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釣りと幻想の物語〜僕の異世界冒険釣行〜  作者: 久保田akkun
第一章 始まりの崖の下編
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塩焼きの匂いは腹が減る

リューがふと気が付くと、もうタックル便利の閉店の十五分前であった。

これ以上店に居座ると、皆木さんにも迷惑がかかるので、シルカに耳打ちする。


「もう、お店が閉店する時間だ、これ以上長居すると、皆木さんに迷惑がかかる、また連れて来てあげるから今日はもう引き上げよう。」


「!!…そう…、わかったわ。

あの、皆木さん!今日は色々とごめんなさい、また遊びに来ても良いかな?」


「気に入ってくれてありがとうございますぅ!

是非また来てくださいねぇ!」


皆木さんは、ニッコリ微笑みながらお辞儀した。

いつもながら、素晴らしい接客である。


「皆木さん、ありがとう!本当に感謝してるよ。

また、その内に色々買いに来ると思うけど、よろしくお願いしまーす!」


…と、リューは手を振った。


あれ?ニコニコ笑ってお辞儀したけど、ありがとうございますは言ってくれなかった、もしかしたら怒ってるのかもしれない。

うん、僕が連れて来たシルカが暴れ出しそうになったからだな、間違いない!

…と、リューは鈍感さをフルに出しながら退店した。


タックル便利を一歩出てみると、そこは相変わらず背後が断崖絶壁の磯。

とりあえず、タックル便利が閉店して、明かりが消える前に、皆木さんに借りたガスランタンに火を点ける。


「さて、とりあえず、嫌疑が晴れた所で、さっき食べ損なったヘイルボルグの塩焼きを温めなおしてっと。」


まだ炭火はギリギリ生きていたので、そこに乗せて再加熱する。

うん、辺りに香ばしい香りが立ち込める。

すると…。


…グギュルルルル…。


…お腹が鳴った、…しかし僕ではない。


「犯人はシルカ!君だ!」


探偵推理物のアニメの様に、ビシッ!と指を指して言ってみた。

シルカは、物凄く恥ずかしそうに真っ赤な顔をしている。

うん、多分、この塩焼きが食べたいのだろうが、恥ずかしくて言い出せないと見た。


「…半分食べる?」


シルカに聞くと、パァァァァァァ!!と効果音が聞こえそうな程、嬉しそうに飛び跳ねた。


「い、いいの!?」


その顔見ちゃったらダメとは言えないよね?

今日一で素敵な顔をありがとうございます。


「ほら、火傷しないようにゆっくり食べなよ?」


紙皿に半分取り分けたヘイルボルグの塩焼きと、バーベキューセットの中に入ってたプラスチックフォークをシルカに渡すと、満面の笑みになった。


「ありがとう!」


食べ出そうとするシルカを手で制してリューは言った。


「まずは、「いただきます。」…だよ。

この魚の命を貰ってるんだから、この魚に最大限の感謝をしてから食べよう。」


日本式の食前の挨拶を説明すると、シルカは興味深そうに聞いている。


「へぇ、リューのいた世界では、食材に感謝してから食べるんだね?…うん、素敵な習慣だと思うな。

では…いただきます。」


そう言うと、シルカは、プラスチックのフォークで、ヘイルボルグの塩焼きの身を取り出し、口へ運ぶ。


「!!!…美味しい!この魚初めて食べたけど、こんな美味しい魚がいるんだね!これは何て料理なの?」


シルカがそんな事を聞いてくるが、塩焼きはこちらの世界にないのかな?

…と、リューは思ったが、しっかり答えてあげる。


「これはヘイルボルグって魚を塩で焼いた、シンプルな塩焼きだよ。

炭火で焼いたから、じっくりと火が芯まで通った上に、炭の香りがより美味さを増してるんだ!

焼きたてだったらこれより遥かに美味しいんだよ!」


シルカは、キョトンとした顔をした。


「え?え?これ、塩で焼いただけなの?

嘘、凄い美味しい!いつも魚料理は、オリーブオイルで焼いたり、煮たりするんだけど、こんなに魚の素材自体が、美味しいなんて知らなかった!」


シルカは満面の笑みでモグモグと食べている。


「僕の出身国の日本は、素材を活かす料理はかなり秀でているからね。

シンプルだけど、奥深く出来ているのが日本食の醍醐味さ!

それに今日は日本の調理法だったけど、日本料理以外の方法でも、美味しい料理はいっぱいあるんだ!」


リューは鼻を高くしてフフン!とドヤ顔した。

閉店前のお店に居座るのって、気が引けますよね。

色々業務もあるだろうし、なるべく閉店前には行かないようにしてます。

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