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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第四章 南方黄鉄の坑道〜タイタニアード編
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メルビエールの二発の弾丸

キャストしたメタルジグを海底(ボトム)まで沈めると、リューはワンピッチジャークで高速で巻き取り出した。


「前から思ってたけど、そんな高速で巻き取って、魚は追いつけるのかしら?」


シルカは疑問だったリトリーブスピード(※1)を聞いて来たので、リューが丁寧に答える。


「僕が今やっているワンピッチジャークは、一秒間に釣竿を三回シャクって、リールのハンドルを三回転巻き取ってるんだ。

このリールはハンドル一回転で、107cm巻き取っているから、秒間321cmって事だね。

1分で192.6m、1時間で11556m巻き取っているんだ。」


「数字の単位は分からないけど…かなり巻き取ってる訳だね?」


「つまり、時速…1時間で巻き取る量は、11.5kmって事なんだけれど、青物のような高速で泳ぎ回ってる魚は、時速50kmを軽々超えるスピードで泳ぎ回ってるんだ。

こんなスピードは、魚の最高速の1/5程度だから、魚からしたら全然追いつけるスピードだって事だね。」


「へぇー!この速そうに見える巻き取りスピードの5倍以上のスピードで泳いでるんだ?魚ってそんな高速で泳ぎ回ってるんだね!!」


シルカが驚いた顔をしていると、ワンピッチジャークを続けていたリューの釣竿に、ガツン!と当たりが現れた。

リューが、力強くフッキングを入れ魚が掛かるが、何やら微妙な顔をしている。


「…これは、どう考えても違う魚だな、重みも走り方も弱すぎる…。」


リューが釣竿を立てて巻き上げて来ると、早くもロッドのパワーに負けた魚が、水面を滑走して来た。


「…エファレンツァーだな、僕が今迄釣った中では一番大きいエファレンツァーだけどね。」


「リューちん、凄〜い!!」


そう言って、ラビが拍手していると、シルカがギャフでエファレンツァーを掛けようとしたので、リューが急いで引き止めた。


「シルカ!感電するから、僕がギャフ掛けするよ!」


シルカはビクッとして、リューにギャフを渡すと、リューは片手で手早くエファレンツァーにギャフ掛けし、堤防へと引き上げた。

多少ビリビリとするものの、スキル[電撃耐性]があるので、一番最初の痛烈なインパクトはもう無く、リューは一安心した。

釣り上げたエファレンツァーを締めてマジックタックルボックスにしまうと、リューは、再び大海原へとメタルジグを投げ始めた。


「なんかトレーニングみたいな釣りだね〜?」


ラビが、汗をかきながらメタルジグをシャクり続けているリューに向かって言った。


「タックル便利の店長さん曰く、ジギングは修行だ!…って言ってたよ…。」


ラビに返事をしつつ、ルアーを回収したリューは一息入れて座り込むと、シルカがやってみたそうな表情をしていたのでロッキングショアパーガトリーを手渡してみた。


「え!?リールと合わせるとこんなに重いの!?リュー、よくこんな重いのをシャクり続けてたね?」


リューは、疲れた顔でシルカにサムズアップすると、シルカに忠告する。


「ペンデュラムキャストは、しちゃダメだよ?

メタルジグが重いから、僕みたいに慣れて指の皮が厚くなってないと、重みで指が切れちゃうからね?」


その言葉を聞くと、シルカは驚愕の表情をしたが、リューの言いつけを守って軽く投げると、ワンピッチジャークで巻き取りだした。


「ハァ…ハァ…!…これは…確かに疲れるね…!」


「ショアジギングのプロフェッショナルな人達は、これを一日中続けるんだ…本当尊敬するよ…。」


シルカ3回程投げて息が上がってしまったので、リューに釣竿を返すと、ラビがそれを奪い取って言った。


「あたしもやってみたい〜!」


「ラビ、この釣りは結構難易度が高いんだ、ミスすると、周囲にも危害が及ぶ可能性があるし、ラビは違う釣りをしようか?」


リューが優しくラビにそう言うと、プクーッ!っと膨れた顔になって言い返してくる。


「難しくてもいいんだよ〜!あたしも、みんなと同じのがやりたい!」


「何も、最初からこんなエクストリームハードモードから釣りを始めなくても…そうだ!ルアーをもう少し軽い物に変えて練習してみようか?」


「ウン!!」


そう提案すると、ラビは良い笑顔で返事をした。

リューはメタルジグを外し、スカンジナビアデザインと言うメーカーのジャックオランタンと言うポッパー(※2)に付け替えると、一度手本で投げる動作をしてあげる。


「まずは、力を入れないで、軽ーく前に投げてみよう!リールから出ているラインを人差し指に掛けて…ベールを起こすんだ、そして軽く振りかぶって…前に釣竿を振ると同時にラインに掛けた指を離す!これでルアーが前へ飛んでいくからね!」


