海神の恩寵×タックル便利の可能性
カランカラーン!
僕がいつも行っているタックル便利は、いつもと変わらない扉のベルの音が辺りに鳴り響いた。
そして、いつもと変わらない軽い手動のドアに何か落ち着いた気持ちになる。
「いらっしゃいませー!
あ、海上さん、どーもでーすぅ!」
いつもの店員さんが、顔なじみである僕に元気よく挨拶してくれた。
今日の店員さんは、皆木さん。
高校を卒業してすぐにタックル便利に就職した、釣りが何よりも大好きな、元気いっぱいの釣りガールで、僕とも数回釣りに行った事のある仲である。
「皆木さん、こんちはーっす!
ううう、知ってる顔見ると癒される…。」
「な、なんで泣きそうになってるんですかぁ!?」
「いや、諸事情でね…異世界に流されちゃってさ、この世界とはこのタックル便利だけ繋がってるんだよね…とか言っても信用できないだろうけどね。」
皆木さんは、???を頭に浮かべた表情をしているが、頭を切り替えたのか。
「よくわかりませんが、今日は、どんな商品をお探しですかぁ?」
と、問いかけてきた。
「今日は、アウトドア用品を探しにきたんだけど、屋外で魚を捌いたりする道具ってあるかな?
普通ならアウトドア用品店とか、ディスカウントストアに探しに行くんだけど、事情があって、ここにしかこれないんだよね。」
皆木さんは、再び?を頭上にいっぱい飛び出させながら、何か思い付いた顔をした。
「あ、今日の開店直後に、アウトドア用の包丁セットが入荷しましたよぉ!
刺身にする用の柳刃包丁、魚を捌く用の出刃包丁、野菜切る為の菜切り包丁、ちょっと使えるペティナイフ、オールマイティな牛刀、更には包丁を研ぐ棒と、まな板がセットになっていて、まな板がケースの上にセット出来るようになっているんですよぉ!」
え、何そのタイミング…。
…とかリューは思ったものの、[海神の恩寵(微弱)]の事を思い出し、ああ、それでかと納得した。
「ホントに!?
うん、でも…お高いんでしょう?」
…と、僕はお決まりのセリフを言った。
実際に、包丁セットで、それだけセットになっていればかなり良い値段がするはずで、金銭が限られてる現在、あまりにも高いと購入できないのだ。
「ふふふ、聞いたらビックリしますよ?
全部コミコミ、税コミコミで980円!
980円でのご提供です!
今なら皆木ちゃんのスマイルも付いてこのお値段ですぅ!」
皆木さんは、某TVショッピング調のプレゼンをしてきた。
「やっす!」
…いやいや、いくらなんでも、あまりにも安すぎて、逆に心配になってきた。
「え?…何それ怖い、呪いでもかかってんの?」
装備したら手から離れないとか、魚を切る度に自分にもダメージがあるとか…と、リューはゲーム知識が頭に浮かんで、若干引いたような顔をしたが、皆木さんはほっぺを膨らましながら言った。
「ブー、ほぼほぼ新品に近いですよぉ?
通販サイトの海女村とかだと新品でも1500円くらいの商品ですからね、中古なら、このくらいの値段で適正なんですよぉ?」
なんか…最近はネットとかだと異常に安い商品ってあるよね…?
原価幾らだよ?っていつも思ってる。
…いや、今のこの状態だと非常に助かるけど。
「お、おう、すまんね!とりあえず買った!」
「ありがとうございますっ!」
皆木さんは元気にお辞儀した。
「あ、あと、なんかアウトドアに使えそうな物ってないかな?」
…と僕が聞くと。
「そう言えば、今日の開店直後に、寝袋が入荷しましたよっ!」
…[海神の恩寵(微弱)]…(微弱)なのに恐ろしい子っ!
まぁ、動揺しつつも、僕は、とりあえずテンプレを言った。
「で、でもお高いんで…しょう?」
「聞いて驚け、見て騒げ!
なんとなんとの1980円未使用新古品でーす!」
…海神さん、世界の平均的な運っていくつなのよ?
と、問いたい、小一時間問い詰めたい。
「何それ怖い、犬の寝床の下にでも敷かれてたの?」
皆木さんもテンプレ通り、またほっぺをフグのようにプクーっと膨らませ。
「ブー、新古品って言ってるじゃないですかぁ。
通販サイトの海女村では新品でも(以下略)」
季節的には、もう秋なので、夜は冷え込むだろうし、寝袋、しかも未使用品ならもちろん買いだね!
「か、買ったぁー!」
「毎度ありがとうございますぅ!」
皆木さんは満面の笑顔で元気よくお辞儀した。
海女村の名前の由来
ネットショッピングで最も有名であろう。
ア○ゾンから命名、釣り関連で何か良い名前がないかな?
と思っていたら、たまたま思いついただけです、すみません笑
多分もう作中には出てこないでしょう笑