滝の前の涙の告白
「何故だ!!」
一番最初にレフェリーに突っかかったのは、シリウスだった。
「本気を出して負けた自分に情けの勝利は要らない!」
と、レフェリーのオッチャンに詰め寄る。
「いや…、シリウスのダンナ、ほら天井に…。」
天井にはリューの蹴り込んだ跡が出来ていた。
この競技のルールでは、壁に追い込まれたら負けというのがあるが、天井も、その壁の一部として見ているのだ。
リューは、その話しを聞いて、トボトボと力なく歩いて浴場を出て行った。
「くっ!!」
シリウスは、その姿を悔しそうに見送る。
「仕方ないですよ、ルールはルールですからね…。」
オッチャンも、自分に勝ったリューを応援していたのだろう、肩を落としながら言う。
…その時、観客の爺さんと、子供達が反論を言い出した。
「ルール説明の時に天井の事は言及してなかったぞい?」
「うんうん!僕も聞いてないよー?」
「説明不足だったと思うぞ?」
シリウスも、ハッ!と気付く。
「確かにそうだった!」
…と、リューを追いかけ始めた。
オッチャンは、観客に、俺が悪いのかな?…と聞いて、盛大に、そうだな!と言われて凹みまくったという。
…。
リューが、男性用の浴場からフラリと出ると、水浴みを終えて、あの滝の所にある石のフェンスに腰掛けて待っていたであろうシルカとハスキーが、こちらを見て駆け寄って来た。
リューの全てが終わった様な顔に、シルカが聞いた。
「リュー?どうしたの?」
その言葉を聞き、リューは町の大通りにもかかわらず、シルカに抱きつき大声で泣いた。
「ゴメっ、ゴメン…、シルカぁ…うっ、うわぁぁぁぁん!」
何故リューが泣いているかわからないシルカだったが、私に弱い所を見せてくれるんだなぁ…。
と思って、リューの事が堪らなく愛おしくなり、抱き返して頭を撫でながら言った。
「リュー、大丈夫だよ?私はここにいるから大丈夫。」
そのシルカの言葉が嬉しくて、でももう聞けないかもしれないと思うと余計に悲しくなって、リューは泣き続けた。
リューを追いかけて来て、その様子を見ていたシリウスは、その光景を見て、リューならどんな事があっても身を呈して、シルカを守り抜いてくれるだろうと思った。
…。
「シルカ、お前は、リュー君と旅がしたいか?」
突然現れたお父さんが、いきなり私に聞いてきた。
「うん!リューは、私の知らない景色を見せてくれるから…!」
そうか、と、お父さんが言うと、水浴場であった事の顛末を詳しく説明してくれた。
「そうだったの…。
リューは私の為にお父さんと勝負して…。」
「あぁ、絶対に覆せない様な状況から、シルカの名前を叫びながら覆し、私を地に倒したのだ。
だが、ルール上で、負けだと言う事になってしまってな…。」
「そう…なんだ…。」
ドクン、と、私の胸が高鳴った。
こんなにも私の事を思ってくれている、腕の中のリューの事を考えると、胸が熱くなる…。
ずっと、ずっと、リューと一緒にいたいよ。
「お父さん。」
「なんだ?」
「私、リューと旅に出るよ!リューの事を愛してるから!」
それを聞いたリューが、涙でグシャグシャになった顔で言う。
「僕も!僕だって!シルカの事が大好きなんだよぉぉぉ!ずっと一緒にっ!居たいんだっ!」
「…うん、ありがとう、私もリューと一緒が良いよ。」
シルカも、頰に涙が伝う。
シリウスはその二人を見て、微笑みながら言う。
「そうか、幸せになるんだぞ、私の可愛い娘と息子よ…。」
そう言って二人を抱きしめたのだった。




