表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/130

78.新たな知り合いができました(新しくない)

 この章はこの話で完結です。

 のんびりしてたらストックが……ともあれ次回は7月4日掲載です。


※2019/8/7 スマホフレンドリーに修正しました。

「うちな、結構近所から食べに来るねん。両親が共働きでロクなもん食えてない子とか……もう充分ええ歳やのに来てるのもおるけどな」


 クリスの家での食事会の途中、人数に対する料理が多い事に対して、クリスがその理由を説明していた。

 そしてその言葉の通り、玄関から人が入ってくる物音が聞こえてきたのだった。


「こんばんは。今日もいただきに参りましたわ」

「こんばんは! 勝手ながらお邪魔させていただきましたぞ!」

「「こんばんはーっ!」」


 と、どこかで聞いたような声がしたから振り向くと、私は思わず大きな声を上げてしまった。


「あーっ!!! スレイにフランシス!!……だっけ?」


 盗賊ギルドの二人組と、私たちより少し小さいくらいの男の子と女の子が二人ずつ、食堂の入り口に立っていた。


「おお、魔女様ではないか!」

「あらあら、チャリティショウ以来ね? お久しぶり」

「「はじめまして、お姉さんたち!」」


 それを見たエレオノーラさんは、「はい、いらっしゃい。適当に席についておいてね」とか言いながら、後から来た人達のために、取り皿やら飲み物の準備を始めた。



              ◇   ◇   ◇



「クリスって、やっぱりスレイとフランシスと知り合いだったんだ」

「やっぱりって?」

「いや、チャリティショウの殺陣(たて)の時。クリスとスレイ達ともかなり息が合った感じでやってたから」


 私がクリスの質問に答えると、クリスは苦笑しながら頭を掻いた。


「あー……まあ、普段のじゃれ合いとかで結構やりあってたからなぁ。兄ちゃんら、うちが物心ついた頃には、もう出入りしててな。歳はちっと離れてるけど、兄貴分みたいなもんやわ」


 クリスの話を聞いた私が、スレイに視線をやると、彼は軽く肩をすくめた。


「あたしたちはまあ、孤児でね。親に捨てられて路上生活してたんだけど、おかみさんに食べにおいでって誘われたのよ。お嬢(クリス)が生まれるだいぶ前の事ね」

「最初は信用してなかったが、まあ、おかみさんが強引でな。無理矢理引きずり込まれたのさ」


 と、スレイとフランシスが話している所に、ワインのゴブレットと取り皿を持って、エレオノーラさんが戻ってくる。


「そりゃ、あんたたちの寂しそうな目を見たら、放っとけないさ」

「でも、少々強引じゃ無かったかしら? 無理矢理引きずり込まれて、服脱がされて」

「ああ、そうだったそうだった。それで体を洗われて、着替えさせられて、ご飯を食べさせられて……ベッドが待っていたんだったな」


 スレイとフランシスで、()()()()()を指折り数える。


「だってあんたたち、そうでもしないと逃げちゃうじゃない。野良猫と一緒よ? 最初は少々強引にでもしないと、ね」

「まあ、そんなこんなで、なんとなく居着いちゃったってわけ」

「そうだな。――で、大きくなって、おやじさんの仕事を手伝うようになったわけだ」

「へー、なるほど、そうだったんだ。それで盗賊ギルドにねぇ……」


 何気なく呟いた私の言葉尻を捉えて、スレイの目が鋭く光った。


「ちょっと待って? あなた、あたしたちの仕事のこと、知ってるの?」


 ま、まずい! ハニーマスタードでは彼らが盗賊ギルドメンバーとして何回もつきあっていたけど、アニー・フェイではまだそこまで話してなかったっけ?


