異世界初の町フェノール
崖から歩き出すと、小麦畑のノスタルジックな風景が広がっていて、そこからフェノールの町までは歩いて10分程の距離だっただろうか?
シルカに案内されるがまま、辿り着いたフェノールの町は、思った以上に大きな町で、中世的で、とても美しい街並みをしていた。
門番に顔パスのシルカの横を一緒に歩いて行くと、あぁ!例の磯から出られなかった人か!とすんなり門を通してもらえた。
…シルカ、僕の事を何て町の人に説明してたんだろうか…。
少し遠くに見える小高い丘には、崩れ掛けた廃城の様なものがあるが、使われていないお城なんだろうか?
ヨーロッパの古都の様な情景にリューのテンションが上がっていく。
「うわぁー!凄い綺麗な街並みだね!あ!町の中に滝があるぞ!」
リューは駆け出して、その横をハスキーも併走して滝を見にいく。
シルカは微笑みながら、ゆっくり後を付いて来た。
「滝の飛沫が気持ちいいなぁ…。
…お!何か小魚がいるぞ!」
…と、滝の周りに張り巡らせてある石のフェンスに身を乗り出しながら、リューとハスキーは子供の様にはしゃいでいる。
「このフェノールの町は雨は少ないけど、北にあるフェノール山地と、それに連なるガイダラス山脈からの水が湧き出る町なんだよ!
リューがいた磯にある滝も、多分地下水脈を通って来た水だと思うよ!」
「あぁー!だからあんな所に滝があったのか!
本当、山々に感謝だなぁ!」
リューが山に手を合わせて拝んでいると、シルカが、言った。
「そろそろ夕飯の時間になるけど、何か食べようか?この通りには食事が出来る所が何軒もあるし、どんなものが食べたい?」
…と、言われたが、リューにはリジュワルドの食文化の知識がなく、うーん…、と悩んでいたが、ある事に気付いた。
「…あ!…よくよく考えたら、僕、この世界の金、持ってないぞ…!?」
リューが顔を青くしていると、シルカが微笑みながら言った。
「リューには釣竿買うのも手伝ってもらったり、少し出してもらってるから、気にしなくて良いよ?」
…シルカがそう言ってくれたので、ここはお言葉に甘えようかな?
「ありがとうシルカ!ここはご馳走になるよ!」
「うん!そうだねー、じゃあ私がよく行く大衆料理屋さんで良いかな?」
シルカは、リューが何を食べたらいいのか分からないかもしれないと、行き先を提案してくれたので、リューは、じゃ!そこで!…とすぐさま返事した。
店の入り口にあるウエスタン調の木のドアを押すと、大衆料理店らしくガヤガヤとした声と、鼻腔をくすぐる料理の良い匂いがして、リューは胸が高鳴った。
「おいマスター!こっちにエールを二杯頼む!」
「あいよっ!ちょっと待ってくれな!」
…といった異世界情緒が溢れるやり取りが聞こえてくる。
程なく店の給仕のおばちゃんにこっちの席で良いかい?…と聞かれたので、シルカが、はい。…と答えた。
席に着いたリューがメニューを見ると、文字自体はわからないのだが、ウインドウに翻訳されて内容が分かる事に気が付いた。
なんて便利な仕様なんだろうか。
「あの磯に行ってから、ずっと気になってる料理があるんだよね。」
リューは、異世界魚図鑑で見たエファレンツァーをオリーブオイルと塩漬けニンニク、それぞれの町の地酒で煮込んだ、アクアパッツァのような料理の事を思い出し、それがあるかな?とシルカに聞いてみる。
「あぁ、[プリヴェバリョーネ]の事だね?
うん、あるよ!ニンニクが効いてて、元気が出る魚料理だよ!それが食べたいの?」
リューが、ウン!と頷くと、シルカは、でもそれだけじゃ足りないでしょ?と言って再びメニューを見ながら、あとコレとー、あれとー、と適当に見繕って給仕さんにオーダーした。
オーダーした料理の事を考えると、リューのお腹がギューっとなってしまい、ニヤリとしたシルカが言う。
「犯人は、リュー!あなたよ!」
ビシっ!と指を突き付けられ、推理系アニメの真似をされてリベンジされてしまった。
ぐぬぬ、やり返されてしまった!
…と、リューはアハハと笑った。
料理名とかは、色んな国の言葉を使ったりして作っています。
実際に現実に無い料理の様にしていますが、もしかしたら同名の料理があるかもしれません…。




