悪役令嬢キャサリン、再び
悪役令嬢キャサリンの意識は戻った。辺りを見回す。真っ暗闇である。記憶が思い出せない。キャサリンは真っ暗闇の中を歩いてみる。そして、魔法で火を灯してみる。
キャサリンはギョッとした。なぜなら、足元には見たことのない異形の虫がうごめいているからだ。
キャサリンは道なき道を歩く。いくら行けども、何もない。キャサリンは記憶を少しずつ思い出す。そうだ、確か自分は戦死したのだと。それもかなり雑に。
キャサリンは魔法で光を発生させる。
すると、異形の犬たちがやって来る。
悪役令嬢キャサリンは身構えた。
「人間、ここは冥界だ。人間、貴様は何者だ?」異形の犬たちが話す。
「私はキャサリン、悪役令嬢なんて呼ばれていたのよ? ここは冥界? つまりは死後の世界なのね」キャサリンは堂々としている。
「キャサリン、貴様はこれから何万回と苦痛を味わうことになるのだ。王ハデス様がやって来る。覚悟しろ?」
「ふん! そんなの私の魔法で……?」キャサリンが言いかけてやめた。
そのわけは、目の前に高く高くそびえ立つ冥界の王ハデスが現れたからだ。女神アフロディーテよりも段違いの王の力をビリビリと感じる悪役令嬢キャサリン。
キャサリンはこの時に初めて恐怖を覚える。魔法の光を打ち消され、辺りは薄暗くなった。
「私は冥界の王ハデス、悪役令嬢キャサリン、貴様はこれから何万回と苦痛に足掻くことになるのだ。最後の言葉を聞こう」ハデスの声はどこまでも重く暗い。
だが、悪役令嬢キャサリンは何を思ったのか、こう叫んだ。
「カッコいい! ハデス様って言うの? 私は貴方に従います!」悪役令嬢キャサリンはホレてしまったようだ。
そして冥界の王ハデスは様子がおかしい。そう、冥界の王は恋愛、特に女性に対する免疫が異常に低いのだ。しゅんしゅんとハデスの背が低くなり、悪役令嬢キャサリンの目の前には美青年が立っている。
「私をカッコいいだと? なるほど、キャサリン、貴様は見る目があるな? 私の城について来い」冥界の王ハデスはそう言った。
「はい、喜んで☆」
これが悪役令嬢キャサリンと冥界の王ハデスの出会いである。
続く