リューは、着水したポッパーを大きく横に煽って、水飛沫を上げながらラインを巻き取る動作をする。


「ルアーは、こんな感じで動かすと良いと思うよ!」


「うん、わかった!」


ラビは、リューに教わった通り軽く投げた。

…軽く投げた筈なのだが、先程のメタルジグより軽くて風の抵抗が大きいルアーの筈なのに、リューが全力で投げるメタルジグより少し短いくらいの飛距離が出て、リューは唖然としている。


「お、おう…ナイスキャスト…。」


「えへへ〜!楽しいね〜!」


ラビがリューに教わった通り水飛沫を上げながらポッパーをぎこちなく引いてくる。


「こんな感じでいいのかな〜?」


「うん、とりあえず慣れる為に…ん?」


…すると、水飛沫を上げたポッパーの後ろの海面がザワザワと盛り上がり、次の瞬間、突然水面が爆発したように炸裂し、ルアーが5mほど宙に舞った。


「なななっ!!」


「ええっ!?」


「なんだこれ!?」


みんながビックリして口々にそんな事を言っていると、宙を舞っているポッパー目掛けて、胸ビレの大きな雌らしき例の巨大魚がハイジャンプして飛び掛かり、ポッパーをハーモニカの様に咥えて海へと着水した。


「!!…ラ、ラビ、竿先を上にあげて!!」


「あ、あい!!」


ラビがリューの指示通り、力強くフッキングすると、ガツンと魚の重みが釣竿全体に乗った!!


「ふぬぅ〜〜〜!!!」


その魚は、ファーストラン(※3)で、沖合に向かって100m程つっ走った!ドラグから煙が出るんじゃないか?と言うくらい力強い引きだ。

ラビがそれを竿を立てたまま何とか耐えると、魚は先程も見せたハイジャンプをしてルアーを外そうと試みている。


「ラビ、釣竿を左下に下げて耐えて!!」


リューはラビに指示を出して、魚がジャンプから着水する隙が出来た瞬間、ラビの腰にタックル便利で買ったギンバルベルト(※4)を巻いて固定した。


「ラビ!その腰に巻いたヤツの穴に、釣竿の根元(バットエンド)を入れて固定するんだ!梃子の原理で、ファイトしやすくなるから!!」


ラビは、ギンバルベルトに言われた通り釣竿を固定すると、魚のタイミングを見ては、リューの指示通りにポンピングで糸を巻き上げて行く。


ジィィーーーーーーーーーーーーー!!!!


少し寄って来たかな?と思うと、再びドラグを唸らせながらリールで巻き取った以上に魚は沖合に向かって突っ走っていく!


「止まらないよ〜!ねぇリューちん、どうしたらいいの〜!!」


「辛抱強く、巻いては糸を出されを繰り返して、魚が弱るのを待つしかないんだ…。」


首を振りながらルアーを外そうと魚が抵抗しているが、ラビも腰を落として踏ん張っている。

その時、フッ…と、ラインにかかっていた力が抜けた。


「あ、あれ〜?…もしかしたら逃げられちゃったかも…。」


「マジか!?…イヤ、まぁ仕方ないって!次があるさ、地道に頑張ろう!」


ラビはションボリしながら、ルアーを回収しようとリールをグルグルと巻き取っていくが、何やら異変に気が付いた。


「???…あれ〜?巻いても巻いてもルアーの感覚が無いよ?」


「え?切れちゃったかな?…ああっ!もしかしてっ!」


と、リューが言いかけた所で地面に衝撃が走った。

ルアーが外れたのではなく、此方に向かって泳いで来ていたので抵抗が無くなった様に感じていたのだ。


ドガァッ!!!


