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55.やっぱり待ってる事情聴取

 次回は都合により分割し、2月25日月曜日と、28日木曜日に投稿します。

 そして、その次から新展開を予定しています。

 色々工夫したいと考えておりますので、引き続きご覧頂けると嬉しいです。


(今回は後片付けの説明回みたいになってしまっているので、かなり自信がありません……そして、これまでになく難産で、通常10日前までに上げているのが、今日まで押してしまいました)


※2019/8/5 スマホフレンドリーに修正しました。

 ハニーマスタードの格好から普段の格好に戻った私は、会場脇の関係者用出入り口を通って会場に戻ってきた。そして、楽屋の方に歩いていると、廊下の角を曲がってきたスレイにばったり出くわしてしまう。


「あら、あなた、こんな所にいたの――丁度いいわ。ちょっと、こっちに来て貰えない?」


 私はなるべく自然に見えるように、小首をかしげながら質問した。


「ええ、構いませんけど……どうかしました?」

「さっき、寄付金強盗が出たのよ。悲鳴、聞こえたでしょ?」

「ああ、あれ、その声だったんですかぁ」


 と、白々しく驚いてみる。


「で、ハニーマスタードが出てきて――本物の方よ――そいつを捕まえたんだけど、あの()、今日は忙しいとか言ってあたしたちに押しつけて逃げちゃったのよね」

「あら、ハニーマスタードの本物が出たんですか。あれ、でも、スレイさん、こないだハニーマスタードは敵だって言っていませんでした?」


 そしたらスレイさん、少し困った顔をした。


「ええ、それは変わりないんだけどね。今回は成り行きよ、成り行き」

「まあ、それはいいんですけど、わたしに何の御用なんでしょう?」


 とか話しながら私たちは玄関から出て行き、強盗を捕まえた現場まで歩いて行く。強盗はまだ気絶したまま拘束されていて、そいつと寄付金の革袋を見張るような形でフランシスが立っていた。


「おう、戻ってきたか。お嬢ちゃんを捕まえたのか?」

「ちょうど中でばったり出会ってね。これであたしたちは引き揚げられるわ」

「――え?」


 話の流れが読めない私に、スレイが両手を合わせて頼み込んできた。


「そろそろ警備隊がやってくる頃だから、事後処理をお願いできるかしら? あたしたち、警備隊とは余り仲が良くなくて、ね。ごめんなさいね?」

「でも、事後処理って言っても、わたし、何が起きたか知らないんですけど?」


 私のお願いを聞いて、スレイはあごの下に手をやって少し考え込む。


「うーん……前半の事情は、寄付金受付のお嬢さんが知っているはずよ。後半は……ハニーマスタードが現れて、男を倒したとでも言っておけばいいんじゃないかしら。あたしたちの名前を伝えてもいいわよ」

「は……はあ。いいですよ」


 まあ、元々は私がまいた種だからね。仕方ないか。逆に、知らない筈の事を言ってしまわないように、気をつけないと。


「それじゃね。あたしたちはこれで引き揚げるから。皆さんによろしく」

「お嬢ちゃんとの劇、楽しかったぞ!」


 引き揚げる体勢の二人に、私は首をかしげて問いかける。


「あれ、帰っちゃうんですか? 打ち上げは……」

「警備隊が出張(でば)ってきてたら居心地悪くってね。それじゃ、ね?」


 やっぱり、どうしても警備隊とは顔を合わせたくないみたい。これ以上引き留めるのも難しいかな? と言う訳で私たちは、出会ったときと同じように握手を交わし、彼らは雑踏の中に去っていった。



              ◇   ◇   ◇



 盗賊ギルドの二人組が去った直後、警備隊が到着、犯人は連行されていった。

 私と受付の女の人は、会場の本部席で警備隊による事情聴取を受けている。


「ハロウィン以来ですね。お久しぶりです」

「こんにちは、アーサーさん」


 やってきたのは例によってアーサーさんだった。警備にはこの人くらいしか居ないのか、それとも、ハニーマスタード案件を押しつけられているのか……?


