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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第四章 南方黄鉄の坑道〜タイタニアード編
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死せるテイカー生けるラビを走らす

フードの男が眼を覚ますと、そこは煉瓦造りの建物の屋内だった。


「…ッッ!!」


リューに殴られた事で切れた唇の痛みで、男は完全に覚醒した。


「起きたみたいですね。」


男がその声の方に視線を移すと、ラビが般若の如き表情で立っており、地面に純南方黄鉄とミスリルの合金である[ダンデリル]のメイスを地面に打ちつけていた。


男は、ビクッ!と身を震わせて逃げ出そうとするが、南方黄鉄の鎖で椅子ごと全身を巻かれて座っており、ピクリとも動けなかった。


「…このままだと、ラビがあの男を殺しちゃうよ?ねぇ、リューはそれで良いの?」


シルカが壁に背中を持たれかけて立っているリューに言う。


「…僕は、こいつみたいに敵対した人間じゃなければ、自分がされたら嫌な事はしない。

もし、シルカを誰かに殺されたとしたら、例えシルカが復讐を望んでいなかったとしても、僕はそいつを殺す。

不条理に命を奪われて我慢できる程、僕は人間が出来ちゃいないんだ。

その時、誰にも止めて欲しくないと思うからラビを止める事は出来ない。」


「私だって、リューが殺されたりしたら…でも…。」


シルカはそこまで言って口を閉じる。


「…ここからは、ラビに任せよう。」


シルカは、心配そうな顔でリューを見ると、ゆっくりと頷いた。


「で、取り敢えずアンタの名前は何て言うのかな?」


「…。」


男は黙秘してやり過ごそうとしているのか、殺されても言う気が無いのか、押し黙っている。


「…ふうん、[ゴードル]さんて言うのね。」


「…なっ!!」


リュー達とライドンだけは知っていた、これは尋問ではなく事実確認だと言う事を。

ラビのユニークスキル[地底神ハバキの地祇(ちぎ)]の前には、如何なる黙秘も誤魔化しも通用しないのだから。


「…で、これは誰の差し金でやった事なの?」


「…。」


フードの男ゴードルは、身体中から汗を滲ませながら黙秘を続ける。


「どうしても言いたくないのかな?色んな違う事を考えているようだけど?」


「こ、これは俺の独断だ!雇い主?何の事だかわからんな!!」


バキィ!!


と、いう音と共にゴードルの奥歯が三本、床に落ちて転がった。


「嘘はダメだよ?テイカーの手紙…いや、遺書が見つかってるんだから…。」


「っぐぁぁあ!!」


テイカーは、リューへの襲撃が成功しようがしまいが、最終的には自害する気だったらしく、遺書として手紙を残していたのだった。

誰にも読めないタイタニアンの文字での遺書だったが、ウインドウで翻訳出来るリューがそれを訳して皆に聞かせてあり、現在はその遺書の事実確認中と言う事だ。


「もう一度聞くよ?黒幕は誰なのかな?」


「…エルノーラセントラル…第一皇太子…[ヴォルク=エデン=エルノーラ]様…だ。」


ラビは、怒りでフルフルと震えている。


「で!!その皇太子とやらがなんでリューちん達を狙って来たのかな!?」


「…俺だって、そんな事は知らねえよ!!皇太子殿下が皇帝陛下からの勅令(ちょくれい)だと、命令書を渡して来たんだよ!!一家臣に過ぎない俺には拒否権が無かったんだ!!」


