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58.一人の仕事、一人で仕事

 思うところがあり、活動報告にも併せて投稿報告する事にしてみました。

 感想ご意見等、そちらでも結構ですので、お気軽にどうぞ。


 なお、次回は通常通り3月7日の予定です。

「リズさん、おはよう。昨日は来なかったの?」


 翌日。登校した私は、昨日の件について、挨拶がてら聞いてみた。


「昨日……ああ、至高神教会のチャリティイベントでしたわね。滞りなく終わりまして?」

「うん、例年の軽く数十倍の募金があったらしいよ」

「そうですか、それは良かったですわ」


 それだけを言うと、鞄の中をのぞき見て、そのまま授業の準備を再開している。

 予想外の静かな反応に、私は少し首をかしげた。


「――あれ、てっきりリズさんの事だから、『我がデイビス商会の力をもってすれば、当然の結果ですわね!』くらい来ると思ったんだけど」

「アニーさん、わたくしを何だと思ってらして?」


 流石にリズさんは口を尖らして抗議してから……でも、すぐにうつむき加減になってしまった。


「今回、わたくしはなにもできませんでしたから、流石に功を誇れませんわ」

「え、そうなの?」

「ええ。なあんにも」


 リズさんはゆっくりと頷いた。

 私は思って見ない反応に、首をひねるしかない。

 と、そこにマリアが教室に入ってきた。私たちの方に小走りに近づいてきたかと思うと、いきなりリズさんに頭を下げる。


「リズさん! 今回は色々ありがとうございました!」

「あ、あら、マリアさん。どうかしまして?」


 リズさん、突然のマリアの登場に、驚きの顔を見せる。


「神官さんに聞きました! 特設会場許可の申請や、業者の手配とか、いろいろな差配を裏でずいぶん頑張ってくれてたそうですね!」

「あ……」


 そして、マリアの暴露に口を開けて絶句してしまう。マリアは気付いているのか気付いていないのか、それに構わず言葉を続けている。


「昨日は昨日で、警備体制に不備があるって警備部に怒鳴り込んでたらしいじゃないですか! あなた方のお陰でせっかくの舞台が見られないって警備部の人間に連呼してたって聞きましたよ!」


 マリアの言葉に、私は首を傾げながらリズさんに質問した。


「あれ、何もしなかったんじゃなかったの?」

「わたくしは、何もしなかった、ではなく、何もできなかった、と申し上げましてよ?」


 そしてリズさんは、背景について説明を始めた。


「わたくしはおじいさまに、今回の一件は、わたくし一人の力で成し遂げると約束したんですの。でも結局、デイビス家という家名を背景に使ったり、家の者を手伝いに使ったりせざるを得ませんでした。これでは、とても一人で成し遂げたとは言えませんわ」


 またがっくりと顔を伏せながら言葉を続ける。


「昨日は昨日で、事前に警備体制を確認しておくべきでした。おかげで、寄付金強盗まで招いてしまいまして……危うく、大失敗に終わる所でしたわ」


 あー、これはひどく落ち込んでるな。なんとかフォローしてあげないと……

 私は少し考えてから、リズさんに向かって口を開いた。


「なあるほど……ま、おじいさまには、一人でやるとは言ったけど、他人の力を借りないとは言ってない、とでも言ってみたら?」

「そ、それは、詭弁じゃありませんか?」


 私の無茶なアイデアに、リズさんも顔を上げて反論する。

 そこに、近くで様子を見ていたシャイラさんも、同意の言葉を投げかけてきた。


「アニーくんの意見は乱暴なようだが、間違ってはいないよ。目的を達成するために、借りる事ができる力を借りる事ができるのも、それもまた器量が試されていると言う事だと思う」


 リズさんは、シャイラさんの言葉におとなしく耳を傾けているようだ。

 シャイラさんは、腕を組みながら話を続けている。


「――無論、借りているだけの力を、自分自身が当然に持っている力と考えてしまうのは間違いではあるけどね。逆に考えすぎるのも狭量という事になってしまう。あなたのおじいさまは、それを試したかったのではないかな」

「そう……でしょうか」


 ぽつりと漏らしたリズさんに、クリスやマリアもフォローを入れる。


「せやせや。リズはん、いつも言うてるやない? (カネ)とコネは使ってナンボって」

「リズさんのお陰で助かった人がいる事は間違いありませんから、自信を持って下さい!」


 私はマリアの方を見ながら、警備の件について思っている事を口にした。


「あと、警備に関しては……リズさんは所詮(しょせん)後援。本来は、運営者である至高神教会が責任を持たなければならなかったんじゃないかな?」

「う…… そ、そですね。流石に手が回ってませんでした……」


 それを聞いたマリアは、図星を指されて肩を落とす。私は笑いながら、マリアの肩を軽く叩いた。


「ま、寄付金も無事に戻ってきたし、それは結果オーライで気にしなくていいんじゃないかなあ?」

「だったら最初から矛先を向けないでくださいよぉ」

「あはは、ごめんごめん」


 リズさんは、私たちが話しているのを横目で見ながら、しばし考え込んだ後、私たちの方に顔を向け、ゆっくりと口を開いた。


「――わかりましたわ」


 そして、普段の彼女らしく顔を上げ、張りのある声で言葉を続けた。


「おじいさまには、皆の力を借りて、チャリティイベントを成功させると言う結果を残しました、と、胸を張って報告しますわ」


 私たちは、そんな彼女にサムズアップしたり、肩を軽く叩いたり、それぞれの方法で応援の意を示したのだった。

 そして最後にリズさんは、誰に言うともなく、ぽつりと呟いていた。


「――借りを返したつもりが、また借りをつくった気分ですわ。まったく!」

 思うところがあり、活動報告にも併せて投稿報告する事にしてみました。

 感想ご意見等、そちらでも結構ですので、お気軽にどうぞ。


 なお、次回は通常通り3月7日の予定です。


※2019/8/6 スマホフレンドリーに修正しました。

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