南方黄鉄の坑道内の町ヴォライアン
「おいしょっとぉ〜!!」
ラビの先導で山道を歩いていると、南方黄鉄の坑道の少し手前で、リュー達は大型のフェノールボアとエンカウントした。
先頭を歩くラビに、岩の影から突如として現れ、いきなり体当たりしてきたフェノールボアを、ラビは笑顔で受け止めると、ズリズリと少し後ろに押されながら、背後に背負い投げの様に投げ飛ばした。
ダァーーン!!…と、背中から落ちたフェノールボアは、苦しそうにバタバタと足をバタつかせて踠いている。
「うぉ!?なんだ!?…このフェノールボアは、多分7〜800kgはありそうなのに!ラビは凄いパワーがあるんだね!!」
リューがラビに賞賛を送ると、えへへ!と、照れながらフェノールボアの首筋に強烈な蹴りを入れ、首をへし折ってトドメを刺した。
「おしまいっ!」
リューとシルカは、パチパチと拍手をすると、ラビも両手を上げて答えた。
「こんだけ大きかったら、テイカーのご飯に丁度良いかも〜!」
「テイカー?」
リューが首を横に傾けて聞くと、ラビはテイカーの事を簡単にしてくれた。
「うん、ウチの従業員の事だよ〜!とっても大きくて、大飯食らいなんだ〜!」
ラビがそう言うと、フェノールボアの片足を掴み、苦もなく引きずりながら南方黄鉄の坑道へと入って行ったので、リュー達もそれに続いて坑道へと足を踏み入れた。
坑道の中は、何処からともなくハンマーで金属を打つ様な音が聞こえてくる。
壁や天井は、全て黄土色をした光沢のある鉱石で出来ており、照明の松明の火がユラユラと、坑道内に反射していた。
「わぁ…これが南方黄鉄ですか?」
シルカがラビに聞いてみると、ラビは歩きつつ、首だけ振り返りながら説明をしてくれた。
「う〜ん、南方黄鉄には違いないんだけどね〜、地表近くの物は純度が低くて使えないんだよ〜。
ここの最奥にある採掘場で取り出した良質な南方黄鉄を、その上にある加工場で色々な物に作り変えて、売って生活してるんだよ〜。」
ラビの説明を聞きながら坑道内の下り坂を少し進むと、ラビと同じくらいの身長の髭面のドワーフがヒョッコリと出て来て、ラビに話し掛けた。
「おぉー、ラビ!!戻ったか!!そのフェノールボアはどうしたんだぁ!?」
「じ〜ちゃん、ただいま〜!たった今、表で仕留めて来たんだ〜!テイカーのご飯に丁度良いかと思って〜!」
「そうかそうかぁ!…ん?」
そのドワーフがリュー達に気付いて、ラビの耳元で何か話している。
するとラビが説明してくれたのだろうか?すぐに笑顔になってリュー達に話し掛けて来た。
「山の吊り橋が落ちちまったって?…いやー、そいつは悪い事をしたなぁ!
儂は、ここの部族長をしているドワーフで[ライドン]と言う者だ!ラビのお爺ちゃんでもあるぞぉ!」
ライドンは、肩に大きなハンマーを掛けながら自己紹介をしてくれた。
「いや、僕が落ちそうになったのは、多分運が悪かっただけなんで気にしないで良いですよ。
僕は海上流視、旅の釣り人で、エルノーラの南部に出るのに、こちらを通らせていただいております!」
「その妻、シルカ=セラ=ミカミです。
お孫さんのラビには、色々と助けていただきました、本当にありがとうございます!」
「わふっ!(ハスキーだよ!)」
ライドンは、笑顔でヒゲを撫で下ろしながら頷くと、左右を見渡し、急に真顔になってリューに話し掛けた。
「…ラビのユニークスキルの事は聞いたんだろぉ?…悪いが、この坑道の中では、それは他言無用で頼むぞぉ。」
リューも真面目な顔で頷くと、ライドンは再び笑顔になってリューの背中をバンバンと叩いた。
「ようし!ラビは、そのフェノールボアを従業員調理室へ運んでこい!儂は丁度昼飯時だし、此奴らにドワーフ料理を振舞ってやるぞぉ!フェノールボアを置いたら[フェイネッツ亭]に集合だぁ!」
「あ〜い!」
そう言うと、ラビは下り坂を先に降りて行ってしまった。
ライドンの先導でリュー達も坂を下りて行くと、段々と明るくなっていき、坑道が拓けたと思った所は、町のようになっていた。
「え?坑道の中に町があるんですか!?」
リューが上を見てみると、そこには雲一つない青空が円状に広がっていた。
「初めて此処にくるヤツは大抵ビックリするんだが、ここは火山の跡地でなぁ、旧噴火口のあった場所に造られた町[ヴォライアン]だ!
儂らドワーフは、その火山活動で精製された南方黄鉄を加工する為に此処に移り住んできたんだぁ!」
辺りにはハンマーを叩きつける金属音と、威勢のいいドワーフ達の声が響き渡っていた。
リューとシルカが、呆気にとられていると、ライドンが手を振りながら言う。
「ほら!こっちだぁ!」
ライドンの案内について行くと、煉瓦造りの趣きのある食堂があり、ドアの上に分厚い木の看板に[ドワーフ料理フェイネッツ亭]と書いてある。
ライドンが、バーン!とドアを威勢の良く開けて入って行くと、リュー達も慌てて中へと入って行ったのだった。
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