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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第四章 南方黄鉄の坑道〜タイタニアード編
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怒涛のカルパッチョテイカー祭

鱗、内臓と、頭を落としたフロンティアサルテイカーの雌を、リューが少し大きな牛刀で三枚おろしにしていくと、周りの漁師達が響めきの声を上げた。


「「「「「おぉ〜…。」」」」」


「コツとしては、この真ん中にある中骨に沿って包丁…いや、ナイフを入れていくんだ。

そして半分までナイフが入ったら、次は背中側から同じ様にナイフを入れていく。

向こう側までナイフが抜けたら、肋骨を断って、血合い骨を切り離して身を剥がすと…こう身が別れるんだ。」


切り離した身をリューが、ドン!!と横に置く。


「後は、切り離した身の大体真ん中…この筋肉の繋ぎ目に血合い骨が残っているから、この骨を切り取れば、雄節(おぶし)雌節(めぶし)(※1)に別れるんだ、これで骨の無い身が出来るんだよ。」


「なるほど…俺らが魚を捌く時には、鱗と内臓を取って、後はブツ切りして煮る、焼くが基本だったからな…こんな捌き方がある事すら知らなかったぜ…。」


「この捌き方をすれば、骨を気にせず食べれるってもんだな!あんちゃん、教えてくれてありがとよ!!」


漁師達は新しい魚の捌き方を覚えて、楽しそうに笑っている。

その時、突然リューが魚の皮を引いて、雄節を刺身に切り取り出した。

リューが魚を小さい切り身状にしていくのを見て、漁師達は、一体何をしているのだろう?と真剣に見つめている。


「…さーて、お刺身ターイム…いただきます。」


リューは、マジックタックルボックスから醤油とチューブ山葵を取り出して紙皿に少量取り出すと、フロンティアサルテイカーの刺身を一切れ摘んだ。

周りの漁師達は、リューのその様子を見て「ま、まさか…。」と、唾をゴクリ…と音を鳴らして飲み込み、静かにその様子を見守っている。

刺身に山葵醤油を付けると、リューは躊躇い無く口の中に放り込んだ。


「お!ちょっ!!あんちゃん!!魚を生で食べるなんて腹壊すぞ!!」


「ムグムグ…いや?大丈夫ですよ?うん!!プリプリで新鮮だから美味しい!!」


リューが笑顔で食べているのを見て、漁師達は唖然としているが、その様子を静かに見守っていたシルカが漁師達を退けて刺身の前へ辿り着くと、シルカも躊躇い無く刺身を食べた。


「うーん!脂が強い魚じゃないけど、魚自体の味が良いね!美味しいよ!」


シルカもニコニコしているのを見ると、セイカイが「俺も食ってみようかな…。」と刺身を指に摘んで恐る恐る食べてみた。


「…ど、どうだ?セイカイ?」


目を瞑ってモグモグと咀嚼していたセイカイだったが、目をカッ!!と見開くと、周りの漁師達に言った。


「…これを食べないで人生を終えたら後悔するかもしれんよ?」


漁師達がその言葉を聞いて、我先に!と刺身に群がると、あっという間に刺身は消滅してしまった。


「いや…ホントに美味いな!まさか生の魚がこんなに美味いとは…。」


「なぁ!あんちゃん!このショーユ?これの作り方を教えてくれ!!頼むよ!!」


「うーん、流石に僕も醤油作りは分からないよ…。」


リューの言葉にその漁師は肩を落としながら言う。


「じゃあ、あんちゃんがいなくなったら、生の魚を美味しく食べる方法が無くなっちまうって事か…。」


項垂れる漁師の面々を見て、リューは何か生魚を美味しく食べる方法はないかな?…と、考えた。

フロンティアサルテイカーの刺身を見つめて考えていると、リューの頭に一つ料理が浮かんできた。


「フロンティアサルテイカー…イタリア語…。

…イタリア?…そうだ!![カルパッチョ]があるじゃないか!!」


「カル…パッチョ?」


「うん、僕の住んでいた世界にあるイタリアって場所で、牛肉を生で食べるカルパッチョという食べ方があるんだけれど、それを僕等日本人がアレンジした魚のカルパッチョという食べ方があるんだ!誰かオリーブオイルを持ってないかな?」


漁師達は、リューの言葉を聞いて一斉に調理場から自宅へと駆け戻ると、全員がオリーブオイルの入った瓶を持って帰って来た。

やはり、リジュワルドでオリーブオイルはメジャーな油であるらしく、持っていない事の方が少ないようだ。


「よし、じゃあカルパッチョの作り方を教えるよ!!まずはガーリックを刻むんだけど、僕の持ち合わせが塩漬けニンニクしかないから、これで代用するけど、生のガーリックがあれば、それを刻めば良いよ。」


すると、漁師の一人がポケットから生ガーリックを取り出してこちらへ渡した。


「な、なんでポケットにガーリックが入ってんの…?…ま、まあ良いか、それの皮を剥いて、付け根の硬い所を切り取って微塵切りにするんだ。

…………………………………こんな感じだね。」


タンタンタンタンタン!!…と、リューがリズミカルにガーリックを微塵切りにする。

そして、そのままフロンティアサルテイカーの身を薄めに刺身に切り分けると、皿に盛り付けていく。


「ガーリックを切った後、ナイフを洗わないのがポイントで、敢えてガーリックの匂いを刺身に付けていくんだ。

その上からオリーブオイル、刻んだガーリックを上から振り掛けて、塩で味を調整したら完成だ!!この他にも、香味野菜や、チーズ、香辛料なんかを合わせると美味しくなるから、アレンジすると楽しいよ!!」


漁師達は、期待に膨らんだ目をしてフロンティアサルテイカーのカルパッチョに飛び付くと、あっと言う間に全て平らげてしまった。


「こりゃあ美味い!!オリーブオイルと、ガーリックが合わない訳ないからな!こんな食べ方もあったんだなぁ!!」


「もう、毎年今日は祭りにしよう!!それぐらい感動した!!」


「よし!!じゃあ祭りやっちまうか!!そうだなカルパッチョと、フロンティアサルテイカーの名前の元になったテイカーさんと合わせて[カルパッチョテイカー祭]だな!!」


それをユニークスキル[地底神ハバキの地祇(ちぎ)]で聞きつけたラビが、調理場へと笑顔で乱入してくると、町を上げたお祭り騒ぎに発展したのだった。


…リューは一日中、カルパッチョを含んだ様々な料理を作らされたが、みんなの笑顔を見て「まぁ、良いか!」と張り切って調理をしたという。


暫くした後に、メルビエール特産の水牛チーズを元にして、ヴォライアンのドワーフ料理人であるグラッドが、モッツアレラチーズに近いフレッシュチーズを作り出した。

それをメルビエールのカルパッチョと融合させた[テイカーカルパッチョ]が一年の後にグルメ通の間で話題の料理として、エルノーラ大陸中に響き渡るのだった。

※1雄節、雌節

雄節…三枚おろしに切り取った身の部分の血合い骨を切り離し、半分になった身の背中側の身の事。

雌節…その腹側の身の事。

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