なんでお前まで驚いてるの?」
俺はなぜか同時に声を上げた魔王軍四天王の一角に思わず突っ込んだ。
「わ、ワシも初耳だったから…。」
「マジか。お前仮にも魔王軍四天王だよね?なんでこんな大事な事知らされてないの?」
「その質問には余が…この魔王自ら答えようではないか!」
なんか魔王が会話に割り込んできた。
「てかミノタウルス、お前牛ポルって名前だったっけ?」
「そこは今はいいだろ。」
「いや気になる。余の配下が余の知らないうちに改名してたら流石に気になる。」
「器!器の小ささ!!」
「いやだって冷静に考えてみるが良い!自分の会社の社員が知らないうちに住所とか電話番号とか変えていたら困るであろう?組織として社員の情報はある程度把握するのは当たり前であろう?」
「まあソウかもしれないが、会社で例えるのやめてくんない?異世界感薄れるから。」
「仕方無かろう!余はもともと地球…日本生まれ日本育ちのピッチピチのサラリーマンであるぞ?」
「ウッソ!サラリーマンだったの!?てか俺将来サラリーマンになるの??」
今明かされる衝撃の未来。
「そう、そして美しき嫁と可愛い娘に囲まれての幸せな生活をエンジョイしているリア充だったのだ。」
「ちょっ?!?まっ!?ストップ!!」
うおい!?何を言い出しやがるこの魔王!!
「なんだ?」
「いやいやいや!それ以上は聞いちゃいけない気がするから一回ストップ!」
「ん?聞いてしまうと未来に影響でも出てしまうと心配しているのか?」
「いやそれもあるけど、それ以前の問題で…なんか聞きたくない。」
本能レベルで聞きたくない。
めちゃくちゃ気になるけど…。
「なんだ若き日の余は意外と意気地が無いな。」
「それ自分で言ってて嫌じゃ無い?」
「ふむ。まあ確かに。」
「で、話を戻すけど…攻めてきてる人間側の勇者軍も俺なの?」
「そうそう。」
いや魔王がそうそうって…。
「じゃあつまり、今この世界、エスブリッジだっけ?…で、繰り広げられている戦いは俺と俺…違うか、俺達と俺達でやり合ってるって事?」
「そうそう。」
「アホなの?」
思わず声に出してしまう。
「いや仮にも大魔王である余、暗黒漆黒ダークネス魔王【ザキミヤ】に向かってアホとか言うなよ。」
「いやいや、アホだろ!アホ意外の何者でも無いだろ!?マッチポンプじゃん!しかも誰も得して無いマッチポンプ!!あと名前酷いな!忘れてたけど!!」
「いやでもアイツら攻めてくるから」
「話し合え!!話し合えザキミヤ!相手も自分なんだから話し合えよ!もとサラリーマンだろ!営業トークしろ!」
「いやいやもう100年以上前の事だから営業トークとか忘れたわ!」
「いや大丈夫だ!お前からは未だに現代社会の匂いがプンプンするから大丈夫だザキミヤ!!話し合え!!もしくは死ね!!」
「お前も大概だな。」
なんかイライラしてきた。
何?
俺将来あんな感じに仕上がるの?
あんなアホな感じに仕上がるの?
嫌なんですけど。
あとなんでザキミヤ?
「あとなんで牛ポルはその事知らされてないの?」
「いやー、牛とか信用できないし。」
「酷い!」
「酷いな。」
「いやだって正直食料にしか見えないし。」
「酷い!」
「酷いけど、まあ解る。」
「え!?」
突然の俺の裏切りに唖然とする牛ポル。
「まあ正直非常食っすよね、牛ポルは。」
「わあビックリした!?山田居たのかよ!?」
「ずっと居たでヤンスよ。何か入るタイミング無くて黙ってただけでヤンス。」
…嫌な予感がする。
「なあザキミヤ、コイツ…山田も…まさか「俺」か?」
もしそうならば俺は自分自身の尻、、、いやSiriや胸の感触を楽しんで心を落ち着かせていたことになる。
それだけは…それだけは人として…。
生唾を飲み込みながらザキヤマを見ると、ニヤリと笑いながら奴は俺に告げた。