修羅場inタックル便利
数回タックル便利と往復して、皆木さんに貰った調味料をリューが地底湖側へ運び込むと、シルカが言った。
「どうしたのそれ?」
「うーん、僕の世界の調味料なんだけど、皆木さんが、買い過ぎちゃったから貰ってって言われちゃってさ。」
「……へー、そんなに?
…うん、ちょっと私もタックル便利に行ってお礼をして来ようかしら…。」
なんかちょっと苦い顔したシルカが、タックル便利へと行ったので、皆木さんから貰った調味料をマジックタックルボックスに詰め込んだ。
買ったばっかりの初心者セットを組んで、ミミズを付けていると、シルカが戻って来た。
「ちょっと、リュー、もう一回タックル便利に来てくれる?」
「ん?どうしたの?…まぁ、いいけど。」
シルカに手を引かれてタックル便利に行ってみると、皆木さんが俯いていて、いつもの元気がない。
「…あの…海上さん…、シルカさんと結婚したって…本当ですか?」
皆木さんが、俯いたまま言う。
「う、うん、昨日ね。
そう言えば、さっき言ってなかったね。」
そうリューが言うと、少し沈黙が流れた。
そして、堰が切れたように皆木さんが大声で言い出した。
「なんで!?私だって!…私だって!!海上さんの事が大好きなのに!なんで!なんで…、私の知らない所で…そんな…。」
と、皆木さんが泣き出してしまった。
「え…?」
と、リューが戸惑っていると、シルカが言う。
「好きでもない人に、こんなに尽くしてくれる人はいないよ?」
それを聞いたリューは、なんて事をしてしまったんだろうと思った。
これじゃ、皆木さんの好意に漬け込んで、美味しい思いをさせて貰っただけだ…。
…本当に最低じゃないか。
「シルカ、今から僕が何をしても、僕の事を信用してくれる?」
と、シルカに聞くと、シルカはコクリと頷いた。
「皆木さん。」
リューは、皆木さんの元へ歩いて行って、彼女の手を握りしめて言う。
「本当にありがとう。
皆木さんの気持ちは本当に嬉しいよ。
皆木さんの事は本当に大好きだし、いつも僕と釣りに行ったりしてくれたり、馬鹿話してくれたりしてくれたり、困っている僕に手を差し伸べてくれたり、とても感謝しているんだ。」
皆木さんが顔を上げて、僕の事を見つめる。
シルカはただ黙って、その様子を見ている。
「でも、ゴメン。
僕は、シルカの事を本当に愛しているんだ。
あの笑顔を、あの釣りの姿を、あの優しさを、全て愛している。
だから、皆木さんの気持ちには答えられない、ごめんなさい。」
その時、歩いてこちらに来たシルカも、皆木さんの手を僕の手の上から握り締めて言った。
「皆木さん、ごめんなさい。
私は、初めて此処に来た時から貴女の気持ちには気付いていたの。
リューの姿を目で追ってる貴女を見た時、リューの事が好きなんだろうな…って。
でも、私の中でもリューはとても大きな存在になっちゃったんだ…。」
涙で潤んだ皆木さんは、シルカを見て、コクン、と頷く。
「だから…、ごめんなさい。
リューの事を、貴女の為に諦めてあげるなんて事は私には出来ない。
…でも、私だって皆木さんの事は大好きなんだよ?
私がした無礼な事を優しい笑顔で許してくれたり、私の為に一生懸命釣り道具を選んでくれた事だって、私、忘れたりしてない!」
皆木さんが、コクリ、コクリと頷く。
「…だから…ごめんなさい。」
「皆木さん…ごめんなさい。」
そう二人で言うと、皆木さんは暫く俯いたあと、涙でグシャグシャの顔のまま、今出来る精一杯の笑顔を作って言う。
「あーあ、フラれちゃいました!
…でも、同じ男の事を好きな分かり合えるお友達も出来たし!…まぁ、…いっかな。」
そういうと、皆木さんは、シルカの肩に手を置いて言う。
「海上さんを裏切ったりしたら、お二人の友達の私が許しませんからねぇ?」
「はい…!」
と、シルカが言う。
「海上さんもですよぉ?」
「はい!」
と、リューが言う。
そして、店の奥から店長さんが出てきて言う。
「うん…すっげぇ重い話ししてないで仕事しろよ…。」
三人は顔を見合わせて言う。
「「「ごめんなさい!」」」
その日から、皆木さんはシルカのお友達になり、シルカも公認のリューの女友達になったのだった。
いつブッこむの?今でしょ!
いやいや、皆木さんも優しくて良かった!