「え、えーと、ビルさんがギルドマスターだっていうのは、こないだ知っちゃったから。それで、仕事を一緒にしてるって言うし、そもそも、警備隊やら正義の味方(ハニーマスタード)やらが苦手だって言ってたし……」


 しどろもどろで誤魔化す私。


「スーちゃん、そんなに詮索しない! あんただって、そんなに隠してなかったでしょ?」


 エレオノーラさんの取りなしで、矛を収めるスレイさん。


「まあ、確かに、その通りね。あ、でも、あなた、”ここ”は、ギルドとは関係無い場所だって事は分かってよね?」

「うん、そりゃそうだよ、友達の家だもん」

「あとは……私たちがギルドメンバーだって事はまあ、おかみさんが言った通り、周知の事なんだけど、ここが縁のある場所だって事は知られてないの」

「それが広まると、いろいろな所に狙われる可能性がある、と?」


 私の指摘に、スレイはわずかに微笑んで頷いた。


「その通り。分かってるじゃないの。あたしやフランシス、親父さんが狙われるのはまあ、いつもの事だし、覚悟している事よ。でも、おかみさんやお嬢、坊ちゃんらが狙われたら、ね?」

「確かに、そうだね」

「あとは、あなた自身もよ? 変に話すと”知っている人”として、他の組織に目をつけられる可能性もあるから、ね?」

「大丈夫ですよ、そのあたりは(わきま)えてますから」


 私はそう言って、肩をすくめてから、更に言葉を続けた。


「ま、そんなつまんない話は、ここじゃナシにしません?」

「そうね。まったく誰がこんな話を持ち出したのか……って、あたしか」

「わはははは、魔女様に一本取られたな、スレイ!」


 渋い顔をして天井を見上げるスレイに、フランシスが笑いながら背中をバシバシ叩いてる。


「フランシスさんはフランシスさんで、いつまでわたしを魔女って呼ぶんです? あれは役柄の話でしたよね」

「ああ、チャリティショウの時のあんたの魔法の力に感服してな。 俺の中ではずっとあんたは魔女様さ」

「そんなに大した事はしてなかったと思うけど……と言うか、魔女って褒め言葉かな?」


 口を尖らせて言う私に、フランシスは腕を組んで笑いながら説明してくれた。


「あの、魔法を使った演出を思いつく創造力と、それがきちんと実現できる魔法の技術、大したモンだと思うぞ」

「うーん、まあ、他の人と比べた事はないから、よく分からないけど……」

「で、オレに取っては、魔女様というのはスゴい人に対する褒め言葉みたいなものだから、まあ、気にせず、遠慮無く受け取ってくれて構わないぞ!」


 フランシスのスゴい人理屈に、私は半分諦めてそれを許容せざるを得なかった。


「まあ、あなた一人が呼ぶ分くらいなら、いいですけどね? これ以上広まらなかったら」



              ◇   ◇   ◇



 その後も夕食は楽しく続き、うっかりお(いとま)するのが遅れてしまい、クリスの家を出た頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。

 帰路には治安に若干の不安もある界隈ではあったけど、私とシャイラさんはフランシスが、マリアはスレイが送ってくれて、もちろん全員何事も無く帰宅する事ができたのだった。


 ――ホント、気のいい人達ではあるんだよね。盗賊ギルドだけど。

 ともあれ今回のお食事会、クリスの家族について知る事ができたのは良かったかなぁ。

 盗賊ギルドの面々とは、いずれ敵対する可能性が高いから、正直これ以上付き合いは深めたくは無いとは思っているけど、さ。

 次回予告。


 街中で割と強引にトラブルを解決していると、意外な人物が私を探していると言う話を耳にする。うーん、かなり無理筋な気もするけど、一応顔を出しておいた方がいいのかなあ?


 次回「大噴水での密会」お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2022年11月現在、新刊3本同時進行キャンペーン実施中です。
以下3本を第30話頃まで同時進行で掲載しています。そしてその後、最も推されている小説を重点的に継続し、イラストの掲載も進める予定です。
他の小説もぜひご覧下さい!

banner_novel1.jpg
banner_novel2.jpg
banner_novel3.jpg

小説家になろう 勝手にランキング

なろう小説作者としての悪戦苦闘振りをこちらで記載しています↓
へっぽこ小説書き斯く戦えり

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