タイタニアードまた会う日まで!!
「…まさか…ロック…倒して…しまう…とは…な。」
長は、変わらず禍々しいフェイスペイントが施された顔に手を当てて話し出した。
「いや、運が良かったと言うか…なんと言うか…。」
リューは謙遜しながらボソッと呟く。
「…でも…これで…ロック…リュー達…認めた…タイタニアン…リュー達…同士…。」
「ありがとうございます!」
そう言ってリューが頭を下げると、ラビが長の前へと歩いて行って、テイカーのペンダントヘッドを差し出した。
「テイカーのペンダント…タイタニアンにお返しします。」
長は差し出されたペンダントヘッドをラビに押し返すと、ラビをそっと抱きしめた。
「…ラビ…あなた…は…私の息子…テイカーの家族…テイカーの家族…私達の…家族…その…イドラヴァ…彫られた[シャーマライト]のペンダント…あなた…持っていて…ほしい…。」
「長がテイカーのお父さんだったの?それに…シャーマライト…?」
「…そう…私…の…祈り込められて…る…リュー達…道中…無事を…願う…祈り…込めてある…。」
ラビは押し返されて、胸の所で握りしめているシャーマライトに涙を零した。
「ありがとう…絶対、テイカーの無念は晴らして来ます!!」
そう強く誓うラビに、タイタニアンの面々は穏やかな笑顔を向けていた。
…。
「…気を…つけて…メルビエール…まで…帰るん…だぞ…。」
舟を付けた磯まで見送りに来てくれたロックが、リュー達へと声を掛ける。
「ありがとうロック!僕は君と戦えて良かったよ!上には上がいるって痛感した!僕はまだまだ強くなるよ!!」
ロックは照れ恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いて手を挙げると、背を向けて集落へと戻って行った。
「…俺…自分で…料理…頑張って…みる…美味しい物…作る…夢…出来…た…!」
ショーはニコニコと笑ってリュー達に手を差し出すと、リュー達全員でその手を握り返した。
「うん!いつかショーの美味しいご飯をみんなで食べに来るからね!約束だ!」
「…ああ…約束…だ!」
リュー達は全員でニッ!と歯を出して笑うと、手を振って舟へと乗り込む。
「よーし、忘れもんは無いか!?これからメルビエールまで戻るからな!よしっ!リっちゃん!頼んだぞ!」
セイカイがそう叫ぶと、舟の前の海面からリヴァリエがニュッ!っと顔を出して叫び返す。
「おうっ!任せとけ、セっちゃん!!」
リヴァリエはセイカイにサムズアップして、軽快に沖へと舟を引っ張って行った。
「リ、リっちゃん?セっちゃん?」
と、リューが困惑して聞くと、セイカイとリヴァリエがガッシリと肩を組んで言った。
「いやー、リっちゃん程、俺の潮読みを分かってくれるヤツなんて今迄いなかったからよー!昨日の夜、話をしてたら意気投合してなー、もうマブダチの仲だよ!!」
「セっちゃん程、海を愛してくれているヒューマンは珍しいですよ!私達は、もうかけがえのない友人さっ!」
リューは、ブレイブの昔話を思い出し、交流が無かったから食物連鎖の関係になっただけで、あながち嘘の物語では無いのかもしれないなと思ったという。
「お、おう…まぁ…仲良い事は良いと思うよ…。」
2人の笑い声が響くスロープウィステリア号は、上げ潮に乗って高速で北上していく。
徐々に離れて行って、段々と小さくなっていくショーと、タイタニアードに、リュー達は手を振って別れを惜しんでいたのだった。
約一年の後に、タイタニアンの料理人ショーが、なんとか醤油のような物を作りたい!…と試行錯誤を繰り返し、魚から魚醤を作り出す事に成功させる。
そこからタイタニアードの野性味溢れる料理の幅が広がっていき、少し癖のあるタイタニアン達の料理は、エルノーラの庶民の間でも話題のタイタニアン飯として颶風…いや旋風を巻き起こしたのだった。
各章には、僕なりにテーマがあって、それに沿って物語が進行しています。
第1章…戸惑いと恋心
第2章…優しさ
第3章…怒り
第4章…悲しみ
さて、次の章は…。