詰めるシルカ、そんなの知るか(おや、寒波が来たようだ)
「いやいや、ゴメンね?
この崖の上を通りがかったら、崖の下から煙が上がってて、騒いでる男がいたからさ、[飛翔]のスキルで背後に降り立って、脅してみた訳なのよ。」
…と、背後にいた誰かさんである、第一異世界人の女の子は、笑い過ぎて涙の浮かんだ目を拭いつつ、僕に言った。
「いや、確かにそんな事情があったなら仕方がないかもしれませんね。
僕の名前は、海上 流視って言います。
みんなからは、名前を省略したリューって呼び名で呼ばれてます。」
盗賊などの害意を持って接して来た人間じゃなくて良かったな…と、僕は安堵する。
「私の名前は、[シルカ=セラ=フェノール]よ。
[シルカ]って呼んでくれれば良いわ。
この崖の上から少し行った[フェノール]の町の町長の娘で、町に何かあったら嫌だから、周辺を警戒していたの。」
「え!?女の子が1人で警ら巡回をしてるんですか!?」
僕は、女性1人で大丈夫なのかな?…と思って、そう問うと、いきなり女の子扱いされたのが嬉しかったのか、シルカはモジモジしながら照れている。
「いやいや、そんな訳ないでしょー?
崖の上に町の警備兵を二人待たせてあるわよ。
彼等は[飛翔]が使えないし、私が隠密の腕が良いのを知ってるしね。
簡単に背後を取れる事を知ってるから、上で雑談でもして、私が戻って来るのを待ってるんじゃない?」
「なるほど…だから単騎で来たんですね?
確かにシルカさんが僕に素性を問うまでもなく殺す気だったなら、僕は今頃、確実に死んでましたからね…。」
僕は、首筋に当てられたナイフを思い出し、ゾクっ!
…として身震いした。
「シルカって呼び捨てで良いわよ?
多分リューのが年上だし…で、リューはどこから来たの?」
そうシルカは、困った質問を投げかけてきた。
まず正直に言っても信じて貰えるかわからない上に、変に言い篭ると、また疑われる可能性もある…。
少しだけ考えて、僕は正直に話す事にした。
「僕は、日本という国の神奈川って所にある、海沿いの街から来たんだよ。」
僕は全く嘘はついていない。
そのセリフを言う間にシルカは、一転の曇りもなく僕の目を見つめていた。
動揺したり、嘘をついていたら看破されていた可能性もある。
「…へぇ、聞いたことない場所ねぇ?
ニッポンって国家の、カナガワって場所の領主が治める町って事かな?」
「そうそう、そんな感じ。」
「…嘘をついている風には見えない…でも、そんな国家を私は聞いた事が無いわ…嘘を言っているの?
…私にわからないなんて…リュー、あなたは件の敗残兵と繋がりがある誰かなの?」
…と、シルカは腰にぶら下げているショートソードに手を掛けて、こちらを見据えた。
「いや、嘘偽りは一切ないよ?
その敗残兵とも繋がりは一切無い。
この海の海神リヴァイアに、かけて誓おう。
僕は嘘は言っていない。
…そして、この世界の人間でもない。」
「リュー、それってどういう事?」
シルカは、此方をジッ…と見詰めつつ、どうしたら良いのかわからないと言った表情でこちらを見つめているのだった。
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