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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第一章 始まりの崖の下編
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土鍋ミミック[ハウリングウルフ編]

シルカはラフダックスを眺めながら「キャーキャー!!」と、テンションが上がっていたのだけれど、一頻り騒いだ後に食べる事の方へと興味が湧いたのか、ラフダックスの調理を僕にお願いしてきた。


「この魚はラフダックスって言うらしいんだけど、骨や頭の部分なんかを煮出してスープを作ると美味しいみたいだよ。…でも僕は鍋のような物は持ってないんだ、シルカの家に使ってない鍋みたいな物はないかな?」


僕は異世界魚図鑑に書いてあった汁物を作りたくてシルカに聞いてみると、顎に指を当てて心当たりが有る事を僕に告げた。


「んー…確か納屋で釣竿を探してる時に土鍋みたいなのがあったような気がするわ…うん!ちょっと探して来てみるね!」


異世界の魚調理法の虜になりつつあるシルカは、期待からか物凄いスピードで[飛翔]スキルを発動し、崖の上へ飛び立って行った。


「さて…と、シルカが土鍋を取りに行ってる間に、ラフダックスの血抜きと、処理をしておこうかな。」


僕は未だラフダックスの上顎に刺さったままの釣り針をペンチで外し、エラ内部の薄い膜の部分にザクザクとナイフを入れる。


するとエラの間からダラダラと血が溢れ出してきた。


そのまま尻尾の付け根の部分にも骨まで切り込みを入れ、血が抜けるスピードを加速させる。


例のタイドプールに少し浸けておいて、あらかた血抜きを終わらせると、まな板の上にバン!と乗せ、出刃包丁でガリガリと鱗を落として行く。


鱗を落とす間、改めてラフダックスを観察すると、元の世界で言う(スズキ)に似ている魚だなぁ。…と思った。


僕が磯で狙っていた平鱸(ヒラスズキ)に近い種類の魚で、磯などに生息している平鱸に対し、こちらは河口域や河川内にも生息していて丸鱸(マルスズキ)と呼ばれる。


海でルアーを始める人の多くが一度は経験するであろう魚種である。


但し鱸と違い体色は紺に近い青色であるし、背びれの長さは倍以上ある。


体高は鱸よりも細く、駄津(ダツ)と言う魚と鱸の中間くらいである。


「深海魚の水魚(ミズウオ)を全体的に太くして、大きめの鱗が付き、背ビレがゴツくなって、鱸の顔にしたような感じかな?」


うーん、まぁ、何でもいいや!

日本の魚と比較したりしても、何の意味もないしな。


僕はそう考えながら、刺身を作りに集中する。


「あ、こっちの世界って生魚は食べるのかな?…最悪シルカが拒絶したら、スープを使って刺身をシャブシャブにするという手もあるし…まぁいいか。」


とりあえず僕はラフダックスを刺身に切り分け、紙皿に綺麗に盛り、頭を縦に半分に割って出汁をすぐ取れるようにしてシルカを待った。


〜20分後〜


困った顔で戻ってきたシルカは、土鍋の内側を僕へと向ける。


「…どうやらこの土鍋を寝ぐらにしちゃってるみたいで、梃子(テコ)でも動かないのよ。」


「んん?」…と僕が土鍋を覗くと、小さい子犬みたいな可愛い生き物が「誰が退いてやるものか!」と言わんばかりに踏ん張っている。


「[ハウリングウルフ]の子供みたいね。

大きくなると体長3m近くになるモンスターで、見たところ親元から離れたばかりみたい。

親くらいの大きさになるとハウリングウルフは街周辺には現れないし、この小さい子達も納屋とかに住み着くネズミなんかを食べてくれる益獣だから、人間とは共存関係でね、手にかける訳にもいかなくて…。」


「わふ!」


ハウリングウルフの子供は意地でも退く気は無い様で、土鍋の中で手足を突っ張り踏ん張っている。


…うーん、なんか狼犬の子供?

わかりやすく言うなら小さい双角が生えたシベリアンハスキーの子供みたいな外見だな。…もう、めっちゃ可愛い。


でもシルカにご飯も作ってあげないといけないし、だからと言って退かすのも可哀想だな。…と思った僕は困った顔で首を傾げていると、ウィンドウの習得可能スキルの項目にNEW!!の文字が点灯している。


また何か役立つスキルを海神がくれるのかな?…と、ウィンドウをタッチしてみると。



スキル[ビーストテイマー(初級)]NEW!!

スキルポイント30で入手可能。


知能のある優しい獣系モンスターならば、心を交わす事で従魔関係を築けるスキル。


獣系モンスターの気持ちを把握でき、向こうにもこちらの気持ちが通じる様になる。



また海神は何て良いタイミングでスキルをくれるんだろうか。…案外良いヤツなんじゃないか?


まぁ嫁に駄々捏ねて津波起こしちゃうくらいだから、ちょっと痛いヤツだと思ってたけれどね。


まぁ、とりあえず感謝だな!


僕は[ビーストテイマー(初級)]を所得し、ハウリングウルフに話しかけてみた。


「その土鍋を使って料理をしたいんだ、悪いんだけれどそこを退いて貰えないかな?」


ハウリングウルフの子供は、えっ!?とした表情を一瞬浮かべたが、土鍋の中で突っ張る手足を緩める事はない。


「わふっ!?わふっ!(人間なのに何でおいらの言葉がわかるんだ!?どう言う訳かわからないけど、この寝床はおいらの領域(テリトリー)なんだ!絶対に退かないぞ!)」


ハウリングウルフは「ガルル…!」と低い声で唸る。


「んんー?これからその土鍋でとーっても美味しい料理作ろうと思ったんだけどなぁ?…退いてくれたら分けてあげちゃうかもしれないなぁ?」


うん、秒殺でした。


…もうね、物凄い勢いで退いてる。


めっちゃ尻尾振ってるし。


「あっ!退いた!リュー凄い!」


シルカはビックリしながら口を押さえた。


「わふっ?(ホントか?おいらメッチャ腹減ってるんだ!飯をくれるならおいらの寝床なんてやるよ!)」


ハウリングウルフの子供は舌を「ヘッヘッヘッ!」っと出しながら、ワンコスマイルを浮かべた。


「よし!契約成立だ!」


とは言っても未だ従魔契約を結んだ訳ではなく、飯を食わせるから彼の寝床である土鍋を明け渡す契約だけれどね。

魚の姿が想像できない場合は、グーグル画像検索で書かれている魚の名前を探してみるといいかもしれません。(異世界魚は勿論ヒットしません。)

お手間ですが、世界感がより分かると思いますよ!( ^ω^ )

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