ただ強いだけでは心の芯に響かない
「ほら!!取り敢えず先に焼きあがった分をおまえらで食っちまいなっ!!」
グランさんが、焼きあがったパウスベスティアの肉をリューとグリフの座るテーブルの真ん中にドン!!…と、置いていった。
シルカとハスキーは、迷子の女の子のお母さんを探しに出掛けているので、まさかのグリフと二人きりである。
「いっただっきまーす!!ほら、グリフ、熱いうちに食おうぜ?シルカ達は帰って来てから食うから気にしないでいいぞ?」
グリフは、パウスベスティアの肉をジーっと見つめてから、視線をリューの方に移して話しをし出した。
「リューとシルカは、明日あたりにはまた旅に出ちまうんだろ?
…あのな、本音を言うと、俺はリュー達の旅に着いて行きたいんだよ。
リューの言うように、こんな自分を変えられるなら変えてーんだ!
それに、この町じゃ肩身が狭くなっちまったし、俺を憎んでる奴も沢山いるだろうし…な。」
グリフは真剣な顔でリューに話す。
「…だが、俺には着いていく資格がまだねぇ。
グランに怪我させちまったから仕事の手伝いもしてやりたいし、フェノールの奴らにも兵を差し向けた事を謝ってないしな。
取り敢えずケジメをシッカリつけたいと思う。」
リューは、パウスベスティアの肉を口に頬張りながら、只々グリフの言う事を聞いていた。
ゴクン!と、肉を飲み込むとリューは口を開いた。
「たった一日で、カッコよくなったなグリフ。
今のお前なら、仲良くなれる気がするな!
…だがしかし!一緒に旅をするのは断る!!」
リューはバッサリと一刀両断し、そのまま続けて言った。
「グリフにはまだ言ってなかったけど、僕はこの世界のヒューマンじゃないんだ。」
それを聞いて、グリフは意味がわからなそうな顔をして言う。
「は?それはどう言う事なんだ?」
「僕は海神リヴァイアの気紛れでこのリジュワルドに連れて来られた、全く違う世界のヒューマンだって事だよ。
僕等の旅は、元の世界とこちらを行き来する方法を探すのと、この世界を釣り歩くっていう釣り人の夢を求める旅であり、シルカとの新婚旅行でもある。」
「そうだったのか。」
グリフは少し思い返して、再びリューに言う。
「確かにリューの格闘術は、俺の知る格闘とは全く違うモノだ、リューが元々いた世界の戦い方だって事だな。」
「そうだな、アレは空手って言う格闘の技だよ。」
「カラテ…。」
グリフが、リューと戦った時の事を思い出していると、リューが恥ずかしそうに言い出した。
「…僕にもな、ただ強ければ一番カッコいいって思ってた若い時があったんだよ。
シルカには恥ずかしいから誤魔化したけど、シルカのユニークスキルで、嘘だとバレてるだろうけどね。」
グリフは、リューを真っ直ぐ見て黙って聞いている。
「まぁ、その時に、とある友人の優しい一言がさ、強さを求める事よりも、遥かに僕の心に響いたんだ。
そこから僕は優しいってなんだろうな?…って考える様になった。
僕の根底にあった部分は、グリフと、そう変わらないんだよ。
グリフだって、今ここから考えて成長していけばいい、僕だってまだまだ成長していく。」
「なるほどな…、じゃあリュー、俺はお前をキッカケとして優しいって事を探してみるよ。
取り敢えず、グランに怪我をさせた借りを返す所からだな!
全部終わったら、俺は俺で旅に出てみるとするわ。」
リューはニッカリと笑うと、パウスベスティアの肉をグリフに取り分けてあげる。
「ほら、熱いうちに食いなよ!美味しく食べてやらないと、パウスベスティアも可哀想だろ?
あ、あと、強さだのなんだのって所は、恥ずかしい黒歴史だから、シルカには内緒でお願いしゃっす!!」
グリフは、パウスベスティアの肉を口に頬張ると、ニヤァ…と笑いながら言った。
「フッフッフ、昨日までの俺なら絶対言うだろうけどよ、あぁ…言わねぇから安心しろよ。」
横でそれを聞いていたグランさんがニヤリと笑いながら続ける。
「俺も言わない方が良いか?」
リューは机に頭を突っ伏して叫んだ!
「お願いしゃーっす!」
カラーン!
と、その時タイミングよくシルカとハスキーが帰って来たのであった。
僕も格闘技とかは好物ですが、本当に強い人程、優しかったりします。
そんな僕のイメージが、リューになってるんでしょうね笑




