ラビの恩返し[エスパーダ・ダンデライオン]
「四日間だけ待って貰えるかな〜?」
そう言うと、ラビはリューのフィッシンググローブを奪い取り、ライドンと共に自分の工房に引き篭もった。
リュー達は、ラビに頼まれたまま過ぎ行く時を待っていたが、三日目の夕方にリュー達が寝泊まりする、ライドン家の納屋に何かを包んだ荷物を持ったラビがやって来た。
「やっほ〜!…あれ?シルカちんは居ないの〜?」
「ああ、シルカなら、ハスキーを連れてその辺を散歩しているよ。
でも、そろそろ帰ってくるんじゃないかな?少し待ってる?」
「うん〜!」
リューは、この三日間でヴォライアンを巡ったり、ゴードルの仕事の様子を見たりしていた事をラビと話し、シルカを待っていた。
15分程経った頃、ハスキーが先行して納屋に飛び込んで来ると、ラビの足元で飛び跳ねて喜んでいる。
シルカがそれに続いて帰ってくると、ラビの姿に気付いた。
「あれ?ラビどうしたの?工房に篭もったっきり出て来なかったから心配したよ。」
シルカがそう言うと、ラビはテヘペロと戯けた顔をして、シルカに持ってきた荷物を渡しながら言った。
「シルカちんにね…これを作ってたんだ〜!!」
包みの布を解くと、そこには細身の剣があった。
剣を掴んだシルカが、その刀身を鞘から引き抜くと、鮮やかな黄色に目を奪われた。
「わぁ…綺麗…この剣は?」
「これは、[エスパーダ・ダンデライオン]、あたしと爺ちゃんの持てる技術全てを注ぎ込んで作った、最高の剣だよ〜!」
シルカがエスパーダ・ダンデライオンを前に構えると、ラビは嬉しそうに微笑んだ。
「…シルカちんにね、お礼がしたかったんだ…。
ゴードルの件でシルカちんの言葉が無かったら、あたし…人殺しになっちゃってたと思うの。
…だから、あたしのお礼の気持ちである、この剣を受け取ってほしいな。」
「こんな高価そうな剣…本当に貰っても良いの?」
ラビは真面目な顔で、俯きながら言う。
「貰ってもらわないと困るかな?
重量やバランス、グリップの太さ、全部シルカちんに合わせて作ったんだ!」
その言葉を聞いたシルカは、腰のショートソードを外し、エスパーダ・ダンデライオンに付け替えて、ラビに笑い掛けながら言った。
「ありがとう!…どう?似合ってるかな?」
「うん!とってもカッコいいよ!!」
ラビは嬉しそうにシルカに抱き着くと、リューの方を見て小さな包みを差し出した。
「そうそう!リューちんにもね、これ作って来たよ!」
リューがその包みを受け取り開いて見ると、リューのフィッシンググローブが改造してあった。
「拳の所と、手首の部分をダンデリルで補強してみたんだ〜!リューちんは体術で戦うみたいだから、威力上昇になったら良いなと思って〜!」
そのフィッシンググローブをつけてみると、リューは、キラキラした目でそれを見つめている。
「うわぁ…!僕の黒いフィッシンググローブに、ダンデリルの黄色が映えてカッコいいな!!ラビ、ありがとう!!」
「どういたしまして!!」
三人がニコニコとしていると、ハスキーが寂しそうにしている。
「…クゥーン。(…おいらには無いの?)」
ラビはニヤリと笑って、ポケットからダンデリルで作ったアクセサリーを取り出すと、ハスキーの首輪に着けてあげた。
「わぁー!ハスキー、カッコいいよ!」
シルカがハスキーを撫でながら褒めたアクセサリーは、ハウリングウルフが三日月に乗って遠吠えをしている姿を形どった物で、ダンデリルの黄色と月が合っており、とてもセンスが良い物だった。
「わふっ!?わふっ!!(ホント!?ラビの姉ちゃんありがとう!!)」
ハスキーはラビに飛びついて、ラビの顔を舐めながらお礼を言った。
「どういたしまして〜!ハスキーちんも、テイカーを止めてくれたからね!お礼してあげたかったんだよ〜!」
ハスキーの気が済むまで顔を舐めまわされるラビを見て、ライドン家の納屋にリュー達の笑い声が響いていたのだった。
…。
「明日出発だけど、エルノーラ南部に出て、そのまま南西部を目指せば良いのかな?」
今後の旅について、リューは二人に相談してみると、ラビが一つ提案して来た。
「…タイタニアードに寄り道しちゃダメかな〜?」
そう言うと、腰につけたバッグから仏像のような彫り物がされた拳くらいの大きさの黒石を取り出す。
「これ、テイカーが大切に着けていたペンダントのヘッドなんだけど、多分、タイタニアンの信仰する神様かなんかだと思うんだよね〜?
…テイカーの死の事も家族に伝えてあげたいし、このペンダントヘッドも渡してあげたいんだ〜。」
その言葉に、リューとシルカが顔を見合わせて頷くと、シルカが言う。
「そうだね、テイカーの家族にも知らせてあげないとね…。」
「…よし!次の目的地は南海に浮かぶタイタニアード!これで行こう!!」
リューが拳を突き上げながら言うと、シルカとラビも拳を上げて同調したのだった。
ラビのプロフィール
種族…ドワーフ
年齢…24才(しかし、ドワーフはヒューマンの2倍程生きるので、精神年齢はヒューマンの15〜16才程度。)
身長…128cm
体術…38kg(身長の割に体重があるが、ほぼ筋肉。)
性格…のほほんとした楽観視の性格で、余程の事がないと笑顔が崩れないが、怒るととてつもなく恐い。
髪型…茶色の髪を後ろで結んだポニーテール。
ファッション…白のタンクトップに、オーバーオールジーンズのようなズボンを肩に掛けないスタイル。
右腕にはダンデリルのブレスレットをしており、左手にはタオルを結びつけてリストバンドみたいに汗拭きに使っている。
名前…ドワーフは、一族みな同氏の結束があるので、氏名は名乗らず名前のみを名乗る。
必要な時には氏も名乗るが、ドワーフ全ての氏がドワーフなので、特に名乗る必要もない。
特徴…地底神ハバキの子であり、悪神の子だとバレるとエルノーラでは迫害の対象となる。
しかし、地底神ハバキの子だと知っても優しかったリューにはとても良い感情を抱いてはいるが、恋愛感情ではなく、親友としての友情である。
また、シルカの言葉で人殺しにならずに済んだ為に、人としてシルカを尊敬している。
ユニークスキル[地底神ハバキの地祇]は、地に住む者ならば、考えを見通す事が出来るが、魚、鳥、ドラゴンなど、海にいる者や空に飛び立てる者の考えは見通せない。
リューと、神以外ではハスキーの考えが分かる理解者である。




