無知は無茶をする
さて、時刻は夕刻、まだまだ釣りはできるなー。
…と思って、リュー釣竿を出した。
「スキル奪取があるなら、色々な種類の魚を釣り上げて、色々食べてみるのが良いかな?
もしかしたら、この崖を上がれるようなスキルをゲットできるかもしれないし。」
リューは、先程使っていたフローティングミノー(※1)を外し、やや平べったいメタルジグ(※2)を付け、広く探れるショアスロージギング(※3)を試してみようと思った。
まずは、ルアーをキャスト!
着水後、PEラインにほんの少しだけテンションをかけつつルアーが海底に落ちるまでラインを送り込む。
着底後、すかさずジャークしながら、ラインのたるみを巻き取るを繰り返す、時折、再び海底まで落とし、同じくジャークしながらゆっくりと海底付近を探る。
そして五投後…。
ジャークした後、海底に着くか着かないかの所で、ガツっ!と当たりが出た!
そこで竿先をグン!と煽り、フッキングを入れる。
「っっよし!」
魚がかかり、下へ下へ潜ろうとする!
先程のエファレンツァーとは全く性質が違う引きだ。
「多分、根魚(※4)系だなっと!」
岩の隙間に逃げ込まれないようにすかさず竿を立てて、リールをゴリゴリと力強く回す。
するとリューの20m前くらいでその魚が水面に顔を出した。
「よし、後はゆっくり寄せて…と!」
先程のエファレンツァーのように何をしてくるかわからないので、慎重に磯にずり上げ、恐る恐る下顎にフィッシュグリップをかける。
「よし!とったぁ!っととと!」
…と、そこで最後の大暴れをする!
外見を見てみると、人食い魚で有名なピラニアを、笠子みたいな根魚にした外見で、歯をカシャカシャ鳴らして威嚇してくる。
「歯は鋭いけど、海中で襲われる訳じゃないから、なんて事はないよな!」
…と、リューは魚を磯に脚で押さえつけ、ナイフを脳天に突き刺し、絞めた。
すると、再びウインドウが開き、レベルアップを告げる。
リュー ヒューマン
ジョブ 釣師
レベル3→7
HP41/102
MP6/60
力…25
敏捷性…38
持久力…24
魔力…22
運…13+20
スキルポイント[40]獲得
「よっし!レベルアップしたぜ!」
最早、慣れたもので、レベルアップに驚く事もないが、やはりファンタジーアニメ好きとしてはレベルアップは嬉しい。
喜んでいると、釣り上げた魚の情報も表示された。
[ヘイルボルグ]
LV8
41cm
エルノーラ大陸北部を除くやや暖かい地域に分布している底生魚で、性質は獰猛。
人間の腕を一噛みで噛みちぎれる咬筋力があり、自分よりも大きな魚などにも果敢に攻撃し、その鋭い牙で噛み殺して捕食してしまう。
単独で生活しているが、春先の産卵シーズンには海岸近くに大挙して押し寄せ、たまたま海遊びなどをしていた子供などが襲われた事例もある。
味は弾力のある身質をしていて癖のない味わいで、脂が程よく乗って美味い。
捌いた後、冷蔵庫で2〜3日程寝かせると、弾力がなくなっていく代わりに旨味が強くなり尚の事美味い。
「…いやー、噛まれないでよかったな…。」
リューは不用意に脚で押さえつけた事にブルブルしていた。
うーん、寝かせたいけど、冷蔵庫ないから、今回は、半身を刺身にして、もう半身を皆木さんから借りたバーベキューセットで塩焼きにしてみようかな!
つい先程、60cmの魚を食べたばかりなのに、リューは舌舐めずりしながら魚を捌きだしたのだった。
※1フローティングミノー
小魚の形をしたごく一般な樹脂で出来たルアー、何もしないと水に浮き、リールを巻くとリップという下顎みたいな機構に水を受け、最大で1m前後程度潜りながら左右に泳いで魚を誘う。
※2メタルジグ
ルアー全体が鉛や、タングステンという比重の高い金属で出来ており、圧倒的飛距離が出る。
またミノーなどの樹脂系と違い、水底まで隈なく魚の反応を探る事が出来る。
※3ショアスロージギング
ショアとは、主に陸地からの釣りの事を言う。
船などの釣りはオフショアと言う。
ジギングとはメタルジグでの釣りの事で、岸からのゆっくりジャークをして誘う釣りをショアスロージギングと言い、活性のあまり良くない魚や、高速で泳がないような魚でも釣れたりする。
※4ロックフィッシュ
水底の岩の隙間などで他の生物を待ち伏せ、瞬発力で食べるタイプの魚で、岩礁地帯みたいな場所に多く生息し、針がかりすると、岩の隙間に逃げようとする。