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73.遭遇

 書きたい物は多々あれど、なかなかままならない毎日です。

 まあ、本業に影響が出ない程度にペースを守って進めるしか?


※2019/8/7 スマホフレンドリーに修正しました。

 いきなり背後から聞こえた軽快な旋律に、素早く振り向いたナイトシェードが見たものは、ピンクのベレー帽とジャンパースカートに、白のエプロンドレスを身につけ、リュートを抱えた金髪の少女だった。

 彼女はリュートをかき鳴らしながら、蒼く光る瞳でチンピラ共を見据えている。


(吟遊詩人? でもなぜこんな所に……いえ、それ以前に、この娘……強い!)


 現れた少女を素早く値踏みするナイトシェード。そして、少女の得体の知れない力に気がつき、内心で警戒レベルを引き上げた。もはやチンピラ共などに構っては居られない。

 するりとチンピラ共の包囲網から抜け出して、自分自身と少女との間にチンピラ共を挟み込むように移動する。これはチンピラ共を包囲したい訳ではなく、単純に、チンピラ共を盾に使うための行動だった。


 その間に、少女はリュートを手早く鞄にしまい込み、口上を述べ始めている。


「この美しい街の治安を乱す愚か者よ、天の裁きを受けるが良い!」


 そして少女は、ビシっとチンピラ共を指さしながら、決め台詞を叫んだ。


「魔法少女ハニーマスタード、ここに参上! 今日のわたしはぴりりと(から)いわよ!」

「げえっ! ハニーマスタード!」


 指さされたチンピラ共は、激しく動揺している。

 ナイトシェードは、唐突の少女の乱入と口上に内心困惑しつつ、表面は無表情を貫いていた。


「あんた達、どう見てもそこのお姉さんを襲ってるようにしか見えないけど……何か言い訳ある?」


 挑発的に両腕を組んで問い詰める少女――ハニーマスタード――に対し、チンピラ達は浮き足立ちまくっている。


「え……あ……オレ達ゃ何もしてねぇぞ!」

「そ、そうだ。オレ達はもう行くからな!」

「お、お前、足止めに行ってこい!」

「え、ええっ! 兄貴、ヒドイっす!」


 一番下っ端っぽいチンピラをハニーマスタードの方に蹴り出して、残りのチンピラは逃げようとナイトシェードの方にきびすを返した。


「どけどけぇっ!」


 ナイトシェードは一瞬、チンピラ共を拘束するか始末する事を考えたが、ここはただの村娘を装い続けた方が無難だと考えた。

 なので、体を避けて男達を通してやる。


 ちなみに、ハニーマスタードの方に蹴り出された男は、拳を振りかぶってハニーマスタードに襲いかかろうとしたが……


「”マナよ、雷をまといし矢となりて我が敵を討ち倒せ”――電撃の矢(スタンミサイル)!」


 ハニーマスタードの魔法を受け、体をびくんとさせたかと思うと、そのまま倒れ伏してしまった。


(魔法? 普通の”魔法の矢”とは違うようだけど……)


 一通りの魔法は覚えていたつもりだったが、見覚えの無い魔法に、内心で考え込むナイトシェード。

 そんなナイトシェードに対して、ハニーマスタードが声を掛けてきた。


「お姉さん、大丈夫ですか?」



              ◇   ◇   ◇



 ナイトシェードはとりあえず、村娘の偽装を続けることにした。


「え、ええ。助けてくれてありがとうございます」

「お姉さん、見た感じ、どこかの村からフライブルクに来て間がないように見えるけど……」

「あ、はい、そうなんです」


 軽く頷くナイトシェード。

 それを聞いたハニーマスタードは、顔を明るくして頷いた。


「やっぱり。このあたりはちょっと危ないから、あまり近づかない方がいいよ? 大通りに出るまでつきあってあげる」

「ありがとうございます!」


 そして、二人で連れ立って歩き始めた。ちなみに二人とも、倒れ伏したチンピラは完全に無視している。

 歩きながら、ナイトシェードはこの不思議な少女について情報を仕入れておく事にした。


「ええと、あなたは……」

「わたし? わたしは魔法少女ハニーマスタード。正義の味方です」

「は、はあ」


 臆面も無く自らを魔法少女とか正義の味方とか称する少女に、演技ではなく心から困惑顔になるナイトシェード。


「悪事を見かけたら介入するけど、都合良く居るとは限らないからね。お姉さんも気をつけてね!」

「はい、気をつけますね。――あの、よくこう言う事をされているんですか?」

「うん、まあ、悪事を見つけたら、ね」


 その返答を聞いたナイトシェードは、ハニーマスタードの存在を分析してみた。


(なるほど、勝手に首を突っ込むお節介な人種という事ね。普通なら長生きできないだろうけど、この強さなら理解できなくもないわ。ただ、任務の時に遭遇すると厄介かもしれないけど……所詮は魔術師、タネさえ割れてたら、なんとかなるでしょう)


 その後はナイトシェードがフライブルクに来た理由――もちろん、表向きの――などを話しながら、大通りまで歩いて行った。


「さ、ここまで来れば大丈夫かな」

「はい、どうもありがとうございました」

「それじゃ、わたしはもう行くね!」


 ハニーマスタードはナイトシェードに笑いかけると、小さく魔法を唱えた。

 そして大きくジャンプしたかと思うと、壁面を駆け上がって、屋根の上にまで上っていく。


「それじゃね、お姉さん!」


 と、ナイトシェードの方に大きく手を振った後、屋根の反対側に飛び降りていった。



              ◇   ◇   ◇



「今の、ハニーマスタードじゃない?」

「何かあったのかな……あの女の子と一緒だったみたいだけど」

「そういえばさっき、向こうの方で例の音楽、聞こえたよね?」


 ハニーマスタードの登場に、大通りの人々はざわざわとハニーマスタードが消えた方や、ナイトシェードの方を見ながら噂している。

 ナイトシェードは、注目を浴びている事を感じると、パタパタと小走りにその場から駆けだしていった。

 余計な注目を浴びてしまったことに、内心舌打ちしつつ、通りや路地を細かく渡りながら、問題の場所から離れていく。


 そして、充分離れたことを確認した後、ナイトシェードは再び普通の速さで歩き始めた。


(それにしても、”お姉さん”、か)


 ふとナイトシェードは、先ほどの少女の台詞から「ねーたん、ねーたん」と呼ばれていた昔の記憶を思い出していた。


(あの子たち、おそらく二人とも生きてはいないだろう。でも、せめて奴らに落とし前だけはつけさせないと……!)


 ナイトシェードは一瞬、激しい感情を表に出した後、再び表情を消して雑踏の中に消えていったのだった。

 次回予告。


 定期的に領主館で行われている、私たち4人のお泊まり会。今回はリチャードさんが不在の中行われたのだけど、深夜に響き渡るノックの音が、更なる予想外の出来事をもたらしたのだった。


 次回「侵入者アリ!」お楽しみに!

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