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52.ショータイム!(前編)

 実は本物のヒーローショーは見た事ありません……

 この章は正直、これまでで一番コミカルな回となっており、それが受け入れられるかどうか心配しています。


※2019/8/5 スマホフレンドリーに修正しました。

 さあ、いよいよ私たちの劇の始まりだ。

 舞台の方から、マリアの声が聞こえてくる。


「さあ次は、最近街で噂の魔法少女、ハニーマスタードさんを題材としたショーを行います! このショーの司会は、こちらのシャイラさんが担当します。シャイラさん、お願いします!」


 まずはシャイラさんの出番だ。私と軽くハイタッチしてから、シャイラさんが舞台に駆け上がっていく。


「みなさん、こんにちは! この舞台の司会のシャイラです!」


 彼女の姿を見て、一部の若い女の子から、黄色い声援が飛んだりしている。シャイラさんがバイトしている喫茶店のお客さんなんだろうなぁ……

 それはさておきシャイラさん、台本通りとは言え、いつもの話し方と全く違うから、それはそれで落ち着かない。


「まず、小さなお友達は、挨拶の練習から入りましょう。みなさん、こんにちは!」


 それに応じて、子供達の挨拶の声が響き渡る。


「「こんにちは!」」


 それを聞いてシャイラさん、人差し指を立てて軽く左右に振った。


「うーん、声が小さいですね……もう一度、こんにちは!」


 今度はもっと大きな声で挨拶が響きわたった。


「「こんにちはっ!!」」

「今度はいいですね! 途中で、ハニーマスタードを応援する部分もありますから、元気よく応援してくださいね!」


 次は大人向けに口調を変えて説明を始めた。


「次に、ご家族の皆様にはいくつか注意点があります」


 その説明内容は、おおよそこんな感じだった。

 途中で舞台の上に上がって貰う子供を募集するが、安全は確保しているので大丈夫である事。

 しかし、指示に従わず行動してしまった場合は、安全を保証できない事。

 その他、途中で席を立ったり演者に触ったりしないように、等々。



              ◇   ◇   ◇



「それでは、いよいよ開始します!」


 シャイラさんの合図と共に、悪そうな音楽?が演奏され始めた。

 そう、まずは私たちの出番だ!

 でも、私の出番はまだ後。真打ちは最後に出てくるのよ。


「それじゃお嬢さん、あたしたちは行ってくるわね」

「おう、一暴れしてくるぞ!」


 舞台に向かうスレイとフランシスに対して、私は後ろから声を掛けた。


「最初はきちんと負けるんですよ~」


 彼らは振り向かずに私に向かって右手を挙げて返事をしながら、舞台に上がっていった。


「あたしの名前はボヤッジ。世界征服を狙う悪の魔女、ドローレス様に仕える子分よ!」

「オレの名前はタイタン。同じく、ドローレス様の子分だ!」


 ちなみに彼らの格好は、ボヤッジは緑ベースの、タイタンが紫ベースの服装で、目と口の部分が大きく開いた覆面を被っている。


「今日はこの会場の人間を使って、世界征服の第一歩としてやろうかしら」

「さあ、どいつを(さら)ってやろうかなぁ~?」


 若干説明口調ながらも、観客に向かっての前振りを行う二人。それに対して、芝居がかった口調で観客を盛り上げるシャイラさん。


「大変なことになってしまいました! さあ、みんなで声を出してハニーマスタードを呼びましょう!」


 大きく身振りを入れて、「せーの、ハニーマスタード!」と叫ぶシャイラさん。


 そして、それに応じて、観客の子供達が大声で叫ぶ。


「「ハニーマスタード!!」」


 それを合図に、ハニーマスタードのテーマが流れ始める。


「この美しい街の治安を乱す愚か者よ、天の裁きを受けるが良い!」


 舞台の反対側……結構高い所にある台に、クリスが扮したハニーマスタードが登場していた。最初の台詞を口にした後に、台からひらりと飛び降りる。

 本物のハニーマス(わたし)タードの場合は、重力軽減(ディクリーズグラヴィティ)を使って落下速度を誤魔化しているけど、クリスの場合は、素で見事に飛び降りから回転入りの着地を成し遂げている。

