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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第二章 フェノール異世界慕情編
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再会を誓う蛸の天麩羅

「いやー、めでたい!めでたい!

リューも飲んでっかぁ!?」


と、酔っ払ったオッチャンが絡んでくるのだが、実は全く酒が飲めないリューは、先程から酒を注ぎにくる町の人達にお酒を断り謝っていた。

かれこれ謝り続ける事142人目である。


しかし、流れ者である自分に、こんなにも手厚く接してくれている事をリューはとても感動していた。


ふと、横を見るとお酒を飲まされ過ぎてベロベロのシルカが、友達のミリィに絡みまくっている。


「…シルカ、程々にな。」


「らいじょーぶ!わらしはまだらいじょぶれすぅ!」


…と、全く大丈夫じゃない…。


その内に、うつらうつらと舟を漕ぎだして来たので、シルカを先に家まで送る事にした。


「よいしょっと!」


シルカをお姫様抱っこで抱え上げると、周りからヒューヒュー!とチヤホヤされる。

酒を飲みながら町の人達と話すシリウスと、ひたすらに飯に食らいつくハスキーにシルカを家まで連れて行く事を告げ、お姫様抱っこのままシルカを連れて行った。


シルカの部屋に着いたリューが、シルカをベッドに寝かせて、未だドンチャン騒ぎの広場に戻ろうとすると、シルカがガバッと抱きついてきて言う。


「リュー、行っちゃやだよぅ…。」


と、可愛く駄々を捏ね始めた。

少しシルカの横に座って、大丈夫だよ?と、頭を撫でてあげると、その内、スー、スーと、寝息を立て始めた。


シルカが寝たのを見届けると、リューは少し考え込んで、よしっ!と、シルカの家の厨房に立った。


「みんなの恩に報いるには…、僕にはこれしかないんだよなぁ。」


リューはギンッと、目に力を入れると、パンッ!と自分の顔を叩いて気合を入れた。


シリウスがとっておいてくれたであろうロッツポルポの足を、塩揉みして(ヌメ)りをとるリュー。


タコ足の皮を切り取り、包丁で一口大の大きさにザックリと切り分けていく。


切り終えたタコ足を、シルカの家にあったボウルを全て使って、醤油、砂糖、市場で買った日本酒に近いお酒を混ぜ合わせた物に10分から15分ほど漬け込む。


その間に菜種油を熱しつつ、市場で買った小麦粉と卵をフェノールの町から湧き出している冷たい水でザックリと溶いて天麩羅生地を作る。


しっかりと小麦粉を溶いてしまったり、水の温度が高かったすると、小麦粉の成分であるグルテンが立ってしまい、フリッターに近いモチモチとした食感になってしまうので注意だ。


準備ができたら、漬け込んでおいたタコ足の水分を落とし、軽く小麦粉をまぶす。


そうしたら先程作って置いた天麩羅生地にタコ足を潜らせ、高温に熱した菜種油に滑り込ませる!


菜種油が高温であると、冷たい天麩羅生地との反発作用で天麩羅の衣に華が咲く、これがサクサクとした軽い食感を生み出して、天麩羅をより美味しくする。

天麩羅生地に氷水を使うと良いのはこの為だ。


一口大に切ったタコ足は、すぐに火が通るので、バーベキューセットに入っているキッチンペーパーを使って油を切る。


「よし!できたっ!」


リューは持ちきれるだけの皿に蛸の天麩羅を乗せ、まだ騒いでいるであろう滝の広場へと向かう。


「リュー君、遅かったじゃないか?シルカは寝たかね?

ん?その皿…、それは一体何だい…?」


シリウスが、見た事がない物を見て不思議そうな顔をしている。


「明日この町を出て行ってしまう僕が、この結婚式を開いてくれたみんなに恩返しが出来るとしたら、美味しい料理を食べさせてあげる事くらいしか思いつかなかったんです。

これは、そこで丸焼きになっているロッツポルポの足を使って作った、天麩羅という僕の国の揚げ物です。

下味はついているので、この塩をチョンと付けて食べてみて下さい。」


他の町人のみんなも、見た事がない食べ物に、ザワザワと集まってきた。

シリウスが代表して、とりあえず一口目を食べて見る。


「この塩をチョンと付けて…?

そのまま食べればいいのかね?」


「はい!」


「うむ、ではいただいてみるよ!」


サクゥッ!


誰もがシリウスの様子を静かに見守っていた滝の広場に、シリウスが噛んだ天麩羅の衣の弾ける音がこだまする。


「うっ…おおおおおおお!?

なんだこの食感は!サクっと口の中で弾けて、このロッツポルポの弾力のある食感と調和しているっ!!

ロッツポルポにつけられた素朴な下味と、このサクサクとした部分のまろやかな味わいが、またなんとも言えない味わいを醸し出しているぞっ!」


そのシリウスのコメントに、町の人みんながゴクリ…、と喉を鳴らし、次の瞬間にワァァァ!と蛸の天麩羅が乗ってる皿へと集結した!


リューは、持ちきれなくて置いてきた分を急いで家に取りに行く。


戻って来ると、先程の皿はもう空になっていて、みんな美味い!美味い!と食べてくれている。


「昨日店に来てくれたお兄さん!

これの作り方を教えとくれよ!!」


と、フェノールに来てすぐに行った大衆食堂のおばちゃんが擦り寄ってくる!

リューは追加分の蛸の天麩羅をテーブルの置くと、レクチャーしてあげた。


粗方みんなが蛸の天麩羅を食べ終わった後に、リューは滝の前に立って大声で言う。


「今日は!僕とシルカの為に、こんな結婚式を開いていただきまして、本当にありがとうございました!

シルカはともかく、流れ者の僕にまで暖かく接してくれた皆様の深い優しさを、僕は一生忘れません!

…このフェノールは、僕の第二の故郷です!

僕等の旅が終わったら…、また!帰って来ても良いですか!?」


リューは、みんなの優しさが心に痛くて、涙目にしながらそう言う。


あったりまえじゃねーか!


うん!いつでも帰ってきなよ!


シルカとまた戻ってこいよー!


おう!また、この天麩羅ってやつ食わせてくれよー!


と、町の人々はリューに向かって口々に言う。

涙の堰が切れて豪快に泣いているリューを、シリウスとオッチャンが抱きしめていう。


「リュー君、君は本当に凄い奴だな!」


「リュー、いつでも帰ってこい!また勝負しようぜ!」


二人も涙ぐみながら、リューとの再会を約束した。



一年程経った後にエルノーラ大陸全土を、フェノールに美食[テンプーラー]有り。という噂話が蔓延したとか。

優しさって良いなあと思います。

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