文学少女・丑三麗子は音読しない。
送ったものの選ばれなかった作品です。
秋の桜子さん、FAありがとうございました<(_ _)>
私立麗明学園二年A組。
その窓際の一番前の席には、クラスで有名な女子がいる。
丑三麗子。
読書が好きなのか、いつも本を読んでいる女子だ。
彼女はクラスメイトとは一切付き合わないどころか……喋る事すらしない。
異性どころか、同性とも。
おかげで彼女は、イジメこそないがクラスで孤立している……そしてそのワケを俺は知っている。
なぜなら俺は……彼女を護衛するためにこの学園に、彼女がいるクラスに、派遣されてきたのだから。
〝音読した物語を現実化してしまう特殊能力〟を持った彼女を、彼女を悪用しようとする者達から守るために。
そしてそれは、現実世界の悪人だけに限らない。
かつて彼女が現実化してしまった〝悪の組織〟からもだ。
それが、俺の役目。
世界法則が歪んだ事を、全人類にまだ知らせるべきではない現状では、ちょうどいい人材――敵の一つと同じく〝創作作品の登場人物〟である俺にしかできない、重要なミッションだ。
彼女はそれを知らない。知らなくていい。
というか俺は、彼女が無意識の内に封印した記憶の中で音読した物語の人物。
パワーインフレな設定の物語を創作して、彼女に音読させておきながら。
世界を歪めてしまった原因の一つであるにも拘わらず、その責任を全て妹に押しつけて現実逃避し、彼女を悪として殺そうとし、現在精神病院で廃人となっている彼女の実の兄――丑三岩雄が、創作した人物なのだから覚えていようがない。
思い出させたら、彼女は実兄に殺されそうになった事まで思い出してしまう。
確かに彼女にも世界を歪めた責任の一端はあるが、だからといって彼女が幸せになっちゃいけないルールはない。だから俺は、彼女には内緒で彼女を守り続ける。
だがある時、彼女は俺と敵対している組織にして、彼女の兄の創作物でもある悪の秘密結社の幹部と、ついに遭遇してしまい……。
これは、彼女には内緒の物語。
世界の命運を左右する、一人の少女を巡る物語だ。