「ゴードル、あんたの考えはどうなんだ?ヴァルク皇太子に、僕が狙われる理由の推察は無いのか?」


喚き散らすゴードルの言葉を、リューが遮って聞いてみる。


「…あの人は、全能の女神マテラスの子だ。

よくわからんが、お前が邪魔だとユニークスキルのお告げでも出たんじゃないのか?」


「…そんな意味の分からない具体性のない命令で、テイカーを使った上に殺したの?あんただって家族がいるんでしょ!?残された人の気持ちを何も考えなかったの!?」


ラビは涙を流しながら、フゥーフゥー!!と、荒い息遣いで、ゴードルに詰め寄る。

そのラビの鬼気迫る剣幕にゴードルは、項垂れながら呟いた。


「上の命令なんだ…どうしようもないだろう…。」


「じゃあ、上の人間に、自分の息子を殺せと言われてもアンタは黙って殺すの!?」


「いや…そうか…そうだな、もしも俺の息子が同じように殺されたら…そんな事も考えられなかったんだな…俺は。」


ゴードルは、ダンデリルメイスを構えるラビの方を見ると観念したのか、力無く言い出した。


「…償いになるか分からんが、もう殺すなら早く殺してくれ…。」


その言葉に、我慢して聞いていたシルカが、ツカツカとゴードルに歩み寄って力強く頰を張った。


パシーン!!…と言う音が、煉瓦造りの家に響き渡る。


「貴方は、今のラビの気持ちと同じモノを、自分の息子にも味あわせるつもりなの!?

貴方のした事は、決して許される事じゃない!!

…でも、何も知らない息子まで修羅に落とすなんて、私は許さない!!」


そのシルカの言葉に、これ以上やったらダメだ、と理解したラビは、ダンデリルメイスを地面に落とし、蹲って泣いてしまった。


リューは、ゴードルの肩に手を置くと耳元で言った。


「…これがお前がやった事だ、幸せになったのは誰だ?皇太子か?それ以外は、お前を含む全員が不幸じゃないか。」


リューの言葉を聞いたゴードルは、涙を流しながら言った。


「本当に…!!すみませんでした…!!」


ゴードルを張った手をさすっているシルカにリューが言った。


「僕は、シルカを好きになって本当に良かった、さっきのシルカの言葉に、僕は胸が震えたよ。」


「それは、リューが私を成長させてくれたからだよ、私こそリューを好きになって良かったと思ってるよ。」


そう言い合った二人が、ラビの元へ行って背中をさすっていると、後ろで黙って聞いていたライドンが口を開いた。


「なぁゴードルよぉ!急に人手が無くなっちまったからなぁ、お前さんへの罰は、テイカーが拡張していた採鉄場の引き継ぎって事で良いかぁ!?

テイカーなら一週間くらいで終わらせてただろうが、ヒューマンの手だと、死ぬほど辛い仕事が半年近く続くだろうし、死んじまうかも知れないけどなぁ!?」


「…それが償いになるのでしたら…是非やらさせて貰います!!」


ライドンは、テイカーの事を思い出し、奥歯を噛み締めながらも、ラビの意見を尊重して頷いたのだった。


…。


翌日、昨日の雨が嘘かの様に晴れ渡った空の下で、テイカーの葬儀が執り行われた。

ヴォライアンの町の端の方にある大きな黄鉄製の釜は、亡くなった人々を火葬をする為の物で、そこに全ての町人が集まっていた。


「テイカーは、ドワーフの一員だったからなぁ、ドワーフ式で神の元へ送りたいんだぁ。」


ライドンが、焼けて煙になっていくテイカーを見送りながら言った。

ラビも、噴火口から立ち昇る煙に手を合わせながらテイカーの冥福を祈っている。

リューは、テイカーを見送りながら一つ思いを呟いた。


「…ヴォルクか、いつか思いっきりぶん殴ってやらないと気が済まないな。」


それをラビがユニークスキル[地底神ハバキの地祇]で感じとったのか、リューの元へ走って来て言った。


「あたしも行く!リューちん達、エルノーラを一周するんでしょ?いつかセントラルに行くんだったら、あたしが、ヴォルクの顔面を原型が無くなるまでブン殴ってやるんだ〜!!」


リューが、シルカとハスキーの顔を見ると、にこやかに頷いている。


「よしっ!じゃあラビも行くかっ!!」


「うん〜!!」


こうしてラビが旅の仲間に加わったのだった。

この章は、重い話が多いですね。

窮屈かもしれませんが、引き続きよろしくお願いします。


ラビのメイスの素材[ダンデリル]の由来。


純度の高い南方黄鉄と、未知の鉱石ミスリルを、ドワーフの技術で合金した新素材。

比重が非常に重く、金と同等の重さを持ち、南方黄鉄の粘りと、ミスリルの強度を持ち合わせた物です。

ミスリルの効果か、錆びる事が無く、剣に打っても斬れ味が鈍らないとドワーフ達の間では話題になっているが、まだ世の中には出回っていない代物である。

その黄色と金色を混ぜた様な色合いが、タンポポの花の色のようであり、タンポポの英名ダンデライオンと、ミスリルを掛け合わせた所からダンデリルとなりました。

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