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80.デーモンコアの脅威

 第1話に、表紙風画像を追加してみました。

 アニー・フェイとハニーマスタードをイメージして、描いてもらった画像です。

 他のキャラに関しては、残念ながら、予算の都合上載せられませんでした……


※2019/8/7 スマホフレンドリーに修正しました。

 私はスラッシュに連れられて大通りから離れ、住宅層のはずれに近い、若干治安が悪い区域に入っていった。そして目立たない路地裏に入り、突き当たりにある小さな木の扉の前で立ち止まる。


(こん、ここん、こんこん)


 スラッシュが扉を特徴のある拍子でノックすると、扉についている覗き窓が静かに開かれた。覗き窓の中の人影に対して、スラッシュは私が見えるように体を少し引き、私が共に来ている事を示す。

 するとカチャリと鍵が開く音がして、扉が静かに開け放たれた。


「こっちよ、ついてきて」

「はいはい、お邪魔しますね?」


 スラッシュの誘導に従って入っていく私。

 扉の向こうを見ると、また別の路地が続いていた。左右には建物が続き、裏口の扉が並んでいる。


 そして、中で鍵を開けていたのは……どこかで見たようなチンピラだった。仏頂面で何か言いたげに私を見つめていたが、結局、彼は口を開くことはなかった。

 私が通り過ぎると、そのチンピラは再び扉と鍵を閉め、脇にあった詰め所に入っていった。どうやら、彼が門番だったようだ。



              ◇   ◇   ◇



 右左と折れ曲がる路地を更に抜けて行き、スラッシュはついに一つの扉の前で立ち止まった。


「あ、ちょっと待って」


 スラッシュが扉を開けようとしたところで、私は彼を制止した。彼は(いぶか)しそうに私の様子をうかがっている。


「――何かしら?」

「これ着てると暑苦しくってさ。脱ぐからちょっと待っててね」


 私は彼に告げると、羽織っていたフード付きの外套を脱ぎ、軽くたたみ始めた。そしてその外套を鞄にしまい、代わりにトレードマークのベレー帽を取り出して、頭にかぶる。


「これで、よし。やっぱこれじゃないとね」

「つくづくあなた、派手好きねぇ」

「正義の味方はこうじゃないと!」


 あきれた顔をするスラッシュに、ポーズをつけて笑いながら返す私。


「まあ、何にせよ、仕事に美意識を持つのはいい事ではあるのよね……さ、入って」


 と、つぶやきながら、スラッシュは扉を開けて中に入っていった。私もスラッシュに続いて中に入ると、また細かく折れ曲がる廊下が続いているのが見えた。


「遠いねぇ」

「もう少しだから、我慢してね?」


 ぼやきながらついていく私に対して、スラッシュは苦笑しながらフォローの言葉を返してくる。

 更にしばらく進み、ようやく、少し立派な扉の前でスラッシュは立ち止まった。

 彼は扉をノックして、中の人間に客人の到着を告げる。


「リングマスター、噂の魔法少女さんをお連れしたわよ」

「おお、来たか! まあ、入ってくれ」


 スラッシュはその言葉に応じて扉を開け、私を中に(いざな)ったのだった。



              ◇   ◇   ◇



 そこは、会議室のようになっていた。

 中央に大きめのテーブルが置かれ、その奥には一人の男性が座っている。

 ビルさん、なんだろうけど、目だけ覆う覆面をしていて、はっきりした顔は分からない。その格好は今まで見た服装と違い、なんて言うか、人のことが言えないくらいに派手な服装を身につけている。

 黒いスラックス、白いシャツに黄色のベストは、まあともかくとして、真っ赤に染められた蝶ネクタイと上着が強烈に主張している。”座長”(リングマスター)を名乗っているだけに、その格好にしているのかな?