急に足元の石積み堤防に、大きな振動と亀裂が走る。

シルカは、反射的に足元のハスキーを抱えて空へと浮き上がるが、釣りに集中していたラビは、バランスを崩して海へと転落しそうになってしまっている。


「ラビ危ないっ!!」


リューがラビの襟を掴んで振動に堪えると、再び魚は沖に向かって走り出した、どうやら攻撃の為にこちらに向かって来て、石積み堤防に体当たりをしたようだ。

しかし、岸の近くに来ていたのでチャンスでもあり、ラビはリューの指示を守って弛んだ分のラインを即座に巻き取り、ファイトを続けていると魚が段々とこちらに寄って来た。


「チャンスだ!シルカ、最初の予定通り、[飛翔(フライト)]で近づいてギャフを掛けてくれ!!」


「うん!わかったよ!!」


シルカは飛翔で慎重に近づいていくと、タイミングを計って魚の口元にギャフを掛けた!!


「よっし!!じゃあ、そのギャフを僕に渡してくれ!!」


魚は抵抗するものの、エラに空気を取り込んでしまっている為に、段々と弱って来ている。

シルカはジリジリと飛翔で引っ張ってくると、リューに何とかギャフを手渡した!


「はいっ!リュー!!」


ギャフをリューに手渡したと同時に、バシャァァ!!っと言う音がして背ビレの発達した雄の魚が海面から飛び出した!


「…え!?キャァァァァァ!!」


シルカが悲鳴を上げると、シルカの足首を加えた雄の魚が宙に舞って、そのままシルカを海へと引きずり込んだ!


「シルカァァァァァァァ!!ラビッ!!このギャフを頼んだぞ!!」


そう言うと、リューは、すかさず海へと飛び込んだ。

背ビレの大きな雄の魚は、雌の魚の回りをシルカを咥えたまま泳ぎ回っているが、リューの姿を確認すると、高速で体当たりをして来た!


ユニークスキル[海神リヴァイアの矛]発動。


リューは、陸戦と同じ様に海底の珊瑚を蹴ってジャンプし、体当たりして来た魚の口に手をかけると、力ずくで口をこじ開けた。

シルカは、魚から解放されたが高速で水中を引きずり回されたせいか、気絶してしまっているようだ。

無理矢理口をこじ開けたリューの手に魚の歯が食い込み、海水に血が滲んでいくが、気絶したシルカを見たリューは、ユニークスキル[流視(リュー)の逆鱗]と、ユニークスキル[正義女神の子の剣]を発動させ、魚の口を引き寄せながら、硬いデコの部分に頭突きをする。

岩をも砕く魚の頭突きだが、怒り狂ってるリューには強い弱いは関係なく、怒りに任せて幾度も頭突きをすると、ついに魚は気絶して水面へと浮き上がった。


シルカッ!!


リューは、シルカを抱えて海面へと浮上し、堤防の上へとシルカを押し上げる。

リューもよじ登り、シルカの様子を見ると唸りながら、ゆっくりと目を開いた。


「うーん…お魚に気絶させられるなんて思いもしなかったよ…。」


思ったよりも元気そうなシルカを見ると、リューは安心し、雄の魚の方にもギャフを掛けて引きずり上げた。


「おぉ〜!こんな大きい魚が二匹ならんでいると壮大だね〜!」


今回のヒーロー、ラビがニッコリと笑ってそう言うと、全員疲れ果てて、バッタリと堤防に倒れ込んだのだった。

※1リトリーブスピード

巻き取る速さの事。

早い巻き取りをファストリトリーブ。

普通の巻き取りをミディアムリトリーブ。

遅い巻き取りをスローリトリーブ。

更に遅い巻き取りをデッドスローリトリーブといったりする。


※2ポッパー

糸を結ぶ面に水を押し返すようなカップ形状の機構がついたルアーの事で、引っ張ると、カップ形状に水を受けて水飛沫を上げる。


※3ファーストラン

魚が針に掛かった時に最初のつっ走りの事。

元気がある段階での走りなので、力強い。


※4ギンバルベルト

腰に巻き付け、前面にバットエンドを引っかけれるようにできるベルト。

そこを支点として、引っ張る腕が力点、竿先が作用点となり、力強くポンピングが出来、さらに無駄な力がなくなるので疲れにくくなる。

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