 着地の後、びしっと人差し指を二人に突きつけて、決め台詞。


「魔法少女ハニーマスタード、ここに参上! 今日のわたしはぴりりと(から)いわよ!」


 そして、登場したハニーマスタードに相対するボヤッジとタイタン。


「出たわね、ハニーマスタード! ドローレス様の力を借りるまでもないわ。ここはあたしたちだけで倒すのよ!」

「おう!」


 まずはハニーマスタードと、ボヤッジとタイタンによる、殺陣(たて)が始まった。

 それほど練習はしていないのに、丁々発止と、見事に息の合った連携で、舞台の上を飛んだり跳ねたり、縦横無尽に戦っている。

 ――完全に魔法少女(物理)だけど、クリスは魔法使えないから、仕方ないよねぇ……


 と、クリスがバック転で少し距離を取って、ニセモノ魔法の詠唱を始めた。


「"マナよ、爆炎となりて我が前の敵に正義の力を示せ"」


 詠唱しているのはデタラメな呪文だけど、さすがのスレイも魔法の知識はなかったらしく、練習の時に本物と違うという突っ込みは入らなかった。

 ともあれ、私はそれに合わせて、とある魔法の詠唱を始める。


「"マナよ、小さき幻となりて我が前に現れよ"――小幻影(マイナーイリュージョン)


 私が唱えたのは、小さい幻影を出す魔法。これでクリスの目の前に魔法陣を出現させて、魔法を唱えている(てい)にすると言うわけ。

 唐突に出現した魔法陣に、観客も、おおっと声を上げている。


「――マジカルシュート!」


 クリスのかけ声と共に、ボヤッジとタイタンの足下で爆発が起きて煙が彼らを覆い尽くした。

 ちなみに、この着弾効果は火薬を使った煙だけ派手な仕掛け。盗賊ギルドの二人組が用意したらしいけど、初遭遇の時に私が食らった煙玉と似た成分のような気がする。あれと違って刺激性が抑えられているけどさ。


「やられたわぁっ」

「うわぁっ」


 なぜかやられ文句は微妙に棒読みっぽさが抜けていないけど、ともあれ、ハニーマスタードの魔法?によって、ボヤッジとタイタンは倒れ伏した。

 そして、ハニーマスタードは観客に向かって勝利のポーズを決める。


「ハニーマスタードの大勝利ぃ! 正義は必ず勝つのよっ!」


 そう言い放つと、観客の拍手を背に、ハニーマスタードは舞台袖に退場していった。



              ◇   ◇   ◇



 ――さ、そろそろ私の出番だ。

 ハニーマスタードが退場したのとは反対側の舞台袖から登場しつつ、倒れ伏しているボヤッジとタイタンに声を掛ける。


「なんだいお前たち。情けないじゃないか」

「ド、ドローレス様……」

「やられてしまうとは面目ない」


 ちなみに私の格好は、濃紺の魔術師の帽子と外套はそのままだけど、黒い覆面に黒いワンピースを着てほとんど黒ずくめ。白ずくめのリチャードさんを笑えない……ま、こっちはお芝居の衣装だけど。


「お前たち、なんでハニーマスタードに負けたか分かるかい?」

「美しさが足りなかったからかしら?」

「筋肉が足りなかったからじゃねえかな」


 私は懐から取り出したスリッパでボヤッジとタイタンにツッコミを入れる。


「このスカポンタン! 戦いは数だって、昔の偉い人も言ってたんだよ?」

「数と言っても、オレたちゃ全部で三人しかいませんぜ?」


 言い訳をするタイタンに、私は観客席の方を指さした。


「何言ってんだい? 候補なら、ここに沢山いるじゃないか」


 それを聞いて、感心したような声を上げるボヤッジ。


「そうね……その手が有ったわ。さすがはドローレス様!」


 そして観客席の方に近づいて行く。


「会場のお友達の皆さ~ん、我らがドローレス様を手伝って頂ける方はいらっしゃいませんか~?」


 ――と、言われても、流石にいきなり言われて手を上げる子供は居ないようだ。

 更にボヤッジは、勧誘の言葉を続けた。


「壇上に上がってくれたお友達には、お菓子をプレゼントするわよ~?」

「「は、はーい……」」


 お菓子に釣られたのか、おずおずと手が上がり始める。


「あら、いい子達ね! まずは三列目、左から四人目の子、こちらにいらっしゃ~い? 次は……」


 と言う訳で、壇上に三人の子供達が上げられた。

 次回予告。


 魔法少女ハニーマスタードのショーは続く。舞台に上げられた子供達をいじりながら、私は殺陣に演出にと舞台の上で多忙な時間を過ごすのだった。


 次回「ショータイム!(後編)」お楽しみに!

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