「これはようお越しいただいた。うちが”小さき矢軸(マイクロシャフト)”ギルドマスターの、”リングマスター”や」

()()()()()。ハニーマスタードよ」


 ビルさん――リングマスターの自己紹介に応じて、私も自分の名前を名乗った。


「まあ、とりあえず、座っていただけるかいな?」


 私はその言葉に応じて、目の前の椅子に腰を下ろした。スラッシュはリングマスターの斜め後ろに移動し、そばに控えるような形で立っている。

 落ち着いたところで、リングマスターは少し口元を緩めながら、私に向かって口を開いた。


「見た目に寄らず、なかなか剛胆なお嬢さんやな」

「あら、どうして?」


 小首を傾げながら返した私の問いに対して、リングマスターは苦笑しながら返答する。


「正直、無茶な呼び出しやと思ったからな。無理筋にもかかわらず、盗賊ギルドのアジトに一人で来てくれて、かつ、その落ち着きっぷり。いやはや、大したモンやわ」


 まあ、クリスのお父さんって知らなかったら、流石に来なかったけどね。

 とはいえ、それは口に出来ないから、私は別の理由をこしらえて返答することにした。


「一応、あなたたちは筋を通す方だって思っているからね。無理を押してわたしにお願いするくらいなんだから、よほどの理由があるんでしょ? そして、そうやって招いた人間を害するほど愚かじゃないって思っているんだけど」

「んふふふふふ、まったく大したお嬢さんやわ。まさしくその通りやね」


 リングマスターは特徴的な含み笑いをしながら同意する。

 やっぱりビルさんで間違いなさそう。


「今回の件は、グレーゾーンの仕事なんよね。まず、依頼主は、フライブルク評議会。――さすがに、評議会名義で真っ黒な仕事は依頼して来んわな」


 私は、眉をぴくりとだけ動かして続きを待つ。


「ただ、配下の冒険者ギルドや自前の使用人を使えん時点で、真っ白な仕事でもないわけや」


 リングマスターはニヤニヤしながらそう言うと、いきなり口調を改めて質問してきた。


「ところで、お嬢さんはデーモンコア言う代物(しろもん)、聞いたことあるかいな?」

「いいえ、初耳ね」


 私は肩をすくめて正直に答える。

 悪魔の核(デーモンコア)? 名前からすると、あんまり近づきたくない類いのアイテムのように聞こえるけど。


「そか、まあ、レアアイテムやからな。ほな、デーモンがこの世界にどうやって現れるかは?」


 私の答えに小さく頷くと、次いで別の質問を投げかけてきた。


「それは知ってるわ」


 ――デーモン。


 それはこの世界に隣接した、魔界と呼ばれる異世界に住まう生物。


 その性格は基本的に邪悪一辺倒で、人間の負の感情、つまり、嫉みや怒り、恐怖などを好むと言われている。

 一言にデーモンと言っても、その強さは駆け出し冒険者でも倒せる程度から、魔神と呼ばれる、神にも相当すると言われるレベルまで、幅広く存在している。

 そして、ほぼすべてのデーモンが持つ特徴として、強力な魔術を駆使し、同時に強力な魔法抵抗力も備えている。


 で、その魔界からこちらの世界へは、召喚術とかで呼び出す事はできるんだけど、契約やら結構な代償を伴う割には、それだけじゃ一時的に半物質(アストラル)体で構築するのが精一杯。期限が切れたり倒されたりすると、あっさり元の世界に帰ってしまう。

 その他に、人間や動物に憑依させたりすると、長期間にこちらに滞在させる事が可能になるんだけど、強力なデーモンほど、それを支えるにはよほどの個体でなければ耐えられないから、やっぱり強いデーモンが長期間安定して滞在する事は難しい。


 でもまれに、強力なデーモンがしっかりした器を持った人間に憑依する場合があって……その時は、一つの国が滅ぶ勢いで悲惨なことになってしまうらしい。

 そんな場合の結末は、たいてい倒すことはできていなくて、どこぞの迷宮の奥深くやら、虚空間(ヴォイド)やらに封印されたりしている、とか?

 まあ、そんなのがその辺にポロポロ転がっているわけじゃないから、現実的にはそう滅多に起きる出来事じゃないんだけどね。



              ◇   ◇   ◇



 デーモンについて知っている事を思い返しているうちに、リングマスターの声が耳に響いてきた。


「デーモンコアっちゅうのは、その名の通り、デーモンの安定した核になり得る力を持ったアイテムなんだわ――それも最悪、魔神級の。――そしてそれが疑われる代物が、このフライブルクに持ち込まれようとしとるのよね」


 前言撤回。どうもこれは、今そこにある危機らしい。

 次回予告。


 リングマスターとの話は続く。デーモンコアを持ち込もうとしていたのは、私とも関わりのあった組織だった。そして私は、押収するための手助けを頼まれる。


 次回「依頼・要請・リクエスト!」お楽しみに!

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