二人の想いと明ける夜の帳
コンコン、と私が扉をノックする音が響く。
「…リュー?起きてる?」
返事がないけど大丈夫だよね?
…と、リュー達が泊まっている部屋の扉を開けると、こちらを見て尻尾を振っているハスキーがいて、泣き疲れて眠るリューの姿があった。
「シーッ…。」
…と、ハスキーに向かって口の上に人差し指をかざすポーズをして、部屋の中程にある、ベッドの窓側へと静かに歩いていく。
ふと、窓の外を見てみると、雨の少ないフェノールの空は、今日も月と星空が綺麗。
いつもと変わらない景色の筈なのに、なんだか胸が締め付けられる気がする。
ベッドの淵に座って見たリューの顔は、私より年上なのに、疲れて寝てしまった子供のように安らかな寝顔でとても可愛らしい。
何となくリューの髪に触れてみると、指の間を通る少し太いリューの髪に、何か満たされた気持ちになる。
「…リュー、今日はありがとうね。」
小声で、耳元で囁いてみる。
疲れ果てて寝ているであろうリューは、何も反応しない。
私は、何となくリューの横に寝そべり、この二日間の事を思い出している。
そう、まだリューと出逢って二日しか経っていないのだ。
けれど、こんなにも惹かれているのは何故だろう?
リューが作ってくれた異世界の魚料理を食べている私を見て、ニコッて笑った時とか。
私の作ったファストブレッドを美味しそう食べてる時の顔とか。
私に釣竿を買ってあげようと一生懸命頑張っている姿とか。
私がキャストを決めた時にしていたキラキラした顔とか。
ヘイルボルグを釣り上げて、リューに抱きついちゃった時に、優しく頭を撫でてくれた事とか。
起きたら私がリューの肩に寄りかかってて、穏やかな顔をしていた時とか。
私に抱きついて泣いて、弱い所を見せてくれた事とか。
私の為に絶対に敵わない相手にも勝っちゃうとか。
好きになってしまった理由を考え出したら止まらない。
二日間の間に、リューはどれだけのモノを私にくれただろう?
…私はどれだけのモノをリューにあげれるだろう?
崖の下でユニークスキルの話をした時に、私の頭をよぎった事を思い出して、リューの顔に近付いてみる。
…。
ふと、眩しい光にリューは目を覚ます。
朝日が入り込んだ部屋は、こちらの世界も向こうの世界も変わらず、一日の始まりを告げる。
変わった事と言えば、僕の左手側にハスキーが寝ていて、モフモフして気持ちが良い。
そして右手側にシルカが寝ていて、その細くて柔らかい髪が僕の腕に…。
え…シルカ?
…ええっ!?
ビクン!と、リューがビックリして少し跳ねる。
それに反応して、シルカが目を覚ます。
「あ…、私…寝ちゃったんだね?
リュー、おはよう。」
「お、おはようございます。」
この現状と、昨日の醜態を思い出したリューの顔は真っ赤に染まった。
「あの…、シルカ…、昨日はゴメンな?
あんなに大騒ぎしちゃって、みんなの注目を浴びちゃったでしょ?」
「うん、大丈夫だよ…。
だって、リューが泣いちゃったのは、私の為だもん。」
「…うん。」
「私はリューと一緒にいれるのが幸せだから。」
「…うん。」
リューは、寝転がったまま、シルカをギュっと抱きしめる。
「ありがとう、僕も…、同じ気持ちだよ。」
シルカの水色の髪が、朝日を浴びて、橙色混じりの銀色に光っている。
そして、とても不粋なウインドウが勝手に開く。
ユニークスキル[テミスティアの子の剣]NEW!!
シルカの片翼に与えられるユニークスキル。
シルカを守る時のみ、全ステータスに[100]のボーナスポイントが付与される。
ユニークスキル[ブーローダビンスの子の眼]NEW!!
シリウスに認められた証のユニークスキル。
相手のレベル、ステータスを見透す。
本家のブーローダビンスの眼より少し性能が劣る。
スキル[正義女神のジャスティス]NEW!!
シルカより分け与えられたスキルで、シルカのユニークスキル[正義女神のジャッジメント]の下位互換。
嘘を見抜く能力はないが、正義の為に力を行使すると全ステータスに[50]のボーナスポイントが付与される。
シルカを抱きしめながら、リューは言う。
「シルカ…、なんか僕のスキルがとんでもない事になってるんだけど…。」
「うん…。」
何故か、抱きしめているシルカの鼓動が高鳴っているのを感じる。
「シルカと、シリウスさんの守護神?…その力がユニークスキル化されてるんだ、それは多分二人の信頼を得たからだと分かる。」
「うん…。」
「その他に、シルカのユニークスキル[正義女神のジャッジメント]に由来したスキルが発現してるんだけど…、それは一体何故…?」
「し、知らないっ!」
と、シルカは顔を隠してしまった。
えーと、つまり僕のユニークスキル[スキル奪取]は、相手を経口摂取すると発動してスキル化してくれる訳だが。
んー、なんだろう?
シルカが何かをしたのかな…?
…うん、なんだろうね?
男だから、恋する女性の心を描写するのって難しいですね。




