カオスという存在
「私は前世と生前の記憶があります。何か知っていることはありますか?」悪役令嬢キャサリンはそう言った。
「そうですか……貴女もなのですね?」女神アフロディーテはそう答えた。
「え、どういうわけですか?」キャサリンは驚く。
「私は実は乙女ゲームが好きなのです」アフロディーテの言葉は意外だった。
「えっと、それとこれはどう話がつながるのですか?」キャサリンはちょっと混乱している。
「つまりは、何かの力が働いて、我々をその乙女ゲームという名の異世界に転生させたみたいなのです。実質、キャサリンさんは日本人であった時の記憶、つまり前世の記憶を取り戻すのに時間がかかったらしいですが」
ここで冥界の王ハデスがこう付け加える。
「キャサリン? お前が乙女ゲームの世界に転生して記憶がないのは当たり前。女神アフロディーテでさえ、力をキャサリンに封じ込められて苦しんだ、いや、お前のせいではない。全てはカオスという存在が我々を呼び集めている。カオスというのは神々を創ったとてつもなく強力な存在だ。女神アフロディーテ? ヘラクレスはどこだ?」
キャサリンはポカーンとしている。
「ヘラクレス? ああ、あの人はもう単身で、あの乙女ゲームの異世界に転生していますよ」アフロディーテはそう答えた。
「そうか。女神アフロディーテと悪役令嬢キャサリン? カオスの力と戦う準備は出来ているか?」ハデスはそう聞いた。
「私はもう一度あの異世界に転生します」
「ちょっと待ってください! さっきから何がなんだか? 私はもう乙女ゲームの世界には行きたくないですよ!?」キャサリンがそう言った。
「悪役令嬢キャサリン? カオスに勝つ、いや、カオスの暴走を止めるには我々がハッピーエンドを目指すしかない。そのためには、キャサリン、お前の協力が必要だ」ハデスは真剣な表情で言った。
キャサリンは黙っている。
続く