スキルと崖の下のタックル便利
「なんだコレ…習得可能スキル?」
確かに初の異世界魚を釣ってレベルアップした時に、スキルポイント[20]獲得と表示されていた。
何か有用なスキルを手に入れたり出来るのだろうか?
僕は[海神の恩寵(微弱)]のように、役立つ所得可能スキルがないかな?…と、考えながらウインドウをタッチしてみた。
[異世界魚図鑑]
スキルポイント[5]で所得可能。
こちらの世界で釣った魚の名前、生態、サイズ、食用可能かどうか、味の良し悪しがわかる異世界魚図鑑。
魚を釣り上げるとその魚の情報が表示されるが、まだ釣っていない魚に関しては情報が表示されない。
本の形では無く、ウインドウに情報表示される。
海神から一言
「リュー君をこっちに引き込んでしまった海神的には早めに所得するのをおススメするよ!知識がないとそれだけで危険だからね!」
…とか書いてある。
とりあえず所得した方がいいんだけど…。
何より先ずは海神にコンタクト取るスキルってのはないのかな?いきなりドロップキックして小1時間説教してやる!!
…うーん、でもまぁ確かにリジュワルドの魚の事もわからないし、変な毒魚とか食べてしまっても怖いしな…。
「…とりあえず、このスキルを所得しておくか。」
僕はスキル[異世界魚図鑑]をタッチし、先程釣って血抜きをしている魚を見てみる。
するとウインドウが開いて魚の情報が開示された。
[エファレンツァー]
LV6
59cm
リジュワルドのエルノーラ大陸東側から南側周辺の海域を小魚を求めて回遊する回遊魚で、特徴的なダラリと下に伸びた下唇をしている。
そこから微弱な電気信号を発し、餌となる小魚を探し出して捕食する。
普段は微弱な電気しか発さないが、身の危険を感じるとかなり強い電気を出して敵から身を守ろうとする習性がある。
身は淡白ではあるが味が良く、エルノーラ大陸東側沿岸部ではオリーブオイルと塩漬けニンニク、さらに現地のお酒で味を付けて煮こんで食べるのが好まれている。
街によって使うお酒の種類が違うので、その場所その場所で少し味や風味が違い、それらを食べ比べてみるのも楽しいかも知れない。
成る程、このスキルの性能は良いもので、事細かに、先程釣り上げた魚の情報がわかった。
「おぉー!なんか本当に異世界に来たって感じがするな!」
しかも味が良いとか書いてあるので、嬉しい!
へぇ、オリーブオイルと塩漬けニンニクと酒か…。
元の世界で言うとアクアパッツァとかに近い料理なのかな?
僕は、じゅるり…と、ヨダレが垂れそうになる。
…けど現在は調味料も火も鍋もないし、醤油無しの刺身で食べるしかないよな…。
「…はぁぁぁぁぁぁ!」
…っと、僕は深い溜息を吐くが、どうしようもないので、そこは潔くあきらめた。
「とりあえず他のスキルも見てみるか…。」
[タックル便利召喚]
スキルポイント[10]で所得可能。
あなたの街の釣具店、タックル便利!
中古釣具から新品釣具、アウトドア用品に釣り餌まで!店頭にない品物は全国のタックル便利からお取り寄せします!そんなCMで有名な貴方の行きつけのタックル便利へ繋がる扉を任意の場所に召喚します。
海神から一言
「残念ながら海神であるところの私の力では、リューを元の世界に帰してあげれるだけの力は持っていないんだよね。
こっちに来れちゃったのは偶然と言うか何と言うか…奇跡?…い、いや、本当にすまないと思ってるよ。
でも、こちらの世界に向こうの世界の一部だけ切り取って持って来て、扉で行き来させるみたいな事は出来るよ!…タックル便利から元の世界に出る事はできないけど、釣りしなきゃいけないなら釣具は必須だからね。
このスキルと合わせて、次に表示されているスキル[貨幣変換]も所得しておけば、釣った魚や色々な物を適正価格で日本円か、こちらの貨幣チルに変える事が出来るから取っておいた方が良いよ!」
これは、なんて便利な…。
海神の戻してやれない発言には心底ガッカリしたけれど、タックル便利を呼べるなんて最強じゃないか!
あなたの街のタックル便利って言うか、あなたの崖にタックル便利って感じだな…これ。
いや全くもって笑えないけども…。
[エファレンツァー]の名前の由来。
[エレファントノーズ]という熱帯魚と、鰹の英名の[ツナ]の響きを混ぜ合わせたネーミングになります。
エレファンツァーだと、まんまっぽいので、エファレンツァーとしました。
エレファントノーズは、微弱な電気を発生させて、水底にいる餌を探し当てるそうで、そのイメージと、鰹のような回遊魚のイメージを掛け合わせた異世界魚となります。