「寄付金が奪われたが、すでに犯人を確保したと伺いましたが……」

「はい、そのように聞いています」

「聞いている?」


 アーサーさん、片方の眉をぴくりと上げて問い返してきた。


「今回の件は、わたしは関わったわけでも、直接見たわけでもないんですよ。寄付金が奪われたあたりに関しては、こちらのお姉さんがご存じと聞いています」

「なるほど、ではお嬢さん、まずは最初から話を伺えますか?」


 と、アーサーさんは受付の人の方を向いて聴取を始めた。


 まあ、その内容は想像通りだった。


 受付の仕事をしていると、男が入ってきて短剣をちらつかせて、革袋を出すように言ったそうだ。

 受付さんが革袋を渡すと、男はそのままきびすを返して逃げていき、自分自身は悲鳴を上げて助けを呼んだんだとか。

 私が聞いたのは、この声だったみたいね。


「なるほど、ご協力ありがとうございました」


 アーサーさんは受付の人に頭を下げると、今度は私の方を向いてきた。


「では次は、アニーさんという事で」


 私は顎に人差し指を当てて、少しの間思い出す素振りをする。


「うーん……私も又聞きなんですけど……なんでも、ハニーマスタードが現れて、男を倒したらしいですよ?」

「なるほど、又聞き。それはどなたから?」


 確か、話していいと言っていたよね。


「私と一緒に劇に出てくれた人です。スレイさんと、フランシスさんって言ってたかな?」

「スレイとフランシス……?」

「ええ、なんでも、用事があるとかで、もう帰っちゃいましたけど」


 アーサーさんは名前を聞いて、しばらくの間考えこんだあと、ゆっくりと口を開いた。


「もしかして、一人は細身の男で、もう一人は筋肉質の大柄な男でしたか?」

「ええ、そんな感じでしたよ?」


 私が答えると、アーサーさんは私から視線を外して考え込みながら、小さな声で独り言を漏らし始める。


「なるほど……スラッシュとフレイムスロワー……犯人を倒して引き渡した、と言う事は、ギルドの事件(ヤマ)ではない、と言う事か……?」

「どうしました?」


 考え込んでいるアーサーさんに声を掛けると、驚いたようにこちらを向いた。


「あ、いえ、こちらの話です。――そうだ、彼らについて、何か気になった事はありますか?」

「え、別に、普通の人だと思いましたけど? ――なんでも、警備隊は嫌いだそうですが」


 その返事を聞くとアーサーさんは、なるほど、と小さく頷いた。


「――ま、今回はこれで済ましてしまって問題ないでしょう。犯人も捕まったし、寄付金も戻ったし、特に裏はなさそうという事で。犯人を捕らえた関係者に全く話を聞けていないのはやや不満が残りますが、誰も居ないのでは仕方有りませんからね」


 ううん、深く突っ込まれないのは助かるけど、いいのかなぁ?


「ともあれ本来なら、このような大規模で、お金が集まるイベントには我々も人員を配置しておくべきでした。いやもう、もの凄い勢いで怒られてしまいましたよ……参りました」


 アーサーさん、帰り際に苦笑交じりにこぼしていたけど、口やかましい上司にでも怒られたのかな……?



              ◇   ◇   ◇



 さて、特設会場の解体はプロの業者さんが行うため、衣装や小道具の片付けさえ終わってしまえば、あとはもう私たちが手伝うべき事は残っていなかった。

 まあ、責任者である教会の神官さんは、最後までつきあわなければならないのだろうけど。

 ちなみに、私の場合は事情聴取もあったので、ホントになんにも手伝ってない……


 ともあれ私たちは、チャリティショーの打ち上げのために借り切った、近所の飲食店に集合する事になっていた。


 私が到着した頃には、午前中の歌や劇の人達はもとより、大道具小道具係、特殊効果係など、ステージに上がっていないお手伝いの人達も含んで、本当に大勢の人達が集まっていた。

 立食パーティの形式で、テーブルには食事が並べられ、飲み物も用意されている。


 丁度良いタイミングだったようで、マリアが飲み物片手に小さなステージに上がり、挨拶を始める所のようだった。


「神官さんは最後まで現場につきあわなければならないため、こちらには見えられません。なので、乾杯の音頭は僭越ながら、わたし、マリアが行わせていただきます!」


 その声に応じて、皆の拍手や指笛などで盛り上げられる。


「今年のチャリティイベントは、デイビス商会の支援のお陰で、例年の……軽く数十倍の募金があったそうです!」


 また、ひとしきり盛り上がったあと、少し落ち着いたところで、マリアの乾杯の声が会場に響き渡った。


「それでは皆さん、本当にお疲れ様でした! 乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 こうして、チャリティーイベントの打ち上げが始まった。

 次回予告。


 立食パーティの中、私はいろいろな人間と言葉を交わしていく。その中で、普段は見られない姿が見られたり、やっぱりバレてると言う新事実を知ったりするのだった。


 次回「打ち上げ中の人間模様」お楽しみに!

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