あの素晴らしい刺身をもう一度
テンションが上がってその辺を駆け回っているハスキーを見ていると、シルカが僕にラフダックスの刺身を差し出してきた。
「はいっ!ラフダックスはまだ食べてないんでしょ?スキルを手に入れられるかもしれないよ?」
いや、潮汁を味見していた時にスキルは発現していたのだが、このタイミングで確認するのもなぁ…と思い見ていなかっただけなのだけれど。
シルカがニコニコと刺身を差し出してきたので、もうスキル発現してるよ?とか言うのも感じが悪いので、僕もニッコリと笑って食べる事にした。
「ありがとう!では、いただきまーす!」
いつも通り、食材に感謝して、僕はラフダックスの刺身を口に運ぶ。
…うん、シルカが言った通り、プリップリな歯応えで、癖も無く悪くない味だ。
「うん!美味い!シルカの言った通りの味がするよ。」
僕がニコッと微笑むと、シルカも首を傾げながらニコッと微笑む。
そのシルカの笑顔を見ると、また胸がドキっとした。
そしてスキルを確認してみる。
スキル[格闘強化(手刀)]NEW!!
ラフダックスの鋭利な背ビレを模したスキル。
その斬れ味は凄まじく、木を断ち、岩に食い込む程の威力を誇る。
更に力に[10]のボーナスポイント。
おー!相変わらずチートなユニークスキルだな!
…すると、シルカがどんなスキルを手に入れたの?と聞いてきたので説明する。
「格闘強化系のスキルで、手刀を強くするスキルみたい。
ラフダックスのあの凄い背ビレあったでしょ?
あれをイメージしたスキルみたいだよ?
何でも木を切り倒せるし、岩にもめり込む程の手刀が使えるみたいだよ!」
僕は嬉しそうにシルカに説明すると、シルカは眉間に人差し指を突き立てながら、うーん…?…と、何か考えている。
「どうしたの?」
と、僕が聞いてみると、シルカは何か考えついたようだ。
「木を断ち、岩にめり込むんでしょ?」
「うん。」
「それって…この崖に手刀しながらよじ登れるんじゃない?」
そのシルカの言葉に僕は、ハっ!とした。
確かにその通りで、試しに背後の崖に手刀を繰り出すと、思ったよりも簡単にサクっと手がめり込んだ。
「おおっ!うん!これならいけそうだ!
全く思いつかなかったよ…あはは…。」
僕が苦笑いしながら頭を掻いてると、所々抜けてるわねー、とシルカも苦笑いした。
「よし、取り敢えずここを抜け出す手段は獲得したわけだ!…うん、でも一つだけ心残りがあるんだよね。」
「ん?何かやり残した事があるの?」
…と、シルカが聞いてくる。
「昨日食べた、ヘイルボルグって魚の塩焼き覚えてる?
あの魚の刺身をシルカに襲撃される前に、一人で食べてたんだけど、もう涙が出るくらいに美味しくてさぁ…、あれの刺身をもう一度食べておきたいなぁーって。」
僕が思い出して舌舐めずりしていると、シルカがプクっと膨れた可愛い顔をして言った。
「リューばっかりズルイ!私も食べたい!」
…と、自分の竿を持って再び海に投げ始めた。
しまった…、シルカの異世界飯魂に火をつけてしまったようだ。
リュー達のいる崖の磯のイメージがしにくいって方は、[伊東] [ヒナダン]で画像検索してみて下さい。
その周囲が50mの崖に覆われており、小規模な滝が流れてると思ってくれれば大丈夫です。




