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82.眼下の敵!

 戦闘回です。そういえば、同級生組が活躍できる回が久しくないですね……

 グロい表現が存在します。


※2019/8/7 スマホフレンドリーに修正しました。

 翌日の深夜。私は指定された商会にほど近い屋上に潜んでいた。


 勿論、ハニーマスタードの衣装に着替えており、完全に戦闘態勢を整えている。

 既に夜目(ナイトサイト)をかけているので、月明かりの下でも周りの様子は昼間のように確認できる。


 と、ターゲットの商会の入り口付近に、二、三の人影が無音で走り寄るのが見えた。全員、黒いソフトレザーで全身を固め、顔は覆面でよく見えない。でもまあ、おそらく盗賊ギルドの面々だろう。

 一人は解錠に入ったのか、扉に張り付いてなにやらごそごそし始めた。他の人影は周囲を警戒しているようだ。


 その中の一人がどうも屋上の私に気がついたらしく、私の方をじっと見て警戒し始めた。そこで私は手を振って合図すると、彼?も手を振り返して他の方向の警戒に移り始めた。


 ――しばらくすると、鍵が開いたらしく扉が静かに開け放たれた。

 一人が手招きをして後続部隊を呼び寄せ、中に侵入していった。侵入部隊は合計5人のようだ。これが盗賊ギルドのエース級、って事なのかな。

 鍵を開けていた一人は周辺警戒のためか、外に残っているようだった。



              ◇   ◇   ◇



 侵入部隊が突入してから十数分間、屋内は静かなままだった。

 しかし、耳を澄ませていると、中からどたばたする音が聞こえ始めてきた。剣戟の金属音もわずかながら聞こえたりし始めている。

 その音は少しずつ大きくなり……屋内から駆けだしてくる人影が見えた。


 一人、二人、三人、四人。先頭の一人は布に包まれた何かを抱えている。これがデーモンコアなのかな?

 先頭の一人は、外に待機していた一人にその包みを渡し、他の三人と同様に建物の入り口を半包囲し、出てくる人間に備え始めた。


 すると、扉の中から小さい何かが飛び出してきて……地面に落ちたかと思うと、轟音と共に爆発し、周囲に炎と爆風をまき散らした。


 包囲していた盗賊達は、慌てて下がり、間隔を取る。

 その隙に、建物の中からこれまた黒ずくめの人影が飛び出してきた。全員、目を覆う仮面を被っていて、その表情は見えない。

 大人……というには少し小柄な気がするが、ともかく、4つの人影が飛び出してきていた。


 盗賊が四人、暗殺者?が四人。同じ人数同士でそれぞれ1対1で対峙している。


 ――さて、そろそろお仕事の時間のようだ。私は屋根の上に静かに立ち、なるべく小さな声で魔法の詠唱に入った。

 まず、左手に小さく”防御”。万一、矢でも飛んできた時は、これではたき落とすしかない。


 次に選択した魔法は、毎度おなじみ”電撃の矢”(スタンミサイル)。味方を巻き込まずに相手を無力化できる魔法としては、ホント使い手がある魔法だ。


「"マナよ、雷をまといし矢となりて我が敵を討ち倒せ"――電撃の矢(スタンミサイル)!」


 正面から攻撃すると流石に避けられる可能性が高いから、私に対して横向きになっている暗殺者に対して放ち、更に誘導して直上から攻撃する形を取った。


「ぐっ……」


 思わぬ所から直撃を受けた暗殺者は、そのまま膝をつき、倒れ伏した。

 その暗殺者に対峙していた盗賊が素早く近寄り、すかさずとどめを刺す。


 これで4対3。


 と、暗殺者の一人が私の方をちらりと見たかと思うと、いきなりそいつは向きを変え、私の方に向かって駆け始めた。


 一人の盗賊がそれを阻もうとした瞬間、そいつは一瞬かがんだかと思うと、瞬間的に加速し、瞬く間にその盗賊の脇をかすめて後ろにまで達していた。

 すれ違いざまに斬ったのだろう。盗賊から丸い物がごろんと落ち、首から噴水のように血を吹き上げている。


 それを横目で見た別の盗賊は、私に向かって大きな声を上げた。声からすると、どうもスラッシュだったようだ。


「ハニーマスタード! そいつが一番強いわ。逃げなさい!」

「まさか、ここまでは……」


 来ないでしょ、と言おうとした瞬間、なんと、その暗殺者は壁を飛び上がるように駆け上がり、あっと言う間に私の居る三階の屋上にまでたどり着いていた。

 迂闊な思い込みに顔をしかめて舌打ちしつつ、私は迎撃態勢を整えた。



              ◇   ◇   ◇



 私にほど近い場所に上がった暗殺者は、一気に駆け寄ること無く、ゆっくりこちらに近づいてきている。


 私よりは幾つか上のようだが、年若い女の子のようだ。

 長いストレートの黒髪を、頭の後ろで一本大きくポニーテイルに結っている。

 覆面はしていないが、目を覆う仮面のため、その顔はよく分からない。

 ぴっちりとした漆黒のソフトレザーアーマーを身にまとっており、その右手には血がしたたり落ちる内刃の短剣……恐らく、ククリナイフを携えている。


 あの瞬間的な移動――恐らく、私の箭疾歩(せんしっぽ)と同様の技だと思う――を警戒しながら、彼女の一挙一動を見逃さないように、軽く目を細めた。


 仕草の観察を続けているうちに、私は相手の実力を感じ始めた。右手がわずかに震え始める。


 ――やばい、無茶苦茶強そうだ。


 スラッシュの言葉通りに逃げる事も一瞬考えたけれど……

 後ろを向いて走っても追いつかれそうだし、飛び降りたり、空に浮き上がろうとしても、その瞬間に飛びつかれるだろう。


 一瞬緊張したけれども、逃げられそうにないと思うと、逆に落ち着いてきた。右手の震えも収まっている。


「ごめん、逃げられそうにないわ。なるべく時間を稼ぐからとっとと行きなさい!」


 目線を暗殺者(そいつ)から外さないままに、地上にいる盗賊達に向かって声を掛けた。

 返事は聞こえないが、下で始まった剣戟の音が移動しているから、彼らも逃げに入ったのだろう。


 3対2で人数的には盗賊有利とはいえ、実力は暗殺者達の方がわずかに上のようだ。毒の要素もあるんだろうけど。

 でも、これで彼らはなんとか無事に逃げられる、かな?

 次回予告。


 直面した恐るべき敵。押収部隊を逃がすべく、私は彼女の視界を奪い、必殺の念を込めて”雷撃”を放ったのだが……


 次回「ハニーマスタード死す」お楽しみに!

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